80分では決着つかず―第6回全国女子選手権優勝はアルテミスターズ | ラグビージャパン365

80分では決着つかず―第6回全国女子選手権優勝はアルテミスターズ

2020/02/10

写真●大友信彦


2月9日、女子15人制ラグビーの日本一を決める第6回全国女子選手権決勝、RKUラグビー龍ヶ崎GRACE(以下、グレース)対横河武蔵野Artemi-Stars(以下、アルテミスターズ)の一戦が行われた。両者1トライをずつを決め7-7と80分では決着がつかず、大会規定により抽選の結果、アルテミスターズが初優勝を果たした。

2月10日18時に、日本ラグビーフットボール協会は、両チーム優勝にするという発表をしました。
(以下引用)
「試合結果7対7の同点(トライ数、ゴール数共に同数)だったため、大会要項に沿って抽選を行い横河武蔵野Artemi-Starsを優勝といたしました。しかし、日本ラグビーフットボール協会女子委員会は、日本協会主催の選手権大会であることの重要性を鑑み、協議の結果、RKUラグビー龍ヶ崎GRACEと横河武蔵野Artemi-Starsの両チーム優勝といたします。」


両チームは関東大会でも決勝で対戦し、トライ数6-6の同数ながらコンバージョン差でグレースが40-36で勝利していた。

1ヵ月ぶりの再戦となった会長杯決勝は、前回とは一転、激しいタックルとブレイクダウンによる白熱戦となった。

前半は、今季無敗で決勝に臨んだグレースが風上からキックオフ。15分に今季初先発のNo8鈴木彩夏キャプテンが約60mを独走トライ。SO大塚朱紗がコンバージョンを成功し、7点を先制する。
後半は風上に回ったアルテミスターズが反撃し、後半27分にHO加藤幸子のトライ(SO高木萌結C成功)で追いつくと、残り時間は互いに猛タックルの応酬。試合は7-7の同点でノーサイド。
両者優勝かと思われたが、大会規定により抽選が行われ、アルテミスターズが優勝となった。グレースは優勝カップこそ抱けなかったが、同点優勝と呼ばれるに相応しい戦いをみせた。

グレースの井上愛美HCは「この1ヵ月、本当に日本一になるんだという強い気持ちで練習してきた。ディフェンスではやってきたことを出せたと思う」としながら「負けてはいないけれど、勝てていないのは何か足りないところがあったということ。またここに戻ってこられるチームを作りたい」と話した。

「優勝」の横河武蔵野アルテミスターズは、チーム創設からわずか2年目ながら、先発15人中10人が日本代表という才能を擁してのみごとな優勝だった。南早紀主将は「集中力が最後まで高かった」と話した。

佐藤幸士GMは「ちょっとモヤモヤしますね。両者優勝で良かったのに」とグレースをいたわるコメント。マッチコミッショナーの坂本優女子委員長もこの規約については「早急に見直したい」と話した。

激闘の80分を写真で振り返る。

アルテミスターズ・南早紀、グレース・鈴木彩夏、両主将を先頭に入場

アルテミスターズ・南早紀、グレース・鈴木彩夏、両主将を先頭に入場

 

ワールドカップ用に改装されたAグラウンドでシニア女子15人制の試合が行われるのは初めて。風は冷たかったが快晴、絶好のグラウンドコンディションで試合は行われた

ワールドカップ用に改装されたAグラウンドでシニア女子15人制の試合が行われるのは初めて。風は冷たかったが快晴、絶好のグラウンドコンディションで試合は行われた

 

前半はグレースが風上からキックオフ。アルテミスターズNo8高野眞希にグレースNo8鈴木彩夏主将が猛タックル。タックル合戦の幕が開いた

前半はグレースが風上からキックオフ。アルテミスターズNo8高野眞希にグレースNo8鈴木彩夏主将が猛タックル。タックル合戦の幕が開いた

 

関東大会の対戦では大活躍だったグレースFB内海春菜子の突破をアルテミWTB小川すみれ子が食い止める

関東大会の対戦では大活躍だったグレースFB内海春菜子の突破をアルテミWTB小川すみれ子が食い止める

 

グレースWTB幅野真子にアルテミスターズWTB久保光里が食らいつく。すべての"トイメン対決"に見応えがあった

グレースWTB幅野真子にアルテミスターズWTB久保光里が食らいつく。すべての"トイメン対決"に見応えがあった

 

抜かれかけてもとにかく誰かが止める!

抜かれかけてもとにかく誰かが止める!

