ラグビーはきっと復興する第2回・エディージョーンズHC「JAPAN WAY」で日本ラグビーは世界からリスペクトされるラグビーをする | ラグビージャパン365

ラグビーはきっと復興する第2回・エディージョーンズHC「JAPAN WAY」で日本ラグビーは世界からリスペクトされるラグビーをする

2013/03/16

構成●編集部


日本ラグビーが復興するために何が必要なのかを考えるこのコーナー。第2回は、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが2013年3月6日、第30回みなとスポーツフォーラムで行われた基調講演から、日本ラグビーの未来像を探っていく。

チャンピオンチームを作り上げるには6年から7年はかかる

日本ラグビーのターゲットは2015年ワールドカップ(W杯)でTOP10。2019年W杯にTOP8に入ること。今回2019日本代表戦略室室長として薫田真広氏が就任したことは、日本ラグビー界にとってとても大切なことでした。

チャンピオンチームを作り上げるには、インターナショナルレベルの試合を6〜7年、行う必要があります。例えばイングランド。2003年W杯で優勝に導いたクライブ・ウッドワードは、1998年からコーチをしました。最初の対戦は、オーストラリア代表で0−76で敗れました。SOには若いジョニー・ウィルキンソンがいました。本当にひどい試合でした。2003年には、W杯決勝で再びオーストラリアと対戦し、そのウィルキンソンのドロップゴールで見事優勝を収めたのですが、実はイングランド代表は1998年の敗戦の痛みを胸に6年間かけてチーム作りを行ったのです。総キャップ数は650を超し、セットプレーが強く、コアとなるシニアメンバーの固まりができ、自分たちのプレーに100%信念をもってプレーができる、そんなチームを作り上げたのです。

日本ラグビーが抱えているタスクはとても大きいのです。2019年W杯に準々決勝に進出するには、7年間かけてやることすべてが「正しい」ものでなければならない。選手のセレクション、ストレングス&コンディション、ラグビーのスタイル、すべてが正しくなければなりません。

これがすべて成し遂げることができれば、私たちは2019年に準々決勝に進出することができるのです。

まずは、2015年W杯にTOP10入りをすることから進めていきたいと思っています。

 

これから日本ラグビーが成し遂げること

時折壇上から離れ身振り手振りで説明する場面も

時折壇上から離れ身振り手振りで説明する場面も

私たちがこれから成し遂げようとすることを、これまで成し遂げたのは、唯一アルゼンチンです。

彼らは1996年から2007年までほとんど同じメンバーで試合を行ってきました。アルゼンチンのラグビーはとてもシンプルで、誰にでもわかるゲームプラン。1試合につきキックは50回ほど行うようなゲームです。スコッドの90%以上が海外でプレーし、継続性と一貫性を持ち合わせたラグビーをしていました。すべてに目的を持ち、気持ちを注いでいました。このように長い時間をかけてTOP8入りを果たしたのです。

続性と一貫性を持ち合わせたラグビーをしていました。すべてに目的を持ち、気持ちを注いでいました。このように長い時間をかけてTOP8入りを果たしたのです。


日本にはCan’t do(…できない)というカルチャーがあります。

私たちは20年間ワールドカップで勝利してきていない。
セブンズ(7人制ラグビー)は2部(セカンドディビジョン=コアメンバー入りを果たしていない)です。
そしてU-20も2部(セカンドディビジョン)です。

なぜでしょう?

私が日本の皆さんに問いかけました。

すると、その答えは

・ 体が小さいから
・ プロではないから
・ 農耕民族の精神をもっているから

2年連続MVPを獲得したジョージ・スミス。高いワークレートでサントリーの2連覇に貢献した。

2年連続MVPを獲得したジョージ・スミス。高いワークレートでサントリーの2連覇に貢献した。

というものでした。最後に上げた「農耕民族の精神をもっているから」とはどういう意味かなあと今でも考えています。だって日本のお米は世界一だと思いますし(笑)。

私たちはこうしたCan’t do(…できない)のカルチャーをCan do(…できる)に変えていかなければなりません。

では考えてみましょう。まずは体が小さいということについて。
私は確かに体が小さいです。体のサイズはどうなっても変わることはないでしょう。ただ、強くなれます。速くなれます。賢くなれます。これがCan doなんです。そして、こういうことが日本ラグビーが成し遂げていかなければならないことです。

