WOWOWプレゼンツ−ジオ・アプロン(トヨタ自動車)ロング・インタビュー完全版「短いオフと長いシーズン、四季を通じて戦うのがTOP14の難しさ フランスでのプレーは楽しかったけど、日本に来るのは僕の夢だったんだ」 | Rugby Japan 365

WOWOWプレゼンツ−ジオ・アプロン(トヨタ自動車)ロング・インタビュー完全版「短いオフと長いシーズン、四季を通じて戦うのがTOP14の難しさ フランスでのプレーは楽しかったけど、日本に来るのは僕の夢だったんだ」

2017/11/24

提供●WOWOW


フランスTOP14を中継しているWOWOWがWEB配信している世界ラグビーレジェンドたちへの連続インタビュー。そこで掲載しきれなかったフルインタビューをRUGBYJAPAN365で掲載出来ることになりました。

今回掲載は、南アフリカ代表17キャップのトヨタ自動車FB/WTBジオ・アプロン選手。南アフリカ、フランス、それぞれのラグビー環境、社会を観察する目の鋭さに圧倒されます!
トップリーグで閃光を発する魅惑のランナーの言葉を、どうぞ!




――ジオさんはスーパーラグビー、TOP14、トップリーグをプレーしてきました。その中で、TOP14にはどういう特徴がありますか?


トップ14のラグビーは、日本のラグビーに比べるとスローだね。そしてフィジカル。僕はラッキーな事にフォワードではないのだけど、 フォワードは大変だ。というのは、TOP14では4シーズンを戦うわけなんだ。夏にスタートして、そして秋、冬、そして春、そしてファイナルはまた夏と、あらゆる季節を経験する。時には、フィールドは完全に湿っていたり、完全に泥だらけだったりする。時にはとても快適にプレーできる時期もある。だから、ゲームは日本とは全く違うフィールドで行われると言っていいね。

そして、トップ14では、全部で32試合を戦うんだ。年間を通して、四季を通してね。ゲームは日本よりスローで、選手のフィットネスレベルも日本ほど良くないと思う。なぜなら、日本のゲームはもっと速いし、もっと爆発的だからね。

分かりやすく言うと、トップ14は日本のトップリーグよりも少しスローだけど、もっとフィジカルで、もっとセットピース主体であり、よりスクラムに重点が置かれ、フォワードをもっと使うプレーが多い。日本のラグビーはもっと速いことが強みであり、それは僕にとってもうれしいことです。

――ジオさんの母国の南アフリカも、とてもフィジカルなラグビーに見えますが。


僕はバックスだからそうでもないけど、フォワードは確かにタフだね。ただ、フランスの方がもっとフィジカルだよ。フランスの方がよりスローで、試合もフォワードに偏る。近いエリアでの強いコンタクトのやりあいが多くなるんだね。それに比べてスーパーラグビーは、より速いね。フィジカルと爆発力のコンビネーションで、ゲームではより走る事が多い。でも日本のトップリーグと比べるとやっぱりフィジカルだよ。

フランスとスーパーラグビーを比較するのは難しいね。というのは、ランプレーの爆発力という意味では、差は小さいけど、スーパーラグビーの方が上で、さらにフィジカル。一方フランスは、ひたすらフィジカルなのさ。例えば、スーパーラグビーでは、スクラム、ラインアウトはゲームをスタートする起点だけど、フランスではそのコンテストがゲームの見せ場なんだ。スクラムでペナルティーを取ることが、ゲームをリスタートすることよりも大事なんだ。

トップ14・短いオフシーズン。トップ7のチームは更に上へ。その他の7チームはリーグに残留することを最優先に戦っている。

――ラグビーの環境という面ではいかがですか。


選手にとってのコンディションは南アの方がフランスよりも優れていると思う。TOP14はシーズンが長いから、オフシーズンは4-6週間しかない。もしもチームがファイナルまで行ったら、シーズン終了から次のシーズンインまで準備期間が4-6週間しかないんだ。スーパーラグビーでは、テストマッチシーズンが終わってからでも3カ月近い準備期間がある。


この時間があるから、スーパーラグビーでは多くのチームが、大会に勝つ事、優勝することを目的に準備をしている。だけどフランスでは、トロフィーにチャレンジしているのはトップの7ないし8チームくらいで、残りの5〜6チームはリーグに残ることが目標だ。否定的に言うわけではないけど、多くのチームは、短いオフには最低限の準備だけして、リーグ戦が始まったら、トップ14に残れればいいと思って戦っている。

一方トップのチームは、前シーズンよりもさらに上を狙おうとしている。だから上位の7チームと残りの7チームの間には、大きなギャップがあるんだ。スーパーラグビーでは、もちろんカンファレンスによって大きな差があるけど、少なくとも最初の5〜7試合では、全チームがトロフィーを狙っていると思う。




――フォワードが主役のトップ14で、バックスの選手はどうアピールするのですか?


