日本ラグビーは変化できるか―森重隆新会長・岩渕健輔新専務理事就任記者会見質疑応答全容 | ラグビージャパン365

日本ラグビーは変化できるか―森重隆新会長・岩渕健輔新専務理事就任記者会見質疑応答全容

2019/07/03

文●編集部


会見後、森会長と岩渕専務理事に対して質疑応答が行われた。

今のラグビー協会の置かれている状況は非常に大切な時期

――会長を受けられた経緯


森会長 4月17日だったと思うのですが、理事会に森元名誉会長が来られて、(僕が)辞任して、岡村会長が名誉会長(になる)。あとは勝手に決めなさいと言われて、あれからみんなで議論して、唯一、70歳を超えていなかったのは僕だけで、みんなに能力は別だと冷やかされたのですが、そのとき副会長で67歳だったので、みなさんに推薦をいただいて会長になった。


――岩渕専務理事以外に、今までより若手理事を起用したことに関して、その狙いは?


森新会長 新副会長や岩渕とかとにかく若返って加速化する、改善とかもうちょっとスピードアップしたいということが若手(起用)につながった。それから、ガバナンスとして、あまりピシッとしてなかったですから、専門家に入っていただいて、特別な意見をいただくように、そういった配慮で若い人選になりました。


――男子7人制代表のヘッドコーチとの兼務に関して


岩渕専務理事 今のラグビー協会の置かれている状況は非常に大切な時期です。ワールドカップをホスト国として迎えますし、そういった協会の状況がまずありました。7人制のヘッドコーチもやらせていただいていますが、オリンピックまで1年、そちらも同様に非常に大切なことと考えています。先ほど、理事会で専務理事を拝命しましたが、その後、森会長にご相談したのは、協会の意志決定とか、理事のこれまでの責任をより明確して、本当にそれぞれのタームを理事がしっかり責任を果たすようにしていきたい。

また実際には専務理事に集中せずに、専務理事を支えるような体制をいっしょに作っていただきたいというお願いをしました。協会にとってはこの1年間、非常に大事な時期だと思いますが、協会そのもののも会長といっしょに乗り越えていかないといけない。


――強化委員長は誰が務めるのか? 


森会長 これから、強化委員長を決めたいと思います。月曜日に宮崎に行きます。そのときにジェイミー(・ジョセフHC)と藤井(雄一郎強化副委員長)もいますので、相談して、誰がいいのか、現場の声を聞きたいと思います。

――日本代表経験者である会長、専務理事から現在の日本代表はどう見えていますか?


森会長 (ラグビー)やっていたのは37年前で、ルールまったく違うので、もう戦略、戦術よくわからない。(ただ)ラグビーのベースはあると思います。というのは2015年に(日本代表が)南アフリカに勝ったとか、(2007年のW杯で)フランスとオールブラックスが(決勝トーナメント)1回戦でフランスが勝ったとか、精神的なものでひっくり返る要素がある。ジェイミーや藤井は知っていると思いますが、そういうことを(宮崎に)行って伝えたい。


岩渕専務理事 私は4年前の代表チームには強化の担当としてついていました。そのときと比べると、準備期間が長いですし、地力の部分では間違いなく上がっている。この4年間、いろいろありましたが、前回は挑戦という意識高かったが、今回は勝つということでチームは準備していますので、そこのマインドの持ち方がかなり変わったと思います。W杯で結果を出すにはピーキングの問題もありますし、テストマッチもありますし、出てくると思いますが、いろいろなこと起こると思いますが、ラグビー協会全体として支えていきたいと思っています。


―-新会長として一番、何を変えたいか?


森会長 まだ現状を把握していないので、どうなっているかわからない。とりえあえず、67歳で(単身赴任で)東京に住みます。常勤します。職員はどうなっているのか、詳しく知らないので、そこから改革したい。


――先ほど「W杯は『一生に一度』でない」とおっしゃいました。


森会長 水差すわけではないが、一生に一度なら2歳の子はもうこない。それはないだろうと。少なくとも東京五輪は1964年と2020年。ひょっとしたら50年ぐらいかかるかもしれないが、そういう目標を持って、もう1度やろうと(思っています)。今回のW杯で、ラグビーをまったく知らない人は、W杯がすごいと体感すると思います。それをみんな同じ夢をもって、突き進むという風にしたい。具体的には何年後かは分からないが、一生に一度はないだろう、と。


――今後の日本代表強化について


岩渕 いまもっている情報は、みなさんと同じぐらいしかない。その情報を基に簡単なことは言えない。ただ代表強化にとって、子どもたちが夢を持つ未来が見えるようなことを考えると、代表の定期的なテストマッチがどうしても必要です。それらはシックス・ネーションズやチャンピンズシップに入るか、各ユニオンとの関係性を著しく強化して、その形で日程を組めるのか。いろいろな方法が考えられます。世界のラグビー界はかなりのスピードで議論が動いています。いますぐにでもチェックして、日本ラグビー協会が進むべき方向を会長と相談して、早く出したい。


