日体大が二連覇!7人制・15人制完全制覇を達成 | ラグビージャパン365

日体大が二連覇!7人制・15人制完全制覇を達成

2019/03/05

文●大友信彦


3月3日、ひな祭りの日に、第5回全国女子ラグビーフットボール選手権が小田原市の城山陸上競技場で開催された。

大会には、関東大会、関西大会、それぞれの3位までが出場した。

昨年の王者・日体大は関東大会を4戦全勝で通過。2連覇とあわせ、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ総合優勝に続く、7人制&15人制完全制覇への挑戦となった。対する関西王者は、その太陽生命セブンズシリーズ2018で日体大と優勝回数を分け合った三重パールズを中心に、ながとブルーエンジェルズと四国大の選手が加わった「ブルー・ピーグレッツ」。

昨年のこの大会では、「パールズ・寝屋川」という編成で関西を制したが、全国選手権では日体大に99‐5で大敗しただけに、名誉挽回を期して臨む一戦となった。

日体大WTB名倉ひなの

日体大WTB名倉ひなの

試合は雨が強く降る中でキックオフ。互いにセットプレー、ブレークダウンから激しくプレッシャーをかけあい、雨中のコンディションもあってハンドリングエラーが多発。互いのディフェンスのエナジーが相手のアタックを封じ込む形でゲームは進んだ。

日体大SO山本実主将

日体大SO山本実主将

日体大はキックも使って相手陣に攻め込むが、ピーグレッツも太陽生命シリーズ2大会MVPのCTBヴォーガン・ジャンナ、サクラフィフティーン主将のNO8齋藤聖奈、FL末結希らのタックルでクリーンブレイクを許さない。関東大会では全試合で5トライ以上を上げ、無風状態で優勝した今季の日体大にとって、15人制でここまで苦戦するのは未体験ゾーンだった。

パワフルな突破を繰り返しMVPを受賞した日体大PR/NO8細川恭子

パワフルな突破を繰り返しMVPを受賞した日体大PR/NO8細川恭子

それでも、戦い方を修正するアイデアとタレントを揃えているのが日体大の強みだ。
30分、山本主将がステップで相手DFの裏に出てビッグゲインして作ったチャンスから、WTB名倉ひなの、CTB古屋みず希、PR/NO8細川恭子、WTB高崎真那、FL柏木那月らが次々と前進。ピーグレッツのDFも懸命に止めるが、39分にゴール正面で痛恨のペナルティー。日体大は山本主将がこのPGを冷静に蹴り込んで3点を先制する。

両軍無得点の均衡が続いた前半終了直前、日体大SO山本が先制PG

両軍無得点の均衡が続いた前半終了直前、日体大SO山本が先制PG

 

後半6分にトライを決めた日体大FB庵奥里愛の突進

後半6分にトライを決めた日体大FB庵奥里愛の突進

日体大は3点リードで折り返した後半も先にリズムを掴む。6分、フェイズを重ねたアタックからFB庵奥里愛がポスト左にトライ。山本のコンバージョンは外れたが、リードを8点に広げる。

トライを決めた庵奥を山本主将がハグで祝福

トライを決めた庵奥を山本主将がハグで祝福

さらに攻勢に出る日体大は15分、敵陣22m線付近でSO山本主将とのシザースでパスを受けたNO8永井彩乃が鮮やかに抜けるが、判定はスローフォワード。



ピーグレッツ反撃の起点を作ったベテランFB伊藤絵美

ピーグレッツ反撃の起点を作ったベテランFB伊藤絵美

これで息を吹き返したピーグレッツは、サクラフィフティーン主将経験もあるベテラン伊藤絵美のキック、齋藤聖奈のラン、さらにヴォーガン・ジャンナのパワフルなコンタクトなどで日体大陣に攻め込むと、スクラム、モールで強引に前進を図り、25分に齋藤がインゴールにねじこんでトライ。昨年まで日体大に在籍していたHO谷口琴美がコンバージョンも決め、8‐7の1点差に追い上げる。

ピーグレッツはNO8齋藤聖奈主将のトライで追い上げる

ピーグレッツはNO8齋藤聖奈主将のトライで追い上げる

 