カウンターアタックだね。これはとてもエンジョイできた。なぜなら、スーパーラグビーはディフェンスのシステムが成り立っているリーグで、どのチームでも、あるいはどのポジションに誰が出ていようとディフェンスは同じ方法で行う。13番で誰が出ても、13番の役割ははっきりと決まっている。でもトップ14では、ディフェンダーの一人一人がそれぞれのやり方でディフェンスをする。システムはあるけど、チームによって、選手の個性によって、ディフェンスの方法が異なるんだ。

「ラグビーをひたすらエンジョイする」という意味でフランスでの経験はとても楽しかった

僕は南アを経験した後で、新しい事が経験したくてフランスに行ったのだけど、クラブでは、幸いな事に、沢山の自由があった。クラブではリーダーの一人として見なされ、そして自由にプレーする事が出来た。その事にはとても感謝している。どの試合でも、プレーするチャンスを求めてチャレンジすることができた。

これは、それまでとは異なるプレッシャーだった。いや、むしろ、プレッシャーは無かったな。もちろん勝ちたいのだけれど、追求していたのは、アタックする事、カウンターアタックする事、他の事は気にしない。それは僕にとっては、それまで知らなかった経験だった。試合に出て、ラグビーをひたすらエンジョイする、と言う意味では、フランスでの経験はとても楽しかった。

――ラグビーのカルチャーが違ったのですね。


言葉の問題はチャレンジだったけど、それも何とか切り抜けた。文化は南アとは異なったけど、ラグビーをする、と言う意味では、とても良かった。そして、僕が良い事をしたら、とても喜んでもらえた。南アでは、ネガティブな事ばかりが取り上げられたんだ。9つ良い事をしても、1つ悪い事をしたらその一つにフォーカスされた。でもフランスでは全く反対だった。その面をとてもエンジョイしたよ。もしかしたら、自分自身がそういう環境を求めていたのかもしれない。

南アが悪いとかフランスが正しいと言っているわけではないけど、僕には必要な変化であり、とてもエンジョイ出来た。あの環境の中で、僕は大いに活躍する事が出来た。

南アからフランスに行った身としては、全てを覆すのではなく、クラブから学び、グルノーブルがよくなるように『何かを足す』ということに心がけた。



――フランスは、人がそれぞれ違う事、多様性を尊重する文化があるのですね?


えーと、いつもそういうわけではない(笑)。


日本のトップリーグでは外国人は1チームに6〜7人だけど、フランスTOP14では外国人は16人くらいいる。僕が行った頃は、外国人が多くなり過ぎることにフランス人が脅威を感じていた時だった。

僕らにとって、スーパーラグビーから行った場合、アイデアをシェアするのは当たり前なのだけど、いつ、何を言うかという事には注意しないといけなかった。80%の人はいろんなアイデアに対してオープンだけど、20%は『ここはフランスだよ、あなたは外国人だ、引っ込んでな』って感じだった。

悪い事ではない。なぜなら、彼らはフランスの文化を大事にしたいと思っているのだからね。僕ら外国人としては、もちろんチームを助けたいけど、まずその国と伝統をリスペクトしなくてはいけないし、彼等も その点をチェックしている。だから自分の立ち位置をしっかり理解していないといけない。

僕らは全てを覆すために行ったわけではないからね。もしかしたら、外国人が、自分のアイデアを持ち込み、既にあったものを覆そうとした時代があったのかもしれない。そして、その事は、良く思われなかったのかもしれない。それは理解できる事だ。特に16 人も外国人がチームにいたわけだからね。バランスを取る事が大事だと思う。

僕自身、1シーズン、2シーズンやって行くうちに、言って良い事と、いけない事がわかるようになった。南アから行った身としては、グルノーブルに南アを持ち込むのではなく、クラブから学び、グルノーブルが良くなるように、何かを足す、という事を心掛けた。南ア化するのではなくてね。

もちろん1シーズン目から、皆とは仲良く出来たけど、2シーズン目になって、何をいつ言ってよいか、いつ言ってはいけないか、何をして良いか、良くないかが、わかるようになった。そのバランスが大事だよ。クレルモンとかトゥーロンとかのチームは、そのバランスがしっかりとしていて、外国人は助っ人として来ており、外国人はそこがフランスだと認識し、そのバランスがきちんと取れているから、チームとして成功できるんだ。

実はストーマーズの後で、日本に来たいとおもっていた。

――そのフランスを離れて日本に来た理由は。


正直言うと、南アのストーマーズの後で、日本に来たいと思っていた。でもチャンスがなくてフランスに行った。フランスではどの瞬間も楽しむ事が出来たけど、いつも日本に行きたいと思っていた。選手たちのプレー、速いゲーム展開、いいコンディションでプレーできる。グルノーブルとは、さらに4年の新しい契約をもらっていたけれど、日本に来るチャンスがやってきた。それですぐにチームにお願いしたのさ、日本にはとても行きたかったからね。

