女子15人制東西対抗試合レポート「戦術理解ができたら、遂行力、コミット力は男子と比べても圧倒的に優れている」 | ラグビージャパン365

女子15人制東西対抗試合レポート「戦術理解ができたら、遂行力、コミット力は男子と比べても圧倒的に優れている」

2019/03/20

文●大友信彦


3月17日、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場で、女子東西対抗試合が行われた。

メンバーは以下の通り。

【東軍】

1 江渕まこと 横河武蔵野アルテミスターズ
2 鈴木実沙紀 東京フェニックス
3 加藤幸子 横河武蔵野アルテミスターズ
4 小西想羅(C) 横河武蔵野アルテミスターズ
5 櫻井綾乃 日体大
6 細川恭子 日体大
7 高崎真那 日体大
8 永井彩乃 日体大
9 津久井萌 横河武蔵野アルテミスターズ
10 山本実 日体大
11 平野恵里子(C) 横浜TKM
12 小林花奈子 日体大
13 内海春菜子 龍ヶ崎グレース
14 名倉ひなの 日体大
15 鹿尾美なみ 龍ヶ崎グレース
16 増井葵 横浜TKM
17 藤本麻依子 横浜TKM
18 南早紀 横河武蔵野アルテミスターズ
19 一戸愛美 龍ヶ崎グレース
20 永岡萌 龍ヶ崎グレース
21 新原響 日体大
22 大塚朱紗 龍ヶ崎グレース
23 庵奥里愛 日体大

監督:野澤武史、コーチ:大田尾竜彦

東軍は、関東大会優勝の日体大、2位のアルカス・アルテミスターズ、3位の龍ヶ崎グレース、4位の横浜TKMから満遍なく選手をセレクト。また、野澤武史監督の発案で、共同キャプテン制を採用。19歳のLO小西想羅と、26歳のWTB平野恵里子が2人でキャプテンシーをシェアすることとなった。

 

【西軍】

1 山本さやか 三重パールズ
2 後藤萌美 名古屋レディース
3 モアナヌ・モリー 名古屋レディース
4 加藤里奈(C)  名古屋レディース
5 金芳歩 神戸ファストジャイロ
6 松下彩乃 花園ホーリーホックス
7 新居里江子 花園ホーリーホックス
8 林明里 三重パールズ
9 内野琴音 九州産業大
10 西田美緒 神戸ファストジャイロ
11 倭由華 名古屋レディース
12 マイアバ・ロレッタ 名古屋レディース
13 用貝涼乃 神戸ファストジャイロ
14 柴原慈 四国大
15 岡田恵梨香 神戸ファストジャイロ
16 丸山珠季 花園ホーリーホックス
17 石渡汐織 名古屋レディース
18 木寺海空 神戸ファストジャイロ
19 三輪里佳 三重パールズ
20 川岸由季奈 名古屋レディース
21 山本友梨奈 神戸ファストジャイロ
22 阪本結花 追手門学院大
23 可藤清香 ラガールセブンWEST

監督:兼松由香、コーチ:乾あゆみ、トレーナー:岡田真実

西軍は、関西大会に優勝したブルーピーグレッツの選手たちが海外遠征等で不在のため、関西大会2位の名古屋レディースを中心にした編成だった。

 

東軍SO山本実のキックは着実にゴールポストを捉えていた

東軍SO山本実のキックは着実にゴールポストを捉えていた

当日は、試合開始前に強めの雨が降る悪コンディション。試合は西軍のキックオフから始まった。東軍は、FL高崎真那のカウンターアタックからSO山本実が相手ゴール前のデンジャラスゾーンへキック。これをWTB平野恵里子が猛然とチェイス。このプレーはオフサイドとなって得点にはつながらなかったが、ウェットなコンディションに対応してキックを多用するクレバーなゲームマネジメントは、この試合の東軍の安定した戦いぶりにつながった。

相手タックルを突き抜ける強さで試合開始から3連続トライを奪った東軍WTB平野

相手タックルを突き抜ける強さで試合開始から3連続トライを奪った東軍WTB平野

初トライは前半4分。東軍FL細川恭子の突進からFB鹿尾みなみ-CTB内海春菜子とつないだパスがWTB平野恵里子にわたって左隅へ。平野は続く9分、11分にも立て続けにトライラインを攻略して3連続トライを決めて東軍を勢いに乗せた。特に11分の3本目は、3人のタックルを突き抜けるパワフルな一撃。平野は昨年、6ヵ月にわたってオーストラリアで武者修行。現地ではCTBでプレーして鍛えたフィジカルの強さが光った。

豪快な突破は19歳とは思えない。2トライをあげた重戦車ガール小西想羅

豪快な突破は19歳とは思えない。2トライをあげた重戦車ガール小西想羅

東軍はその後も攻撃の手を緩めない。
16分には相手ゴール前のキッククリアを捕球して、22分には相手ゴール前PKの速攻に反応して、LO小西想羅が連続トライ。試合開始から22分で、共同主将を任された2人が5トライをたたみかけ、東軍が一気に完勝ペースにのった。