 

前半15分、自陣10m線付近まで攻め込まれたグレースがターンオーバー。HO小林ちひろ、LO一戸愛美がつないだボールを持ったのが今季15人制初参戦のサクラセブンズ鈴木彩夏。猛加速で豪快に右サイドを突破

前半15分、自陣10m線付近まで攻め込まれたグレースがターンオーバー。HO小林ちひろ、LO一戸愛美がつないだボールを持ったのが今季15人制初参戦のサクラセブンズ鈴木彩夏。猛加速で豪快に右サイドを突破

 

アルテミスターズFB田中彩子をハンドオフで外し、約60mを独走。「サヤカと一緒に決勝を戦いたい」と主将不在のチームで勝ち上がってきたチームメートの思いに応える爆走先制トライだった。

アルテミスターズFB田中彩子をハンドオフで外し、約60mを独走。「サヤカと一緒に決勝を戦いたい」と主将不在のチームで勝ち上がってきたチームメートの思いに応える爆走先制トライだった。

 

SO大塚朱紗がコンバージョンを決め、グレースが7点を先行

SO大塚朱紗がコンバージョンを決め、グレースが7点を先行

 

風下のアルテミスターズは日本代表が並ぶ強力FWでグイグイと前進。FL小西想羅の突進力は強烈。

風下のアルテミスターズは日本代表が並ぶ強力FWでグイグイと前進。FL小西想羅の突進力は強烈。

 

アルテミスターズNo8高野眞希の突進をグレースはFL永岡萌、WTB大谷苑佳、SH中村楓が3人がかりのタックルで止める。

アルテミスターズNo8高野眞希の突進をグレースはFL永岡萌、WTB大谷苑佳、SH中村楓が3人がかりのタックルで止める。

 

力強いコンタクトで前に出るアルテミスターズLO松尾綺子

力強いコンタクトで前に出るアルテミスターズLO松尾綺子

 

グレースCTB鹿尾みなみとのシザースで前に出る寺内美樹を、アルテミスターズは江渕まこと、南早紀の両プロップがダブルタックルで阻む。迫力満点のコンタクトが続いた

グレースCTB鹿尾みなみとのシザースで前に出る寺内美樹を、アルテミスターズは江渕まこと、南早紀の両プロップがダブルタックルで阻む。迫力満点のコンタクトが続いた

 

ハーフタイム直前、アルテミスターズが敵陣深く攻め込み、ラインアウトを獲得するLO④松尾綺子

ハーフタイム直前、アルテミスターズが敵陣深く攻め込み、ラインアウトを獲得するLO④松尾綺子

 

アルテミスターズは強力FWがフェイズを重ねて攻めるがグレースの堅守は崩れずノックオン。グレースはゴール前まで攻め込まれながらも前半を無得点で凌ぎきった。

アルテミスターズは強力FWがフェイズを重ねて攻めるがグレースの堅守は崩れずノックオン。グレースはゴール前まで攻め込まれながらも前半を無得点で凌ぎきった。

 

前半の時計はランニングタイム46分35秒まで続いた

前半の時計はランニングタイム46分35秒まで続いた

 

後半はアルテミスターズが風上に。FW第1列とは思えない走力とハンドリングをみせたHO加藤幸子

後半はアルテミスターズが風上に。FW第1列とは思えない走力とハンドリングをみせたHO加藤幸子

 

関東大会決勝を欠場したアルテミスターズSO高木萌結は思い切りの良いランでグレース陣に切り込んだ

関東大会決勝を欠場したアルテミスターズSO高木萌結は思い切りの良いランでグレース陣に切り込んだ

 

日本代表がズラリと並ぶアルテミスターズの強力FWに対し、グレースはNo8鈴木彩夏がスクラムからクイックでボールを出すなど工夫して対抗

日本代表がズラリと並ぶアルテミスターズの強力FWに対し、グレースはNo8鈴木彩夏がスクラムからクイックでボールを出すなど工夫して対抗

 

後半23分、相手ゴール前スクラムを押し込んだアルテミスターズはNo8高野眞希が「右8単」でトライラインを目指す

後半23分、相手ゴール前スクラムを押し込んだアルテミスターズはNo8高野眞希が「右8単」でトライラインを目指す

 

グレースはSO大塚朱紗とNo8鈴木彩夏がダブルタックル。体を捻ってグラウンディングしようとする高野にグレースPR小谷野瑠衣が猛然と戻り阻止

グレースはSO大塚朱紗とNo8鈴木彩夏がダブルタックル。体を捻ってグラウンディングしようとする高野にグレースPR小谷野瑠衣が猛然と戻り阻止

 

しかしアルテミスターズはさらにアタックを継続。密集を跳び越えて前進を図るSH津久井萌

しかしアルテミスターズはさらにアタックを継続。密集を跳び越えて前進を図るSH津久井萌

 

27分、アルテミスターズはフェイズを重ねた末にHO加藤幸子がインゴールにねじこんだ。

27分、アルテミスターズはフェイズを重ねた末にHO加藤幸子がインゴールにねじこんだ。

 

