「石見智翠館―強き者へ挑んだ物語」STORY3・太陽生命ウィメンズセブンズからの『卒業』。そして新たな出発 | ラグビージャパン365

「石見智翠館―強き者へ挑んだ物語」STORY3・太陽生命ウィメンズセブンズからの『卒業』。そして新たな出発

2018/10/19

文●大友信彦


2017年は試練の年となった。
春の選抜は準決勝で国学院栃木と対戦。壮絶なトライの取り合いとなった試合は、最後の最後に追いつかれて26−26のドロー。過密スケジュールのため延長戦は行われず、決勝進出は抽選にゆだねられ、無念の抽選負け。敗れないまま連覇は途切れ、毎年出場していたサニックスワールドユースへの出場権も失った。

選抜大会は準決勝で国学院栃木と激闘の末にドロー。無念の抽選負けで大会を去った。

選抜大会は準決勝で国学院栃木と激闘の末にドロー。無念の抽選負けで大会を去った。

 

試練の2017年。しかし、日本女子ラグビー史上、屈指のアップセットを成し遂げる

太陽生命シリーズも、第1戦の秋田大会は招待チームの自衛隊体育学校に勝っただけの11位。東京大会は10位。残る保土ヶ谷大会、富士山裾野御殿場大会はまた11位、11位。最下位こそしぶとく逃れていたが、参戦のときに掲げた「5位」というターゲットは現実感を失いかけていた。

太陽生命セブンズの戦いは年々、厳しさを増していた。大会の期間だけ来日する外国人選手も珍しくなくなり、ひとつひとつのプレーの強度もスピードも急速に進化していた。「高校の単独チームが出るのはどうなんだ?」「危ないんじゃないか?」といった言葉も聞かれるようになった。

だが、智翠館は敢然と、そんな見方に挑んだ。

シリーズポイントで11のコアチーム中、最下位に沈んだ智翠館は、11月19日、日体大健志台グラウンドで行われた太陽生命シリーズ入れ替え戦に臨んだ。

翌年のコア枠「2」をかけて15チームが参加した入れ替え戦。智翠館はプール戦を勝ち抜き、準々決勝では花園ホーリーホックを破り、準決勝へ。そこで対戦したのは、3ヵ月前の女子15人制ワールドカップで優勝を飾った現役ニュージーランド代表、日本代表を含むトップ選手を招聘して設立したばかりの、ながとブルーエンジェルスだった。

試合前の円陣で、井上藍主将は静かに選手たちに語りかけた。

「外国人がいようが、相手が大きかろうがカンケーない。同じ人間や。相手を大きく見るな。やってきたことをだすだけや。日本人のラグビーをみせよう。最高の14分間をみせよう」

そして始まった試合。
井上の言葉通り、智翠館は世界のトップ選手を相手に、14分間にわたって、自分たちがやってきたラグビーを披露した。
それはまさしく、智翠館というチームが毎年、積み重ねてきたラグビーだった。

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