女子セブンズ日本代表候補選手による熊谷合宿レポート | Rugby Japan 365

女子セブンズ日本代表候補選手による熊谷合宿レポート

2019/01/27

文●大友信彦


1月22日から26日まで、女子SDS(セブンズ・デベロップメント・スコッド)の強化合宿が埼玉県の熊谷ラグビー場で行われた。

昨年の北九州セブンズで負傷、ワールドカップを逃した伊藤優希(日体大)も万全のコンディションで復帰した

昨年の北九州セブンズで負傷、ワールドカップを逃した伊藤優希(日体大)も万全のコンディションで復帰した

これは、2020年東京五輪に向けたサクラセブンズ(女子7人制日本代表)の強化の一環。今季、ワールドシリーズのコアチームから降格している日本女子にとって、最大の目標は4月に行われる見込みのコアチーム昇格戦、そして日本開催3年目となる北九州セブンズ(4月20-21日)だ。来年に迫った東京五輪でメダル獲得の大目標を掲げる以上、世界のトップと少しでも多く対戦していかなければならない。そのために、サクラセブンズの候補選手たちは、SDSという名称で合宿を繰り返している。特に、年が明けてからは毎週のように合宿が組まれている。

今回、1月22〜26日の合宿に招集されたのは13選手と練習生1人。

伊藤優希、清水麻有、立山由香里、田中笑伊、堤ほの花、平野優芽(日体大)
大黒田裕芽、黒木理帆、長田いろは、バティヴァカロロ・ライチェル海遥、マテイトンガ・ボギドゥラマイナダヴェ(アルカス熊谷)
小笹知美(北海道バーバリアンズディアナ)、松田凜日(国学院栃木高)
練習生=弘津悠(SCIX/兵庫県立星陵高)

そのほかにリハビリ組として桑井亜乃、谷口令子、小出深冬(いずれもアルカス熊谷)横尾千里(東京フェニックス)というリオ組、やはり練習生的な位置づけで押切麻李亜(北海道バーバリアンズディアナ)が合宿に参加していた。

ラインアウトに跳ぶのはWTB堤ほの花、リフトするのはCTB長田いろは。サクラセブンズBKの主力がボール獲得に挑む

ラインアウトに跳ぶのはWTB堤ほの花、リフトするのはCTB長田いろは。サクラセブンズBKの主力がボール獲得に挑む

取材に訪れた日の練習で印象的だったのは、マルチスキル化とでも呼びたくなるパートだ。ベーシックなスキル練習、アタック&ディフェンスといったメニューが終わると、ラインアウトのリフティングの練習が始まる。その間、BKは何をしているんだろうと思ってグラウンドを見渡すと……いない。いや、違う。BKの選手も一緒なのだ。よく見ると、BKの選手も一緒にリフティングの練習をしているのだ。

セブンズでは、15人制ではBKでプレーする選手がFWでプレーするケースは全然珍しくない。サクラセブンズで言えば、ライチェル海遙であったり、リオ五輪代表の冨田真紀子だったりがそうだし、大竹風美子や谷口令子のようにFWとBKを兼ねるユーティリティープレーヤーもいる。だがこの日の練習では、プレースタイル的にも体格的にもBK専門という印象の強かった平野優芽がラインアウトやキックオフのジャンパーとして跳んだり、松田凜日がリフターとしてジャンパーを持ち上げたり、堤ほの花がラインアウトのスローイングをしたりしていたのだ。

ラインアウト練習での一斉リフト。このまま空中で3秒ほど静止する。一番奥(左から2つ目)の横尾千里の空中姿勢はさすがの一語!

ラインアウト練習での一斉リフト。このまま空中で3秒ほど静止する。一番奥(左から2つ目)の横尾千里の空中姿勢はさすがの一語!

「たとえばラインアウトのときだったりキックオフのときだったり、誰もが何かをできるという状態にしておきたいと思って、この2ヵ月ほど、重点的に取り組んでいるんです」


稲田仁ヘッドコーチが解説してくれた。


「選手にはいろいろな可能性がありますから。やってみたら案外飲み込みが早いな、できなかったことができるようになな、というケースもある。堤ほの花のスローイングなんて、けっこういいセンスしてますよ(笑)」


ラグビーでは負傷者が出る可能性はあるし、現代ラグビーではHIA(脳しんとうを避けるための経過観察処置)のための一時退場もつきものだ。そういったアクシデントがなくても、セブンズ(ワールドシリーズ)では登録選手12人で2日間、6試合を戦わなければならない。チームが良いコンディションで大会を戦いぬくには、選手のプレータイムをコントロールしなければならない。そのためには、選手が複数のポジションをこなせることが大きなアドバンテージになる。

