「私もちょっと元気なかったんですけど、一緒に戦ってきた戦友たちが活躍している姿を見て、私も元気をもらえました」
中村知春のその言葉を聞いて、胸がしめつけられる思いがした。
6月27日、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ今季最終戦、鈴鹿大会のDAY2。一巡目のカップ準々決勝4試合が終わり、始まったトークショー。ゲストなのかホストなのかもはやわからない、進行役の元男子セブンズ日本代表主将築城昌拓さんが「きょうは特別ゲストがいらっしゃいます」と紹介し、ピッチに歩み出たのが中村知春だったのだ。
2011年の日本代表デビュー以来、中村はサバサバした性格で、女性ながらアニキと慕われ、ほぼ10年間にわたって主将として女子セブンズを牽引してきた。常に先頭でタックルに体を張り、起き上がるとすぐ次のタックルに走る。リオ五輪を控えた時期には、男子セブンズ日本代表を率いていた瀬川智弘監督が「中村知春を見習え」と男子選手たちにハッパをかけたほどだ。
その大黒柱・中村が、東京五輪の内定選手から外れる発表があったのはほんの1週間前、6月19日だった。多くのファンが驚き、チームメートも耳を疑った落選。まして、本人の失意はどれだけだったか。
心の傷がいえるだけの時間はまだ経っていない。かさぶたさえできていない、傷口も閉じていない、そんな状況で、中村知春は、太陽生命シリーズ鈴鹿大会の会場に現れた。
中村は言った。
「私だけでなく、ここにいる選手全員、日本の女子セブンズを育てて頂いた大会ですし、ラグビーの楽しさ、しんどさ、厳しさ、プレッシャーをすべて教えて頂いたので、どうしてもお礼を言いたくて、やってきました」
太陽生命ウィメンズセブンズシリーズが始まった2014年龍ケ崎大会に、中村知春は東京フェニックスの主将として出場していた。2015年にはライバルのアルカス熊谷に移籍。2017年東京大会ではアルカスの優勝に貢献してMVPを受賞、同年は年間MVPも受賞した。