藤田慶和「すべてを自分の血肉にして」苦しいときも笑みを浮かべて東京五輪を目指してピッチを駈ける | ラグビージャパン365

藤田慶和「すべてを自分の血肉にして」苦しいときも笑みを浮かべて東京五輪を目指してピッチを駈ける

2020/10/16

文●大友信彦


2020年8月某日、福岡市の東福岡高校ラグビー部に、サプライズのプレゼントが届いた。
届いたのは3年生部員全員分のトレーニングシューズ。贈り主は同校のOB、ラグビートップリーグのパナソニックワイルドナイツに在籍する藤田慶和だった。サイズも全員にぴったりのサイズが行き渡るように、きっちり揃っていた。コロナ感染拡大による長い長い自粛期間を経て、ようやく部活動が解禁されたものの、まだ本格的なラグビー練習には入れない。ストレスがたまりそうだった高校生には、予想外だっただけに、余計にうれしいプレゼントだった。

東京五輪が1年遅れで無事開催できるかどうかは、誰にも明言はできない。できないが、だからこそ前を向こうと考える。それが藤田のスタイルだ。

東福岡での贈呈場面

東福岡での贈呈場面


「今の高校3年生たちは、難しい中で活動している。春夏と、目標にしてきた大会がどんどんなくなっている。冬の花園は『やる』と言われてはいるけれど、正直なところ、実際にどうなるかはなんともいえない。微妙なところ。自分の高校時代に置き換えて考えてみたら、キツいだろうなあ、と思ったときに、彼らのために何かしてあげられることはないかなと考えたんです」

藤田自身、春先には東京五輪の1年延期という決定に心が揺れる時間を過ごした。感染状況も予断を許さない状態が続いている。東京五輪が1年遅れで無事開催できるかどうかは、誰にも明言はできない。できないが、だからこそ前を向こうと考える。それが藤田のスタイルだ。

「僕自身、来年のオリンピックがあると信じてトレーニングしています。高校生も、花園があると信じてキツい練習に取り組んでいるはず。だったら、実際にどうなるかという微妙なところは置いておいて、彼らの『信じて頑張っている』というところを応援したいと思ったんです。もしも仮に、花園で輝く機会がなくなったとしても、そこを目指して全力を尽くしたことの輝きは消えないし、それを糧に次のステージで輝くこともできる。その思いをこめて、トレーニングシューズを送ることにしたんです」



藤田は昨年、母校に教育実習に行っていた。そのとき担当した2年生が、今は3年生になっている。それだけに思い入れのある学年だった。

「それもあって、何かしてあげたい、という思いはありましたね」

本当は直接渡したかったけれど、このコロナの状況下では、長距離を移動して高校生たちと接触することは憚られた。高校生にとっても、自身にとっても。

「でも、モノだけ届けて終わりというのは申し訳ない気持ちがあったし、メッセージ動画を一緒に送りました。でも‥実際のプレゼント贈呈式の場面を動画で撮ってもらったのを見たら、みんな、なんか緊張して受け取ってましたね、藤田先生(雄一郎監督)が怖かったのかな? 藤田先生に『もっと喜んでいいんだぞ』と言われてから、ホッとしたようにみんなよろこんでて、可笑しかった(笑)」

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