U18花園女子15人制東西対抗戦レポ・西軍が劇的な逆転勝利 | Rugby Japan 365

U18花園女子15人制東西対抗戦レポ・西軍が劇的な逆転勝利

2018/12/28

文●大友信彦


12月27日、第98回全国高校ラグビーの開会式に続いて、「U18花園女子15人制」東西対抗戦が開催された。

互いにディフェンスが相手のアタックを上回る展開

髪をまとめながらヘッドキャップをかぶる。女子の出陣ポーズ

髪をまとめながらヘッドキャップをかぶる。女子の出陣ポーズ

花園での女子東西対抗が始まったのは2009年。男女セブンズが五輪種目に決まったことを受け、女子セブンズのエキシビションマッチが開会式のあとに組まれた。このときに出場したメンバーには、サクラフィフティーンの鈴木実沙紀(東京フェニックス)、平野恵里子(横浜TKM)らがいた。女子東西対抗はその後、2015年から15人制にリニューアルされて現在に至っている。

バックスタンドへ向かってダッシュして芝に足をならす。

バックスタンドへ向かってダッシュして芝に足をならす。

昨年の高3には、2017年女子ワールドカップで世界のドリームフィフティーンに選ばれたSH津久井萌(現・横河武蔵野アルテミスターズ)をはじめ、小西想羅、加藤幸子(同)、平野優芽、田中笑伊(日体大)、原わか花(東京フェニックス)、アテザ優海(立正大)、ピート染谷瑛海(千葉ペガサス)と、高校在籍中に日本代表入りした選手がズラリと並んでいた。それに比べると、やや小粒になったようにも思えた今季の女子高校生カテゴリーだが、なんのなんの。これまでの花園女子東西対抗でも最も充実、白熱した試合となった。

U18花園女子15人制 12.27 花園

東軍FB松田が西軍CTB丸山にハンドオフを浴びせながら前進

東軍FB松田が西軍CTB丸山にハンドオフを浴びせながら前進

試合は開会式の直後、吉田藍レフェリー/牧野円&加藤スバドラ両アシスタントレフェリー、のもと、11時20分に東軍のキックオフで始まった。
先手を取ったのは東軍だ。キックオフを西軍が蹴り返し、これを捕った東軍WTB松井渓南(深谷高3年/アルカス熊谷)がカウンターアタック。PR松原朱音(千葉北高3年/千葉ペガサス)が縦にくさびを打ち、素早くSO高木萌結(法政二高3年/千葉ペガサス)からパスがFB松田凜日(国学院栃木高2年/ブレイブルーヴ)に渡り豪快にゲインする。

松田からパスを受けた増田が西軍SO西村をかわしトライ

松田からパスを受けた増田が西軍SO西村をかわしトライ

松田は西軍CTB丸山珠季(アナン学園高3年/花園ホーリーホック)をハンドオフ。カバーディフェンスに戻ったSO西村蒼空(追手門学院高3年)を引きつけて、左にサポートした増田結(我孫子高3年/千葉ペガサス)に鮮やかなラストパス。フリーでパスを受けた増田はスピードを上げてそのままインゴールに飛び込んだ。このときスコアボードの電光時計はわずか0分42秒。電光石火の秒殺先制トライだった。左中間から高木萌結の狙ったコンバージョンは外れる。東軍5-0西軍。

ラインアウトのリフトも互いに高さがあった

ラインアウトのリフトも互いに高さがあった

 

いきなり5点のビハインドを負った西軍だったが、慌てることはなかった。
石見智翠館で2018年度のキャプテンを務めたSH人羅美帆(3年)、追手門学院VENUSで大学生とともに試合経験を積んできたSO西村蒼空ら、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズで豊富な経験を積んでいるHB団が落ち着いてゲームメーク。

西軍SH人羅美帆

西軍SH人羅美帆

ターンオーバーしたボールを西軍HO木村美晴が素早く外のスペースへパス

ターンオーバーしたボールを西軍HO木村美晴が素早く外のスペースへパス


14分、西軍は中央付近で東軍のアタックを止めてターンオーバー。すぐにHO木村美晴(鳥栖工3年/福岡レディース)がパスを出し、CTB丸山珠季からのオフロードパスを受けたWTB平田愛美(高鍋高2年/宮崎レディース)が右サイドを快走して東軍陣内深くに攻め込み、ゴール前で得たPKからも速攻。

CTB丸山からオフロードパスがWTB平田へ通る

CTB丸山からオフロードパスがWTB平田へ通る


西軍WTB平田がビッグゲイン

西軍WTB平田がビッグゲイン


ゴールライン上で密集になったが、PR本田実(筑紫高3年/福岡レディース)が右中間にねじこんだ。同点トライ。FB今釘小町(石見智翠館2年)のコンバージョンは外れ、5-5の同点。

西軍が密集を押し込みPR本田実がトライ

西軍が密集を押し込みPR本田実がトライ


そこからは互いにディフェンスが相手のアタックを上回る展開で、同点のままハーフタイムを迎える。従来、高校カテゴリーの女子ラグビーでは、パスの距離が短かったり、接点でのハンドリングエラーなどによるターンオーバー、あるいはノックオン等によって攻撃が終了するケースが多かったが、今季はしっかりとコンタクト、ブレイクダウンでゲームが継続した。

吉田藍レフェリーの笛には安定感があった

吉田藍レフェリーの笛には安定感があった


正確なスタッツは手許にないが、笛の数はこれまでの花園U18女子15人制に比べても少なかったように思える(これはレフェリング技術を反映している面もあるだろう。吉田藍レフェリーの笛には安定感があった)。


