マオリオールブラックスは、予想以上に強い。
神戸で行われた初戦を見た、正直な感想である。
そんなことを今頃気づいたのか、と叱られそうだが、マオリオールブラックスは記者が予想していた以上に、現代ラグビーでカギを握ると言われるディシプリン(規律)のレベルが高いチームだった。
彼らのDNAには「未知の世界へ漕ぎ出す」冒険心と、「タフな環境に生き残る」という強さが刻まれている
ITMカップが終了して間もない時期。集合してすぐの来日。寄せ集めのチーム、準備期間が短い、個人技にすぐれた選手の集まり……チームのプロフィールを並べてみると、「激しいアタック」「高いスキル」が容易に想像できた一方で、そこまでのディシプリンの高さは正直予想していなかった。
これには、記者の思い違いがあった。
マオリは、人種的には大雑把にいうと日本人や中国人、アメリカインディアンとも同じモンゴロイドであり、もう少し細かく言うと、トンガやサモア、ハワイやタヒチなどとも同じ「ポリネシアン」と分類される。
諸説あるが、概ね約3000年前(注)、東南アジアから大海原へカヌーに乗って移民していった人々の末裔である。ここで大事なのは、彼らは未知の世界へ漕ぎ出していって、生き残った人々の末裔だということだ。つまり、彼らのDNAには「未知の世界へ漕ぎ出す」冒険心と、「タフな環境に生き残る」という強さが刻まれているということだ。
(※当初「3万年前」と書いたのは、「ニアオセアニア」つまりユーラシア大陸から近いニューギニアやオーストラリアへの拡散の誤りでした。この移民団は、アボリジニやメラネシア系の人々の祖先となったようですが、これも諸説あり定まっていないようです)