日本ラグビー界の智者・廣瀬俊朗が語る「ラグビーの価値を高める」選手会設立への思い | ラグビージャパン365

日本ラグビー界の智者・廣瀬俊朗が語る「ラグビーの価値を高める」選手会設立への思い

2016/01/14

文●大友信彦


ラグビーワールドカップで、その存在の重さが改めて世に発信されたのが廣瀬俊朗だ。

エディーJAPAN立ち上げから2シーズンにわたってキャプテンを務め、今回のワールドカップで世界を驚かすことになる日本代表の基盤を作った。

「現役引退後も無条件で会社に残って働くことができたのは昔の話」

戦闘能力を高めるために不断の努力を続ける集団のモラルを築き上げ、選手自身が好きになれる集団を作り上げ、日本代表がファンに愛される集団になれるよう、チームの流れを作った。キャプテンの座をリーチマイケルに譲ってからは、新たなSOというポジションに挑戦しながら、チームを見えないところでサポート。その尽力ぶりは「陰のキャプテン」とまで呼ばれた。

「だけど、ワールドカップのことは、今はあまり……どうでもいいといったら語弊がありますけど」


廣瀬俊朗は苦笑した。
新年が明け、トップリーグはプレーオフ・リクシルカップを控えていた。練習後の30分限定インタビュー。こちらには聞きたいことが山ほどあるし、廣瀬にも考えていること、発信したいことは山ほどあるはずだ。

「ワールドカップのことよりも、今しないといけないことがいっぱいありますからね。一番は東芝のこと。目の前の試合にどう準備して、どう優勝するかということ。もうひとつは選手会のことですね」


廣瀬が、ワールドカップから帰国してから取り組んでいるのが、「選手会」の立ち上げだ。「トップリーガーの価値を上げていかないといけないんです」と廣瀬は言う。


「これまで日本の社会人ラグビー選手は、企業が自分たちを守ってくれることを前提にしていたけれど、今はラグビーに限らず企業の雇用形態も変わっている。ラグビーの現役選手を引退した後も無条件で会社に残って働くことができたのは昔の話です。 

現役引退後も、企業にとってこの人材が必要だと思ってもらえるのかどうか、そのためには、自分たちで自分たちの価値を高めていかないといけない。社員の立場でプレーしている選手だから、プロ選手のことは自分とは関係ないなんて、そんなことはない。

社員選手だって、もっと自分を磨かないと、会社に残れる保証はない。これはラグビーやスポーツに限らず、現在の企業がどこでも抱えている問題です。ラグビー部だって、いつ休部や廃部があるかわからない」

現在、ワールドカップにおける日本代表の活躍のおかげで、日本にはラグビーブームが到来。社会におけるラグビーの存在感はかつてなく高まっている。だから、今がチャンスなのだと廣瀬は考えている。


「代表がワールドカップで勝ったことはトップリーグのおかげでもあるし、エディーがいなくなったら代表の強さが続かないというんじゃなく、トップリーグが代表を支えていかなきゃいけない。社会におけるラグビー、スポーツの価値をこれからもっと高めていかないといけない」


そのためには、エディーが4年間かけて日本代表選手たちに求めた自立を、トップリーガー全体に広げていく必要がある。


「トップリーガーは日本ラグビーのトップの選手なんだから、選手自身が自分を磨いて、それぞれの企業において価値のある人材になっていく、その意識を持っていけば、ラグビー自体が良くなる。そうすれば、企業もラグビーの価値を見直して、ラグビー部はやっぱり持っていた方がいいな、と判断してくれるでしょう」

「組合を作るわけじゃないんです」と廣瀬は強調した。


意味合いとしては「勉強会」というニュアンスが近いかもしれない。これまで、チームを横断する組織としてはトップリーグキャプテン会議が存在したが、それは社会貢献を目指すという限定的な趣旨で発足し、事務局機能も日本協会に依存する形だった。今回のトップリーグ選手会は、それ自体自立した組織として発足させたいと廣瀬は考えている。

「やらなきゃいけないことはいっぱいある」と廣瀬は言う。

トップリーガーはそれぞれの選手が各企業に社員として雇用されていたり、プロ選手として契約していたり、雇用の形態はさまざまで、統一されたルールがない。契約の問題で選手が苦しい状況に追い込まれた場合も、チームを離れた選手を守ってくれる組織はない。7人制ラグビーの五輪種目採用で、7人制と15人制のスケジュールの狭間で苦しい立場に置かれる選手もいる。それらの問題は男子だけでなく、女子ラグビーにも波及していくだろう。安全に関わる規定の運用、日程の過密化が進む中、選手の休養期間をどう確保するかも重要な問題だが、今までそれを選手の側から問題提起、あるいは発信する手段はなかった。

そういう時期にあって、大事なのは、ラグビー選手が自立することであり、自らの価値を高めていくことだ。日本代表でそれを実行した廣瀬俊朗は、今度はそれを国内の選手たち全体で分かち合えるよう、呼びかけ、実践していこうとしている。


「トップリーガーに限定する組織ではありません。日本のラグビーをより良くするため、トップリーグ以外のカテゴリーに在籍する選手や、女子の選手にも参加してもらえるように準備を進めています。もちろん、トップリーガーは、それをリードしていきます」


「日本ラグビー選手会」(仮)の概要は、早ければ2月上旬にも発表される見込みだ。それに向け、廣瀬たちは準備を進めている。

 

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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