ハーフタイム(西軍)

ハーフタイム(西軍)


ハーフタイム(東軍)

ハーフタイム(東軍)

西軍は7人、東軍も4人を入れ替えた後半。

後半登場した東軍SH土井環奈

後半登場した東軍SH土井環奈

後半、西軍はリザーブ7人を一斉に投入。東軍も4人を入れ替えた。
東軍は、前半はSH高橋沙羅(湘南工大附2年/千葉ペガサス)と高木萌結という神奈川育ちのHB団をはじめ、戦い慣れた関東勢を軸にゲームを作ったが、後半はSHを土井環奈(東海大静岡翔洋3年)にシフトするなど、東海地区の選手を投入。その攻撃のリズム変化が功を奏したのが後半12分だ。

松井渓南を止める西軍FB今釘小町

松井渓南を止める西軍FB今釘小町

東軍FB松田凜日からSO高木萌結へオフロードパスが通る

東軍FB松田凜日からSO高木萌結へオフロードパスが通る

左中間ゴールライン上の攻防からPKを得た東軍はゴール前に殺到。ゴールライン上でのアンプレアブルで5mスクラムになると、FB松田凜日を縦に突っ込ませてくさびを打ち込むと、SO高木萌結-CTB黒田佑美(愛知・栄徳高3年/名古屋レディース)とつないだパスが、やはり後半開始から投入されたWTB田島玲(西陵高3年/OSAKA RYOKURYO FAMALE WARRIORS)にわたり、右中間にトライ。高木のコンバージョンは外れるが、東軍が10-5と勝ち越す。

西軍No8鈴木侑晏に腕ごと抱え込まれながらボールを守る東軍の松田凜日。ボールセキュリティは過去にないレベルの高さだった

西軍No8鈴木侑晏に腕ごと抱え込まれながらボールを守る東軍の松田凜日。ボールセキュリティは過去にないレベルの高さだった

 

西軍WTB平田愛美のタックルを浴びながら東軍WTB田島玲がトライ

西軍WTB平田愛美のタックルを浴びながら東軍WTB田島玲がトライ

 

後半の西軍をリードしたSH妹尾安南

後半の西軍をリードしたSH妹尾安南

苦しくなった西軍だったが、ここでも慌てなかった。
後半から投入されたSH妹尾阿南(延岡星雲高2年/宮崎レディース)のパスからの横展開と、10月のU18女子セブンズでMVPを受賞したNo8鈴木侑晏(石見智翠館2年)の縦突進を組み合わせながら、SO西村蒼空のキックも交えて陣地を進める。東軍も攻め込まれながらも勤勉にタックルを反復。ボールを奪うとキャプテンのLO阿部純佳(国学院栃木高3年)、エースFB松田凜日に渡して前進を図るが、西軍も集中タックルを浴びせて容易に前進を許さない。西軍のディフェンスはみごとだった。そして、その中でもボールを活かす松田の強さもまた、みごとだった。

正確なキックをみせた西軍SO西村蒼空とチャージする東軍SO高木萌結

正確なキックをみせた西軍SO西村蒼空とチャージする東軍SO高木萌結

 

東軍CTB安尾琴乃のキックにプレッシャーをかける西軍FW金芳歩と中山彩夏

東軍CTB安尾琴乃のキックにプレッシャーをかける西軍FW金芳歩と中山彩夏

残り1分、東軍は自陣ゴール前でボールを獲得。残り時間を考えるとボールをキープしたい場面にも思えたが、それまで西軍がかけ続けていた圧力が効いたのだろう。タッチを狙った東軍CTB安尾のキックは西軍LO中山彩夏主将(宮崎北高3年/宮崎レディース)と金芳歩(神戸甲北高3年)が2人がかりでチャージをかけにきたプレッシャーをあびてノータッチとなり、そこから攻め返した西軍がFWの波状攻撃で東軍ゴールに迫り、最後はロスタイムの21分、No8鈴木侑晏がトライラインを攻略。
10-10の同点にすると、ポスト右からのコンバージョンを途中出場のCTB新野由里菜(大村工2年/長崎レディース)がみごとに成功。

ゴール前PKから突進した西軍No8鈴木侑晏がトライ

ゴール前PKから突進した西軍No8鈴木侑晏がトライ

 

トライを決め喜ぶ西軍フィフティーン

トライを決め喜ぶ西軍フィフティーン

 

コンバージョンも成功。劇的な逆転勝利に喜ぶ西軍フィフティーン

コンバージョンも成功。劇的な逆転勝利に喜ぶ西軍フィフティーン

 

戦い終え、互いをたたえ合った

戦い終え、互いをたたえ合った

西軍が12-10で劇的な逆転サヨナラ勝ち。

15人制にリニューアルした1年目、2015年以来の勝利で、東西対抗の連敗を2で止めた。

ロースコアの決着となったが、それは得点力が低かったというよりもディフェンスのレベルが向上した結果といったほうが正確だろう。昨年の高3のようなタレントは少ないようにも見えるが、高校生女子ラグビーのレベルアップ、特にブレイクダウンやコンタクト、パス、キックといった基礎スキルの向上が証明された40分間だった。

試合後は、両チーム入り混じって記念撮影。
アフターマッチは女子高生らしさ全開だった。

 

西村蒼空と松田凜日

西村蒼空と松田凜日

 

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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