自陣から90m独走トライを決めたFB鹿尾みなみ。兄は東海大-ヤマハ発動機で活躍する鹿尾貫太

自陣から90m独走トライを決めたFB鹿尾みなみ。兄は東海大-ヤマハ発動機で活躍する鹿尾貫太

東軍はさらに25分、自陣ゴール前のスクラムからFB鹿尾みなみが抜けだし、鋭いステップで相手タックラー3人をかわしながらおよそ90mを独走するセンセーショナルなトライ。

31分にはHO鈴木実沙紀が、昨年のNZ遠征で磨いた腰の強さで相手タックルを受けながら粘って右隅へ、39分には相手ゴール前のスクラムンターンオーバーからCTB小林花奈子がトライ。

完勝ペースを支えたもうひとつのファクターが、SO山本のゴールキックだ。4分、最初の平野のトライは左隅の難しい位置だったが、山本のコンバージョンはまっすぐゴールポストへ向かって跳び、ゴールポストを直撃。結果としてコンバージョンは失敗したが、難しい位置からの好キックはチームにいい流れを引き込んだ。東軍は前半、7トライをあげ、コンバージョン成功は2本だったが、外れた5本のうち4本はポストを直撃した惜しいキックだった。

前半はトライ数8-0で東軍が44-0と大きくリードして折り返した。

東軍が優勢に試合を進めた功労者はSO山本だ。山本は攻撃的なキックで試合を相手陣深くで進めることに成功していた。雨が降るコンディションを考えても、賢明なゲームメークだった。加えて東軍は、大田尾竜彦コーチの指導でアタック時のコミュニケーションが明確化。人ではなくスペースに仕掛ける意図のはっきりしたアタックで、突破を図る選手とサポートする選手、次のフェイズに備える選手の役割分担がはっきりし、過去の女子15人制では見られなかったほどオーガナイズされたアタックが実現した。

鋭いカウンターアタックをみせた西軍FB岡田恵梨香

鋭いカウンターアタックをみせた西軍FB岡田恵梨香

西軍も一方的にやられていただけではない。東軍SO山本のキックに対しては、FB岡田が再三切れ味のいいカウンターアタックを仕掛け、PRモアナヌ・モリー、CTBマイアバ・ロレッタが接点で強引に前に出るなど、個々のポテンシャルでは東軍に劣らないものを見せた。

接点で前に出る力を見せた西軍CTBロレッタ

接点で前に出る力を見せた西軍CTBロレッタ

ただ、コンタクトが発生したときのボールセキュリティ、球際の強さと丁寧さは東軍が上だった。西軍のアタックは、ボールセキュリティの不足によるミスで終わり、その多くが東軍のカウンターアタックやトライの起点になってしまった。

後半2分、トライを決めた東軍LO一戸

後半2分、トライを決めた東軍LO一戸

後半は、両チームともメンバーを大幅に交替。流れが変わるかどうかが注目されたが、後半も先に流れを掴んだのは東軍だった。
2分、後半から出場のFW一戸愛美が豪快に相手ディフェンスを突破してトライ。

8分には相手ゴール前のスクラムターンオーバーからCTB内海が仕掛けてトライ。東軍は、スクラムを優位に組んだことも大きかった。FWのフロントファイブを全員、サクラフィフティーン経験者で固めたパックは、西軍に対して大きなアドバンテージになっていた。

再三強靱な突破を見せた東軍FL細川恭子。身長164cmと大きくないが、ゲインラインは必ず切る!

再三強靱な突破を見せた東軍FL細川恭子。身長164cmと大きくないが、ゲインラインは必ず切る!

東軍はさらに、10分にSO大塚朱紗、14分にはFLからWTBへポジションチェンジした高崎真那がトライを重ね、20分には途中出場のPR藤本麻依子がステップを交えながら約50mを独走する豪快トライ。

PRらしからぬ鮮やかなステップでトライを決めた東軍PR藤本

PRらしからぬ鮮やかなステップでトライを決めた東軍PR藤本

東軍はさらに31分鈴木実沙紀、39分に永井彩乃がトライを加え、最終スコア85-0で圧勝した。

後半ピッチに入り、巧みなゲームメークとキックをみせた東軍SO大塚朱紗

後半ピッチに入り、巧みなゲームメークとキックをみせた東軍SO大塚朱紗

圧勝した東軍の野澤監督は「僕はなにもしてない。タツ(大田尾竜彦)をコーチに呼んで、選手を選んだだけ」と謙遜したが、実際、大田尾コーチの指導は大きかったようだ。

「いままで受けてきたコーチングとは全部違った」と平野主将が振り返ったように、場面場面における具体的な戦術と、その理論的裏付けが提示されたことで、選手たちのパフォーマンスは格段にあがった。

大田尾コーチ自身「しっかり戦術を理解させることができたら、それを遂行する力、コミット力は男子と比べても圧倒的に優れている」と評した。

途中出場の大塚もゴールキックを蹴った

途中出場の大塚もゴールキックを蹴った

試合を視察した女子強化責任者の浅見敬子さんも「レベルが高い試合だった。オーガナイズされたラグビーで、代表にとっても参考になるプレーが多かった」とコメント。

後半投入された西軍SH川岸はリズムのいいパスさばきをみせた

後半投入された西軍SH川岸はリズムのいいパスさばきをみせた

スコアだけ見れば一方的な展開だったが、その実は、女子ラグビー(15人制)の着実な進歩と、具体的なコーチングがあれば急激に成長できるポテンシャルを証明した試合だった。

 

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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