自分のキャリアとして、2つの事が大事だった。まず日本に来ることはずっと前からの選手としての希望だった。そしてジェイク・ホワイトのもとでプレーできるということだった。トロフィーを獲得するだけでなく、僕には得るものがあると感じた。そしてトヨタ・ヴェルブリッツは伝統的に、強いチームだと知っていたし、ジェイク監督は、どこでも成功する指揮官だと分かっていたからね。彼とクラブが僕にチャンスをくれた事に感謝している。

だから、僕はもう35歳だけど、これは夢だったよ。実際、フランスから日本に来てからの2-3か月は、日本の文化から、ものすごく価値のある、人生の学びがあったよ。人の振る舞いかた、練習に取り組む姿勢、時間の守り方とかね。この3か月で本当に多くの事を学んだよ。

練習でハードワークをしても、実際のフィールドには外国人は3人しか入れない。自分が出られないときもある。そうなると、プレーできる事をより感謝するようになるんだ。なぜなら、フランスでは外人枠に制限はなく、毎週プレーしていたからね。今は、プレーできる事は本当に名誉なのだと感じる。

そして、周りにはプロではない、会社で働いている選手も多い。それでも同じ態度で、同じく質の高いトレーニングをする。完全にプロというわけではないけど、同じだけの貢献をする。そういう事にとても尊敬の念を感じている。フィールドに出れる事、泥だらけになって、毎日続ける。練習の後にまたトレーニングをする、もっと上手くなろうとしている。そこには、真のプロフェッショナリズムがある。そういう面から多くの事を学んだ。

日本の文化から学んだことは「誰かが間違った事をしたら、自分も同じようにするのではなく、自分は正しい事をするということ」日本に来たお陰で、本当に人生の勉強になっている

それから、日本の文化で学んだのは、誰かが悪いこと、間違った事をしたら、自分も同じように間違ったことをするのではなく、自分は正しい事をするということ。僕の国では、あの人がやったから自分もやっただけだ、と言うような言い訳を聞く事に、あまりにも慣れてしまっていた。でもここでは、誰かが間違った事をしていても、自分は正しい事をする。

そういう態度を見ると、僕は心の中で、気持ちが燃え上がり、良いプレーをしよう、という気になる。チームに貢献しよう、という気持ちになる。そして、チームのためになりたいと思う。それは、環境や文化がそうさせるんだ。日本に来る事は、昔から夢だったけど、実際にここに来たおかげで、本当に人生の勉強になっているよ。

――貴重な話をありがとうございました。最後に、今年のトップ14の注目選手を教えてください。


今年の? そうね、沢山いるよ(笑)。クレルモンでは、2人いると思う。ウィングのラカ。彼は最初の数週間、とても良いプレーをしていた。それから、ダミアン・ぺノー、彼は南アで(国際戦の)デビューしたね、将来が期待されるとても良い選手だよ。それから、トゥーロンでは、アルゼンチンのファクンド・イサ、彼は良いね。

注目チームは、今年はリヨンだね。今年は物凄く良いスタートを切っている。スーパースターはあまりいないけど、良い選手が揃っている。やるべき事がわかっている選手たちだね。ラロシェルは、昨年良いシーズンだったので、今年も良いだろうね。そして、今年はスタートからボルドーが良いね。でもトップ14の面白い所は、スタートや途中が大事ではなく、最後が大事だ。レギュラーシーズンの最後の4週間は、順位の変動が凄い事になるよ。勝ち点差が小さいから、チームが4位、3位、5位と次々入れ替わる。最後の2週で、14位くらいだったチームが2位くらいに上がる事もある。そんなトリックがあったりするのがTOP14なんだ。

そういう意味でも、とても複雑なリーグだね。何が起こるのかわからないからね。ホームでの試合だから、勝つと思われていて、そうでもなかったりする。トップ14ではメンタル的に疲れるんだよ、なぜなら、8月から5月までずっと試合をしなきゃいけないからね。そしてその間、秋があり、冬があり、春があり、夏がある。アウェーもあるからいくつかの試合には負けるし、時には期待していない時に勝ったりして、まるでジェットコースターのようだよ。だからトップ14は最後の2週間までずっと見守らないといけない。どのチームが落ちるのか、どのチームが上がるのか予測するのが難しい、本当にタフなリーグなんだ。

ジオ・アプロン

1982年10月6日、南アフリカ・ケープタウン生まれ。35歳 ポジションはFB、WTBウエスタンプロビンス代表を経て、2005年からセブンズ南アフリカ代表、2007年、ストーマーズでスーパーラグビーにデビュー。2014年まで84試合出場2010年6月のウェールズ戦で15人制南アフリカ代表にデビュー。2010年のフランス戦で2トライをあげるなど、2012年イングランド戦まで17キャップ、通算5トライ25得点2014年から2017年までフランスTOP14のグルノーブルでプレー。2017年、トヨタ自動車ヴェルブリッツに入団。9月30日のクボタ戦で3トライのハットトリックを達成し、マンオブザマッチ受賞。

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