スクラム姿勢で横からの押しに耐える練習生の弘津悠。父・英司さんは元同志社大-神戸製鋼で活躍した元日本代表HOだ。

スクラム姿勢で横からの押しに耐える練習生の弘津悠。父・英司さんは元同志社大-神戸製鋼で活躍した元日本代表HOだ。

それはスクラムの練習でも同じだった。立山由香里や小笹知美、長田いろはなど、通常はBKでプレーする選手もスクラムを組む。練習生で参加していた弘津悠も、SCIXで出場した全国U18女子セブンズではSOでプレーしていたが、この合宿ではPRとしてスクラムを組んでいた。

サクラセブンズは今季、コアチームから降格した。これ自体は大きなマイナス要因だが、それを嘆いているだけでは前に進めない。考えようによっては、大会に追われていないときでなければ手を着けられないことに取り組むチャンスと捉えることもできるだろう。望んだ場所ではなくても、そのとき置かれた立場で最善を尽くすことこそ、次のステージを切り拓く――練習を見ながらそんなことを考えた。そう思えたのも、練習自体は明るい雰囲気で行われ、選手たちからは新しいスキルを習得しつつある自分への意欲、ポジティブイメージが発散されていたからだろう。

SDSの合宿はこのあと、1月29日から福島県いわき市で合宿。そのあと、2月に入るとまた熊谷で合宿し、オーストラリアへ遠征。帰国後、3月には欧州への遠征も計画。実戦経験を高めて4月の昇格戦に臨むというプランを立てている。


今回の合宿が終了した26日には、29日からのいわき合宿メンバーが発表された。招集された選手は以下の通り。


マテイトンガ・ボギドゥラマイナダヴェ アルカス熊谷 34
桑井亜乃 アルカス熊谷 29
小笹知美 北海道ディアナ 27
横尾千里 東京フェニックス 26
谷口令子 アルカス熊谷 26
保井沙予 三重パールズ 26
鈴木陽子 アルカス熊谷 25
大黒田裕芽 アルカス熊谷 24
押切麻李亜 北海道ディアナ 24
山中美緒 アルカス熊谷 23
小出深冬 アルカス熊谷/東学大4年 23
伊藤優希 日体大4年 22
立山由香里 日体大3年 21
バティヴァカロロ ライチェル海遙 アルカス熊谷/立正大3年 21
堤ほの花 日体大3年 21
長田いろは アルカス熊谷/立正大2年 20
黒木理帆 アルカス熊谷/立正大2年 20
新崎麻未 追手門学大2年 20
大竹風美子 日体大2年 19
田中笑伊 日体大1年 19
平野優芽 日体大1年 18
永田花菜 福岡レディース/福岡高3年 18
松田凜日 国学院栃木高2年 17
▲練習生
弘津 悠 SCIX/兵庫県立星陵高3年 18

キックオフレシーブに備える松田凜日。BK選手もFWのスキルに挑戦中だ

キックオフレシーブに備える松田凜日。BK選手もFWのスキルに挑戦中だ

招集されたのは練習生を入れて24選手だ。熊谷合宿にはリハビリ組として別メニューで参加していた桑井、谷口、横尾のリオ組、負傷等でリオ代表を逃したマテイトンガ、鈴木陽子といった経験値の高いメンバーから、陸上競技出身の大竹風美子、昨年の太陽生命シリーズでポテンシャルをアピールした保井沙予、新崎麻未、ボブスレー出身の押切麻李亜など、バリエーションに富んだ顔ぶれだ。今季のターゲットとなる4月の大会は、おそらくこのメンバーから過半が選ばれるだろう。

とはいえ、ここに選ばれていない選手もまだ参戦してくるはずだ。熊谷合宿で負傷離脱した清水麻有、昨年のワールドカップセブンズ代表からも長くサクラセブンズの主将を務めた中村知春、鈴木彩夏、さらにニュージーランド、南アフリカで武者修行中の福島わさな、岡田はるな(東京フェニックス)といった近年はスコッドを外れていた選手も、4月に始まる太陽生命シリーズでアピールすれば、来年の東京五輪に向けた争いに絡んでくるだろう。松田凜日、永田花菜に続いて弘津悠が練習生で合宿に招集されたように、高校生がまた台頭してくる可能性もある。

レベルの上がっている女子セブンズ。だが、世界のトップはさらにレベルを上げ続けている。ワールドシリーズの檜舞台から離れている間に、どれだけ力をつけられるのか。2020年東京に向け、ここからの数ヶ月がサクラセブンズの正念場になりそうだ。

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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