1点差に迫ったピーグレッツは猛攻。途中出場の片嶋佑果の突進

1点差に迫ったピーグレッツは猛攻。途中出場の片嶋佑果の突進

試合は残り15分、差は1点。

息詰まる戦いが続き、39分、ピーグレッツは日体大陣ゴールから約30m、右中間の地点でPKを獲得。ベンチからは「狙え!」の声が響く。

残り1分、ピーグレッツHO谷口が逆転PGを狙うが惜しくも外れる

残り1分、ピーグレッツHO谷口が逆転PGを狙うが惜しくも外れる

1点差なら当然の選択かと思えたが、長い笛を吹いた後、上原睦未レフェリーが示したPKポイントは、笛を吹いたときに立っていた場所よりもだいぶ外側だった。パールズHO谷口が慎重に狙ったキックは、惜しくも右に外れた。

僅かなロスタイム、ピーグレッツはCTBヴォーガンが突破を図るが、日体大のディフェンスは突破を許さず

僅かなロスタイム、ピーグレッツはCTBヴォーガンが突破を図るが、日体大のディフェンスは突破を許さず

「谷口は去年までウチ(日体)にいて、いつもキックで助けてもらった。でもこの雨のコンディションを考えると、あの位置からは届かないんじゃないかと思った」

試合後、日体大の古賀千尋HCはそう言って「モールで来られた方がイヤだった」と明かした。

フルタイムのホイッスルに、抱き合って喜ぶ日体大フィフティーン

フルタイムのホイッスルに、抱き合って喜ぶ日体大フィフティーン

試合はそのまま8‐7で終了。日体大が2大会連続4度目の優勝を飾った。だが、このスコアの価値は、5回目を数える全国女子選手権決勝の過去のスコアを見れば自ずと分かる。

激戦を物語るスコアボード

激戦を物語るスコアボード

第1回(2014年度)日体大 46‐5 名古屋レディース
第2回(2015年度)日体大 45‐7 名古屋レディース
第3回(2016年度)TPA 60‐12 VEELS
(TPAは横浜TKM、東京フェニックス、アルカス熊谷の合同)
(VEELSは追手門学院VENUS、三重パールズの合同)
第4回(2017年度)日体大 99‐5 パールズ寝屋川


過去の最少スコアは2015年度の45得点。女子ラグビーはこれまで東高西低状態が続き、全国選手権では関東1位が大差で関西1位を下す状態が続いてきた。今回は、関西勢が念願の優勝こそ果たせなかったものの、東高西低の時代が終わりを告げたと言えそうだ。

会長杯を受け取る日体大の山本主将

会長杯を受け取る日体大の山本主将

 

MVPの表彰を受ける細川と庵奥

MVPの表彰を受ける細川と庵奥

大会終了後の表彰式で発表されたMVPには、FWからはPRで、NO8で、力強い突破を繰り返した細川恭子、BKではタイミングのいいラインアタックへのエキストラマン参加に、ディフェンスでは相手ランナーが抜けてきたときのタックルにとタフに体を張ったFB庵奥里愛が選ばれた。

胴上げされる日体大の古賀千尋HC

胴上げされる日体大の古賀千尋HC

 

日体大の部員42人全員集合!セブンズ代表、アカデミー生などが多数在籍する日体大女子で全員集合は「奇跡」!

日体大の部員42人全員集合!セブンズ代表、アカデミー生などが多数在籍する日体大女子で全員集合は「奇跡」!

 

日体大4年生。ラグビー部を休部してスキーに挑戦、平昌パラリンピックアルペンスキー出場の本堂杏実も(右から5人目)

日体大4年生。ラグビー部を休部してスキーに挑戦、平昌パラリンピックアルペンスキー出場の本堂杏実も(右から5人目)

 

日体大3年生。この日は出場しなかったサクラセブンズの堤ほの花、立山由香里、清水麻有も。

日体大3年生。この日は出場しなかったサクラセブンズの堤ほの花、立山由香里、清水麻有も。

 

日体大2年生。この日出場しなかったサクラセブンズの大竹風美子も

日体大2年生。この日出場しなかったサクラセブンズの大竹風美子も

 

日体大1年生。この日出場しなかったサクラセブンズの平野優芽、田中笑伊も

日体大1年生。この日出場しなかったサクラセブンズの平野優芽、田中笑伊も

 