グレース選手が一斉にプレッシャーに走る中、アルテミスターズSO高木萌結が冷静にコンバージョンを蹴り込み7-7の同点

グレース選手が一斉にプレッシャーに走る中、アルテミスターズSO高木萌結が冷静にコンバージョンを蹴り込み7-7の同点

 

3人がかりで前進するグレースFWからアルテミスターズFL小西想羅が1人でボールを奪い取る

3人がかりで前進するグレースFWからアルテミスターズFL小西想羅が1人でボールを奪い取る

 

厳しいマークを受けながら前に出たグレースCTB鹿尾みなみ

厳しいマークを受けながら前に出たグレースCTB鹿尾みなみ

 

小西想羅、またジャッカル成功

小西想羅、またジャッカル成功

 

ダブルタックルを受けても前に出るアルテミスターズWTB久保光里

ダブルタックルを受けても前に出るアルテミスターズWTB久保光里

 

残り僅か。グラウンドにはドローの雰囲気が漂ってきた

残り僅か。グラウンドにはドローの雰囲気が漂ってきた

 

残り1分、グレースが渾身のアタック。CTB寺内美樹が走り込んだところで、後方にパスを戻すムーブを試みるが

残り1分、グレースが渾身のアタック。CTB寺内美樹が走り込んだところで、後方にパスを戻すムーブを試みるが

 

このパスをアルテミスターズSH津久井がインターセプト。ピンチの芽を摘んだ

このパスをアルテミスターズSH津久井がインターセプト。ピンチの芽を摘んだ

 

タイムアップのブザーが鳴っても両軍とも勝利を求め攻め合ったが……最後はアルテミスターズのノックオン

タイムアップのブザーが鳴っても両軍とも勝利を求め攻め合ったが……最後はアルテミスターズのノックオン

 

同点で試合は終了。両者優勝かと思われたが……

同点で試合は終了。両者優勝かと思われたが……

 

大会実施要項に「同点の場合は、以下の各号の順序により勝利チームを決定する(中略)上記全てが同じ場合には、抽選で順位を決定する」とあることに従い、別室でレフェリー立ち会いのもと抽選を実施。両主将は固い表情でピッチに戻った

大会実施要項に「同点の場合は、以下の各号の順序により勝利チームを決定する(中略)上記全てが同じ場合には、抽選で順位を決定する」とあることに従い、別室でレフェリー立ち会いのもと抽選を実施。両主将は固い表情でピッチに戻った

 

抽選の結果「準優勝」となったグレース。今季の15人制シーズンは無敗ながら、最後の「日本一」は手の中からスルリ逃げた……

抽選の結果「準優勝」となったグレース。今季の15人制シーズンは無敗ながら、最後の「日本一」は手の中からスルリ逃げた……

 

涙が止まらない鈴木彩夏主将

涙が止まらない鈴木彩夏主将

 

「泣くのはこれで終わり」と井上愛美HC

「泣くのはこれで終わり」と井上愛美HC

 

アルテミスターズのタイナマンHCを祝福したグレースの内山達二監督。「良い試合だった」

アルテミスターズのタイナマンHCを祝福したグレースの内山達二監督。「良い試合だった」

 

アルテミスターズは用意していた優勝Tシャツ姿で表彰式に

アルテミスターズは用意していた優勝Tシャツ姿で表彰式に

 

前ワールドラグビー理事の浅見敬子さんから会長杯を受け取るアルテミスターズ南主将

前ワールドラグビー理事の浅見敬子さんから会長杯を受け取るアルテミスターズ南主将

 

FWのMVPはグレースNo8鈴木彩夏主将。表彰は坂本優女子委員長から

FWのMVPはグレースNo8鈴木彩夏主将。表彰は坂本優女子委員長から

 

BKのMVPはパスにディフェンスにフル回転したアルテミスターズSH津久井萌

BKのMVPはパスにディフェンスにフル回転したアルテミスターズSH津久井萌

 

MVPの二人。

MVPの二人。

 

そして両チーム揃って記念撮影。抽選結果がどうだろうと、ピッチの上には敗者はいなかった。

そして両チーム揃って記念撮影。抽選結果がどうだろうと、ピッチの上には敗者はいなかった。

 

この試合で現役を引退する石川裕美(左から2人目)を労いに、昨季でチームを離れたOG萬羽愛美(中央)もかけつけた

この試合で現役を引退する石川裕美(左から2人目)を労いに、昨季でチームを離れたOG萬羽愛美(中央)もかけつけた

 

「準優勝」のグレースは、スタジアムの外で応援団に御礼、そして感謝の集合写真

「準優勝」のグレースは、スタジアムの外で応援団に御礼、そして感謝の集合写真

 

アルテミスターズの喜び集合!

アルテミスターズの喜び集合!

もちろん、アルテミスターズの「優勝」は間違いないもの。
太陽生命セブンズシリーズではコアチームから降格してしまったが、15人制では日本一の栄冠を創部から2年目で達成する偉業だった。

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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