私はジョージ・スミス(サントリー)と高校生の時に契約を結びました。彼はそのときの体重は89kg。オーストラリア代表としてプレーする時には97kgでした。ほとんど日本のバックローと変わらない体型なのです。皆さんはラッキーなことに2年間彼のプレーを間近で見ることが出来ましたよね。体が小さくてもあれだけのプレーができるのです。

アスリートにとって世界トップクラスの会社で仕事をするチャンスがあるのは、大きなアドバンテージ。

アスリートにとって世界トップクラスの会社で仕事をするチャンスがあるのは、大きなアドバンテージ。

次にプロフェッショナルではないということについて。実際、それはすごくアドバンテージだと思います。菊谷崇(トヨタ)は毎日9時から12時まで仕事をしています。そして午後はラグビーが出来る環境なんです。ラグビープレーヤーとしても活躍できるし、世界トップクラスの会社で仕事をするチャンスもある。これって、アドバンテージではないでしょうか?

All for one, One for all の精神は日本ラグビーの大きなアドバンテージ!

All for one, One for all の精神は日本ラグビーの大きなアドバンテージ!

最後に農耕民族の精神(Farmer’s mentality)について。これはどういうことがというと、ムラ社会で生きていくには首長に従っていかなければならない。人と異なることをしてはならない、という精神が植え付けられているというのです。逆を返せば、日本人はチームワークに優れた民族だということです。

ラグビーは世界で最も複雑なスポーツの一つだと言われています。そのスポーツは日本人がもつチームワークというものがとてもアドバンテージになるのです。

私は、南アフリカ、オーストラリアといろいろな国の選手を見てきましたが、日本人のほどポテンシャルをもっている選手はいないと思います。さらに、日本には素晴らしいインフラが整っています。国立スポーツ科学センター(JISS)には最新の機器があってフィットネスを鍛えることができます。

こうしたことからもわかるように日本ラグビーにはCan doのカルチャーを作り上げることができる環境があるのです。

 

2015年までの3年間に日本ラグビーがやること

ジョン・プライヤー ストレングス&コンディショニングコーディネーター

ジョン・プライヤー ストレングス&コンディショニングコーディネーター

これから私たちは3年間で35試合ほど国際試合してきます。その3年間の中で2つのことを行っていきたいと思っています。

1つ目はフィットネス&ストレングスです。これにはJP(ジョン・プライヤー ストレングス&コンディショニングコーディネーター)による指導を進めています。彼は43歳でありながら自分自身で6週間トレーニングを積み、筋肉だけで4kg、そして体脂肪は2%下げた。クレージーですね(笑)

実際には、昨年の代表合宿で村田毅(NEC)がトレーニングを積み、93kgだった体重を101kgまで上げることができました。きちっとトレーニングをして正しい食事を摂ることでこれだけの向上が見られたのです。

もう1つはセットピースの強化です。昨年の欧州遠征ではルーマニアとグルジアともにセットピースが強くスクラムがメインのチームと対戦しました。2試合でスクラムからクリアボールを出せた確率は17%でした。現実的にこの数字で試合に勝利することは不可能に近いです。世界トップ10入りを果たすのであればこの確率を90%まで上げる必要があります。

私たちは私たちのやり方でスクラムを組みます。決してNZ(ニュージーランド)をコピーしたスクラムをすることはありません。もっとタイトに、低く、ダイナミックにスクラムを組みます。これはCan do(できること)なのです。

この2つを引き上げることで、どの国も成し遂げたことのないアタッキングラグビーで、とてもスキルフルな「スモールラグビー」を世界に見せることでビックゲームに勝利し、世界からリスペクトされるラグビーを目指します。

 

