どんな威容が待っているのだろう?
そんな、怖いもの見たさにも似た思いは杞憂だった。
注意しなければ気づかない、本当に控えめな作り。
それが「釜石鵜住居復興スタジアム」の第一印象だった。
8月3日、岩手県釜石市で、来年のワールドカップに向けて新設された釜石鵜住居復興スタジアムのメディア見学会が行われた。盛岡駅に集合した報道陣を乗せたバスは、東北道から釜石道に入り、仙人峠道路を下り、松倉のグラウンドを横目に走り抜け、釜石駅前を通り過ぎて国道45号線に入った。
津波の爪痕、嵩上げされた道路を抜ける。洞口孝治さんの郷里の両石を抜け、恋の峠を過ぎると、鵜住居だ。そろそろスタジアムが見えてくるころだろう……と思って海側に目を向けるのだが……、なかなかそれらしきものは見えてこない。時折、スタジアムの屋根らしき白い影が覗くのだが、この2年の間にだいぶ建設が進んだ復興住宅などの建てものに遮られ、すぐに姿を隠してしまう。
こんなに、自らの存在を主張しないスタジアムは珍しいな…と思った。
その印象は、スタジアムに近づくにつれ、より鮮明なものに変わった。正確に言うと、存在を主張しないのではなく、風景に溶け込んでいるのだ。
今回完成したのは、ロッカールームなど関係諸室とメイン、バックの常設スタンド部分だ。客席は6,000席。メインスタンド上部には、スタジアムのデザインモチーフである「翼」と「船出」をイメージした白い帆のような屋根がかかるが、バックスタンドには日除けも風よけもない。