参戦2年目で頂点へ―ながとブルーエンジェルス優勝インタビュー | ラグビージャパン365

参戦2年目で頂点へ―ながとブルーエンジェルス優勝インタビュー

2019/07/04

文●編集部


4月28日から開幕した太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ。国内4戦を行い、総合優勝を決めたのは参戦2年目のながとブルーエンジェルスだった。初戦の秋田大会で優勝すると、東京大会では優勝は逃すものの着実に3位をキープ。鈴鹿大会では優勝を果たし、最終戦富士山裾野御殿場大会に臨んだ。プール戦を突破しカップ戦に進出し、準々決勝で勝利すれば総合優勝が決まる状況。さらに、これまでベスト4に勝ち進んだチームが別のプールに入るという状況で戦前の予想では圧倒的な優位だと思われた。

プール戦の第1戦追手門学院VENUSとは快勝をおさめ、順調な滑り出しをするも、第2戦のディアナ戦では、ミスもかさなり点の取り合い。雨も強く吹き付ける過酷な状況で26-24でディアナに勝利。さらに第3戦の東京山九フェニックスとの試合では、今シーズン一番といえるフェニックスの勢いに押され序盤リードを許す展開。それでもここまでチームをけん引してきたヘーゼルが後半ファイナルプレーで逆転トライを決め勝利。3連勝でプール1位通過を決めた。結局2日目は濃霧により中止となり、そのまま総合優勝が決まったが、これまで3戦の戦いぶりは昨年の戦いとは全く違うチャンピオンにふさわしい「強さ」を随所に見せていた。

優勝が確定後、村杉徐司ハイパフォーマンスディレクターに話を聞いた。

シーズン前にしっかりと準備することができた

――総合優勝おめでとうございます。


村杉HPD ありがとうございます。優勝したことはもちろんうれしいです。ただ、今日もう1日試合をして自分たちで勝ち取って優勝を決めたかったというのが生意気ですけど。


――この大会への準備はどのくらいできていましたか


前回の大会から、あまり間が空いていなかったので、最初の週はとにかくリカバリーをしっかりすること。2週目は本当に追い込んだ練習をしていました。僕が見ても結構ハードに追い込むなと思うくらい、エド(エドウィン・コッカ―HC)が追い込んでましたね。僕ら水曜日から現地に入ったので本当にいい準備ができていたと思います。

――1日目の試合も雨の中で、決して楽な試合ではなかったと思います。

1戦目の追手門さんとの試合は今シーズン一番の試合だったと思いますが、2試合目のキックオフからのミスが4つありました。我々が悪い時はだいたいキックオフからのミスが多いのですが何とか勝つことができました。(ながと26-24ディアナ)3つ目も最後は気力で勝利ができたと思います(ながと21-17フェニックス)。

――今シーズン振り返ってみて、優勝ができた要因は


シーズン前にしっかりと準備ができたことですね。昨年は開幕2週間、3週間前に全員が集まった状態でした。今年は2か月前から全員が集まってマレーシアへ行ってオーストラリアのチームと試合を行ったり、ながとで練習試合をしたり。日本人と外国人選手がお互いに歩み寄って、コミュニケーションをとって、お互いに信じあえる関係ができたことでチーム力がアップしたなあと感じます。


――選手のコミュニケーションについてどういう成長が見られたのですか


キャプテンのヘーゼルは「侍」のような選手で、とにかく私についてこいというタイプの性格なのですが、昨年一年やってみてこのスタイルだと日本人選手はダメだなと彼女自身が気付いてくれて彼女が日本人に歩み寄ってやっていました。家に日本人選手をディナーに誘ったり。

――昨年と比べ試合中の雰囲気も違いますよね


そうですね。ディフェンスが格段に良くなったと思います。それはマレーシアへの遠征でオーストラリアのチームと決勝で対戦をしたのですが、そのチームを相手にキックオフでけりこんでプレッシャーをかけて、相手の自陣、22m陣内から全く出さなかったという成功体験を得ることができました。そこから、これをやればできるんだというものが彼女たちの中で生まれたと思います。

――初戦の秋田大会で優勝し、その後他のチームの成長していく中で、その部分はどう乗り越えたのか


昨年はほかのチームのビデオを見て分析することはほとんどしなかった。今年は、このチームにはこういこうとかというのを分析しました。それをもとに練習をしてきました。

あとは選手が本当に最高の環境でラグビーをやらせてもらっています。それを選手たちもわかっていて結果を出さなければならないという自覚をもって取り組むことができていたと思います。


――2年目ということでそういう選手たちの思いも「ながとのチームカルチャー」になった?


ながとのカルチャーは昨年は全くできていませんでした。いろいろなところから選手がやってきて、それが一つの方向にいかなかったというのがありますね。

地域の強いサポート、その声に応えなければという思いは選手たちの中であった

――昨年のシーズンが終わってから、いったんチームは解散をしていた?


外国人選手は、帰国してしまうのですが。日本人選手4人はニュージーランドに留学させて、向こうの週代表のチームと一緒に練習をさせていました。残った国内組はとにかくフィジカル。ウェイトとフィットネス、食トレをするものをいました。


ながとの市民の皆さんのサポートを今年は本当に強く感じています。いろいろなところ行くと声をかけてくださったり、ラーメン屋にいけば大盛無料だったり。プール行ったら、2レーン貸してくれたり。


――地域との交流イベント等は多く開催されましたか?


今年はいろいろとやりました。幼稚園へ行って、ラグビーを英語で教えるというのをやりました。割と何回もやりました。


――ながとの皆さんはブルーエンジェルスのことはほとんど知っている?


ほっちゃテレビさん(地元のケーブルテレビ)はこの大会にむけて20分くらいの番組を制作してくれました。ニュースも取り上げていただいています。CMにも出ているんです。

ヴァイネ・グレイグ

ヴァイネ・グレイグ

――今年のチームとしてコーチからみてMVPは?


外国人選手でいえば、FWのヴァイネ選手。彼女はオフ・ザ・フィールドでも日本人選手の面倒を本当によく見てくれます。年もヘーゼルと同じくらいなので、彼女のいい話相手にもなっていると思います。

藤崎春菜

藤崎春菜

日本人は藤崎春奈。シーズンが始まる前はメンバーに入れないのかなと思っていました。それでも試合に出ることで、元々うまい子なのでコミットしてくれました。これまでだったら(冨田)真紀子がいないのはあり得ないなと思っていたんですが、なんだかんだで藤崎がしっかりやってくれましたし、他のみんなもサポートしてくれたのでチーム力が本当に上がったなと感じます。

最初チームを立ち上げたときは1年目で優勝できると思っていましたが、本当に考えが甘くて、日本の女子ラグビーの全体のレベルが本当に高くて、外国人を集めただけでは勝てないということが僕もエドも、ヘーゼルも選手たちも感じたと思います。日本のレベルってこんなに高いんだって。性根入れ替えたという感じです。今年も100%勝てるとは思えずやってみないとわからないという感じでした。やっていくうちに選手たちが成長してチーム力が上がったことがよかったです。

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