――サンウルブズのCEOの渡瀬さんが理事になりました。今後のサンウルブズについて


森会長 (スーパーラグビーからの)一方的な通告からちょっと経つが、渡瀬から聞いて、本当にがっかりした。この前、サンウルの試合を秩父宮ラグビー場で観戦したら、早明戦、早慶戦、大学ラグビー、トップリーグのファンではないファンが増えた。これかと。本物のファンみたいな。本物のファンといったら早明に失礼だが、ラグビーが本当に(楽しみで)来てくれている。そういう人たちがもう一度来てくれるような、サンザーがどういうかわからないが、どこかのチームと組むかとか、そういう方向で渡瀬がやってくれたら(と思います)。そういうことは(まだ)全然、話していないが、もう一度そうできたらと思います。

「世界一の協会に」とは…事務局も理事会も変わること。意思決定を早め、明確な目標をクリアしていくこと。

――清宮氏が副会長に就任しました。


森会長 清宮には(もう)10度ぐらい会って、いろいろ話して、「お前こうやって」と言っています。いわゆるイノベーションというか、改革をつくって、特にトップリーグを含めてつくって、改革をやってくれというお願いはした。清宮も気持ちよく、やっていきますと(言ってくれています)。W杯が終了後には、そこまでにはたたき台みたいなのをつくってくれると期待します。岩渕はワールドラグビーの方にいく。どちらも若い。僕も若いときはそうだが、イケイケドンドン。そこは僕が手綱を締めて、ちょっとそれはとやらないと、(2人が)どんどんいきそうなので、チェックしたい。


――岩渕専務理事、「世界一の協会に」といった意図をもう少し詳しくお願いします。


岩渕専務理事 各国ユニオンは、会社でいうと四半期の決算で勝負するような中でやっています。日本協会も意思決定のスピードを早くして、明確な目標を早くクリアすることが必要です。その意味では会長と相談の上、理事会のやり方も考えないといけない。今の日本協会はサービス業のようなもの。そこで働く人がものすごく大事。事務局そのものが変わっていて、事務局も理事会も変わることが、ユニオンが世界一になる第一歩です。


――岩渕専務理事は、男子7人制ラグビーのHCを継続するのか。15人制ラグビーの日本代表の次のヘッドコーチはいつ決めるのか。


岩渕専務理事 7人制ラグビーは会長と相談して、男子ヘッドコーチは続ける(※セブンズの総監督の立場は今後決めるという)。

今の15人制の日本代表の体制がどうなるかは、さきほど(理事が)決まったばかり。会長が宮崎に行くので、現状の話を整理する。世界は(すでに)いろいろなことが決まっている。協会も方向性をすぐ出さないといけない。いつかは言えない。W杯も9月20日に開幕するので、チームが集中する前、もう集中していると思いますが、チームがギリギリにならない前に方向性を出すことが重要。

――トップリーグの観客数と改革について


森会長 時期については、2年先、3年先になるだろうが、トップリーグはプロ化を考えないと駄目な時期に来ていると思う。区分けするというか。アマとプロ。ワールドカップで各開催都市に素晴らしい競技場ができた。地方自治と組んで、トップリーグの試合をやっていく。ザクッとした構想だが、(副会長の)清宮が考えてくれると思います。そういう話はしています。

(トップリーグ)観客数は少ない(苦笑)。誰が見ても。きょうは(トップリーグカップの)釜石の試合を見たが、本当にさみしいぐらい。どうすべきか、今は話すことは……考えます。

今後の「国際交渉力」は…

――今後の国際交渉について


岩渕専務理事 これまでの交渉力がどうかは、いろいろな経緯もあるし、私がタッチしていないことがたくさんあるので、どうこう言えません。一方で、これから先、ネーションズカップも一度計画がなくなって、何かに乗っかるのではなく、日本協会がすすんで作る交渉が必要になる。世界中でいろいろな大会があります。いままでは日本が主導権をとることがなかった。今の段階から何ができるか情報が少ないので、整理する必要はある。これからワールドカップがあります。そういった機会をいかに有効に使って、次の10年、20年をどう考えるかという方向性を早く出さないといけない。

(新体制は)1人の人間が責任を持つことは大事だが、協会として力を持つことは、協会そのものが体制として、システムとして、どうやって交渉力を強化していくかになります。今回一緒に理事に就任した人間の中には、これまで国際交渉をやってきた人材がたくさんいるので、一緒にシステムを作っていかないといけない。

――意思決定のスピードアップのため、どんな体制にするのか?


森会長 審議事項を月1(の理事会)では遅い。業務議事連絡会とかネーミングはわからないが、常にコミュニケーションをとりながら、たとえば2週間に1度とか、そういう形で決定事項を決定したい。


――専務理事と男子7人制ラグビーの現場責任者を兼ねるのはガバナンス、コンプライアンス面で難しいのでは?


岩渕専務理事 おっしゃる通り。物理的にも非常に難しいことがでてくると予想している。一方でこれから先、本当に大切なイベントがあって、果たすべき役割と、会長から話を頂いた中で前向きにトライをしないといけないという気持ちだけでやらせてもらう。さまざまな問題が出てくると思うが、本当に覚悟を決めてやりきるだけです。


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