2013年の日本代表の活動について

基調講演を終えると、会場の方からの質問に答えるエディHC

基調講演を終えると、会場の方からの質問に答えるエディHC

今年はとてもファンタスティックなプログラムに恵まれました。4月のアジア5カ国対抗戦、最初の2試合であるフィリピン、香港戦は強いチームで取り組みます。最後の2試合、韓国とUAE戦は、若いチームで戦います。そして、トンガ、フィジー、そして(6月の)ウェールズ2戦。Fantastic!。これ以上ないです。

これまでの日本代表とウェールズ代表の対戦は、2004年の対戦で、大体0-98でしたでしょうか。歴史的に平均スコアは0−55で日本はウェールズに敗れています。そういう相手に私は勝たなければならないと言われているのです。。Thank you very much!(笑)

ウェールズというチームは本当に脅威的なチームです。以前、ポーランド遠征に行った歳に「Crisis Therapy」(危機的状況に追い込んでのセラピー)を行いました。朝トレーニングをし、マイナス45度の部屋に入りトレーニング、その後外に出てトレーニングを再開とすると通常の倍以上の効果でトレーニングができたというのです。そういう意味で彼らはフィットネスがとても強いチームなのです。

アタックは順目順目に攻めるとてもシンプル、スクラムはとても強く、ラインアウトは平均、そして得点はだいたいターンオーバーから獲得する、そういった特徴のあるチームです。私たちの現時点のレベルを知るためにはとてもいいチームです。

彼らと対戦することで、私たちは「歴史を変えていきたい」のです。去年の欧州遠征で歴史を変えることができました。毎年、日本ラグビーの歴史を塗り替えるチームとなっていきます。歴史的にウェールズとは、0−55という差がある中で1勝をしていきたいのです。ですから、大阪(花園)での対戦では、35℃くらいのなかで戦えば…(笑)

 

必ず日本代表をトップ10入りさせてくれるに違いない!

必ず日本代表をトップ10入りさせてくれるに違いない!

「JAPAN WAY」を掲げる、エディー・ジョーンズHC。日本ラグビー全体が「Can do(できる)」という精神を強く持ち、勝利のために1分1秒を無駄にしないアクションを継続していかなればならない。

選手達のこうしたアクションに対して、サポーターである私たちは何ができるだろう?多くの人が「ラグビー復興」のためにアクションを起こしはじめている。ただそのアクションの「濃度」をもっともっと濃いものにしていくためには、ジョーンズHCがそうするように、様々なデータや成功事例をもとに検討していく必要もあるのではないだろうか。

日本には「Jリーグ」という、日本ラグビー界が見習うべきよい手本がある。Jリーグがどのようにして浸透し、さらに日本サッカーが代表戦で国立に6万人よべるスポーツとなりえたのか。まずは「真似る」ことからスタートしてもよいかもしれない。ラグビーにはラグビーの色があるが、独自性を出すのは後からでも十分間に合うだろう。


日本代表は、2015年にトップ10入り、2019年にトップ8入り、さらに2023年にはトップ4をも狙えるチームになる、という目標がある。私たちラグビーサポーターは、2015年、2019年にむけてどんな目標をたてていこうか。

時間はあまり残されていない。

日本ラグビーを盛り上げるための「JAPAN WAY」を考えてみようではないか。

 

みなとスポーツフォーラムとは?

最後に今回取材にご協力いただいた「みなとスポーツフォーラム」さんのご紹介。今回記念すべき30回目を迎えられ、ますます魅力的なイベントを予定されています。

これまでの講演形式に加え、さらにセミナーやイベント体験といった新しいプログラムで「知る」「学ぶ」「体験(実践)する」場を提供されていくとのこと。

第1弾のメインテーマは「〜ラグビー観戦文化、楽しみ方を知る〜」。4月は25日に、ラグビージャーナリストの小林深緑郎氏、村上晃一氏らによる「ジャパン対ウェールズの歴史・みどころ」(予定)、5月はレクチャー&ディスカッション「スポーツイベントの演出−スポーツをエンターテインメントにする」(予定)、さらに6月は実際に秩父宮ラグビー場で行われる「日本代表対ウェールズ代表」を観戦、といったイベントも予定されている。

詳しい情報は、公式ホームページから

 

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