スーパーラグビー2019レビュー・3連覇クルセイダーズの勝つ文化、悲しい出来事を吹き飛ばす力。勝ったチームには学ぶべき材料がある。 | ラグビージャパン365

スーパーラグビー2019レビュー・3連覇クルセイダーズの勝つ文化、悲しい出来事を吹き飛ばす力。勝ったチームには学ぶべき材料がある。

2019/07/11

文●大西将太郎 構成●大友信彦


こんにちは、将太郎です。
2019年のスーパーラグビーはクルセイダーズの優勝で幕を閉じました。
クルセイダーズは3連覇です。

この3年間、スーパーラグビーはフォーマットを変えながら運営してきました。チーム数を18まで増やし、それを15まで減らし、カンファレンスを再編し、今年はシーズン途中でサンウルブズの除外が決まりました。ひとつひとつの変更について発表される理由を聞くと、一見理にかなっているように聞こえる部分もあるけれど、正直言うと、全体的には停滞というか、後退している印象もあります。今年はワールドカップイヤーということで、シーズン終了後には北半球へ移籍するという選手の情報が出回っています。4年周期、恒例のことともいえますが、スーパーラグビーはこれからどんなリーグとして自分たちの価値を高めていくのか、何年か経って振り返ったとき、ターニングポイントになるシーズンだったな、と思えるシーズンになる気がします。

3月の悲劇、クライストチャーチに勇気を与えたクルセイダーズの戦い――

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……という歴史的な位置づけは別として、今シーズンだけを見れば、やはりニュージーランド勢の強さが光りましたね。僕はクルセイダーズとハリケーンズの準決勝をJスポーツで解説させていただきましたが、本当に素晴らしい試合でした。試合の中ではいろいろなことが起こりうるけれど、それらに対する対応の早さ、正確さ、心技体すべてが高いレベルで揃っている。その底力を改めて感じるシーズンでした。


そして、それに負けないくらいのトピックが、初の決勝進出を果たしたジャガーズの戦いぶりです。ひとつ歴史を塗り替えたと言えるでしょう。スーパーラグビーにとっても新しいファン層を広げて、今までの序列に刺激を与えたと思う。実際、クルセイダーズとの決勝も、ジャガーズが勝っていてもおかしくなかった。トライチャンスはジャガーズのほうが多く作っていました。

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勝負を分けたのは決勝をどう戦うかという経験値の差だけだったと思います。それも、会場がブエノスアイレスだったらジャガーズが勝っていたんじゃないかなと思う。移動がないというアドバンテージもあるけれど、ホームのファンの後押しを受けて戦うアドバンテージは本当に大きい。逆に言うと、クルセイダーズは決勝をホームで戦える位置に来られるように、つまりリーグ戦で1位になるように戦ったわけで、優勝できた要因はそこにあった。

今シーズンは、シーズン途中の3月15日にクライストチャーチで辛い出来事があったし、地元の人たちに勇気を与えたいという思いが、チームの士気、結束になっていたと思う。あってはならない出来事だけれど、そういう出来事が起きてしまった後で、スポーツに何ができるかということをクルセイダーズは示してくれたと思います。

しかし、ジャガーズの戦いぶりはいろいろなことを考えさせられました。サンウルブズと同じ2016年からスーパーラグビーに参戦したチームですが、アプローチは対照的でした。多国籍軍化していったサンウルブズに対し、ジャガーズは選手もスタッフもみなアルゼンチン人。代表チームであるプーマスを強くするためにジャガーズというチームを最大限に活用しようという大義をブラさずに4年間の強化を進め、着実に順位を上げ、決勝までたどり着いた。ジャガーズにこれができて、サンウルブズにはなぜできなかったのかを、真剣に考えなければいけないと思います。ジャガーズは決勝で負けたけれど、決勝のマンオブザマッチ(MOM)はジャガーズのFLマテーラが受賞しました。負けチームからMOMを選びたくなるような試合をジャガーズは演じたわけです。

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