3位はアルカス八戸アルテミスターズが零封で名古屋レディースに勝利

アルアルFL小西想羅の突進

アルアルFL小西想羅の突進

3-4位決定戦は、関東2位のアルカス八戸アルテミスターズが34‐0で名古屋レディースを撃破。先発のうち、アルカスから加わったSO古田真菜、FB田坂藍を除く13人は、今季が誕生1年目の横河武蔵野アルテミスターズ所属。

アルアルPR南早紀主将の突進

アルアルPR南早紀主将の突進

光ったのは、雨中の悪コンディションでもほとんどボールを落とさないハンドリングスキルの高さだ。HO南早紀主将をはじめPR江渕まこと、NO8高野眞希、FL小西想羅、SH津久井萌といったサクラフィフティーン経験者が目を引きがちだが、松尾綺子と村上愛梨の機動力あふれる両LO、FL内野寛子、WTB杉江朋香という小柄な選手も精度の高いプレーで勝利に貢献した。

アルアルNO8高野眞希の突破

アルアルNO8高野眞希の突破

 

アルアルLO村上愛梨、接点で強く前に出た

アルアルLO村上愛梨、接点で強く前に出た

 

アルアルWTB杉江朋香。細身に見える体で頑健に前に出るボディバランスが光る

アルアルWTB杉江朋香。細身に見える体で頑健に前に出るボディバランスが光る

 

ラガールセブン、サクラフィフティーンでも活躍したベテランWTB田中彩子は衰えぬ快足を披露

ラガールセブン、サクラフィフティーンでも活躍したベテランWTB田中彩子は衰えぬ快足を披露

 

機敏なパスワークで名古屋のアタックをリードしたSH川岸由季奈

機敏なパスワークで名古屋のアタックをリードしたSH川岸由季奈

敗れた名古屋レディースも、SH川岸由季奈のアグレッシブな球出しを起点に果敢にチャレンジ。CTBマイアバ・ロレッタ、NO8モアナヌ・モリーの両外国人のパワフルな突進に加え、42歳のベテラン岡田梨加の献身的なハードワークも光った。

3位決定戦に勝利したアルアル

3位決定戦に勝利したアルアル

 

日本ラグビー協会職員の傍らプレーを続けてきたアルアルのFL萬羽愛美はこの試合で現役を引退。日本協会の女子担当、荻窪さんから花束を贈られる

日本ラグビー協会職員の傍らプレーを続けてきたアルアルのFL萬羽愛美はこの試合で現役を引退。日本協会の女子担当、荻窪さんから花束を贈られる

 

5‐6位決定戦はRKU龍ヶ崎グレースが選抜チームに大勝

5-6位決定戦は、関東3位のRKU龍ヶ崎グレースが大阪九州選抜に71‐0で圧勝。再三パワフルなゲインを見せ5トライをあげたNO8北野和子、攻守にフルタイムのコミットを続けたCTB内海春菜子、タッチライン沿いを駆け抜け、奥行き僅か2mほどの狭いインゴールでも回り込む鋭いランをみせたWTB高橋朝香主将ら光った選手が多かった中でも圧巻は1年生SO大塚朱紗のゴールキックだ。

みごとなハンドオフからトライを決めたグレースWTB高橋朝香主将

みごとなハンドオフからトライを決めたグレースWTB高橋朝香主将

11回の試技中8回を成功、成功率73%は女子ではまずお目にかかれない数字。フォームも球筋も安定しており、後半ロスタイム33分の最後のキックは右隅タッチライン沿いからの一撃だった。キッカー不在が指摘されて久しい日本女子ラグビー界に、期待のキッカーが出現した。

正確なキックを見せたグレースSO大塚朱紗

正確なキックを見せたグレースSO大塚朱紗

 

積極的なゲームメークをみせた大阪九州のSO小鍛治

積極的なゲームメークをみせた大阪九州のSO小鍛治

大阪九州選抜は、重量感のあるブレイクダウン、スクラムを軸にグレースに何度もプレッシャーをかけ、ボールを再三奪い、SO小鍛治歩のキックで陣地を戻したが、なかなかアタックを継続できず、無得点に終わったが、随所にポテンシャルを感じさせた。

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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