素顔の中村亮土・無敵王者V5帝京大の飾らないキャプテン | ラグビージャパン365

素顔の中村亮土・無敵王者V5帝京大の飾らないキャプテン

2014/01/17

文●大友信彦


「1月12日、国立競技場で、大学選手権、5連覇を達成することができました!」
 1月15日、12時20分。帝京大八王子市キャンパスで行われた大学選手権優勝報告会。ラグビー部キャプテン中村亮土は、元気な声で、昼休みのキャンパスに集まった約500人の学生、学校関係者の前であいさつした。

「ラグビー部は次に、日本選手権で社会人と戦いますので、大学選手権に引き続き、みなさんの力をもらい、勇気をもらい、戦っていこうと思います!」

 凜々しく、勇ましく、少し舌っ足らずなところが若々しい声は、3日前に国立競技場に響き渡った声と変わらない。

「カミカミでしたね」

 あいさつを終えて、照れる口ぶりも若々しい。

 この日のあいさつでは、早くも「6連覇」に自ら触れた。

「また来年、この場で、後輩達が、6連覇を報告してくれると思います!」

 宣言しましたね、と聞く。

「5と来たら、次は6に行くしかない(笑)。後輩たちには、この幸せな期間を思い切り楽しんでもらって、もう一度この時間を勝ち取ってくれたらなと思ってます。今の3年生は、ラグビーに関して能力がすごい高いんです。個性も豊かだし、その力がひとつになったら凄いパワーがでる。これまでにないくらい強いチームになると思いますよ」

「ラグビーに関して能力が高い」という言い方が面白い。そもそもラグビー部はラグビーの能力を磨くために集まった集団で、帝京大はそのチャンピオンなのだから、当たり前のことを言っているように聞こえてしまうが……だが実は、帝京大の強さの秘訣は、グラウンドの外にあるのだ。


 例えば「仕事」だ。

 帝京大では、チーム運営に関する仕事、グラウンド掃除や寮の掃除、会計業務、クラブハウスの維持管理……さまざまな仕事を、すべて上級生で分担している。「1年生は環境に慣れていない、ストレスも多い、体力もついていない。限られた体力は、練習に使わせる方がよい」というのがその理由だ。
 今季に関して言えば、春に4年生が食事の当番を務めることにした。だが、単に4年生が働く、というだけでもない。

「春先は食事の準備から配膳、片付けまで全部4年生がやりました。秋口くらいから徐々に3年生、2年生にも分担させるようにして、今は1年生とも一緒にやっています。来年に向けて、仕事を覚えてもらった方が良いし」
食事の中身も、栄養士の指導を受けながら、各自が自分の疲労具合にあわせた食材を選び、サプリに頼りすぎることなく食事で栄養を採り、強い身体を作る。
 1年生には過剰な練習量を課さず、疲労をためさせないことを最優先するのが岩出監督の考えだ。

 しかし、帝京イズムはすべて岩出監督の指示で動いているものではない。
 中村の1年生への接し方、そこに込められた思いには、自分の1年生時代の記憶が影響している。
 中村は1年生の2010年、対抗戦4戦目の成蹊大戦に途中出場で大学デビュー。続く5戦目、早大戦で初めて背番号10のジャージーを着た。その試合に、帝京大は14―33で敗れた。 続く明大戦にも中村は10番で先発した。しかし50分で交代。この試合にも帝京大は14―20で敗れた。

 大学選手権では、初戦の関東学院大戦で途中出場したのがすべてだった。

「1年の秋は悩みました。とにかくヘタクソだった。日頃の練習からヘタクソで、ミスをしてはチームの足を引っ張っていた。ものすごい自分のヘタさ、弱さに気づいて、だけどAチームで出してもらっているプレッシャーがあって……」

 それはどう解決したのか。

「結局、積み重ねしかないんですね。どうやったらパスがうまくなるか、先輩に話を聞いたり、毎日の練習の積み重ねで、少しずつできるようになっていって、今があるんだと思うんです。悩んだけど、やるしかない。毎日練習するしかない」

 1年生には、練習できる時間が必要だ。

 そして、自身が練習に練習を重ねて壁を乗り越えたからこそ、下級生にもその時間を与えたい。与えつつ、学ばせたい。学ぶ機会を与えたい。

 ひたすらまっすぐな性格。それは家庭環境も影響していたかもしれない。姉2人のいる「末っ子長男」。父親の信也さんとは、「男2人しかいない仲間意識があった」という。

 そして、父はラグビー好きだった。

「小さいときからずっと、ラグビーをやってほしいと言われ続けて、試合も無理矢理見せられていたんです。ラグビーは……実際に見に行けば面白かったです。でも、『行きたくない』とか言って、父を悲しませたくないって気持ちもあったかも」

 期待されれば応えたい。応えられないときは、自分が頑張って解決しよう。逃げず、ごまかさず、課題には真摯に向き合う。
 それは、中村亮土がキャプテンとして率いたチームのキャラクターそのものだ。

 朗らかに、力強く、大地に根を張った男になって欲しい。そんなメッセージを込めて与えられたのが「亮土」という名前だ。その名の通り、飾らず、地道に、真摯に戦い、身体を張り続けた結果が、5年連続の大学チャンピオン獲得だった。

 

 次のターゲットは、日本選手権でのトップリーグ勢への挑戦だ。

「大学選手権決勝のような内容では勝てないと思います。80分間、どれだけ集中力を持って戦えるか。接戦に持ち込めればチャンスはあると思う。自分自身、どれだけ通用するかを試せるいいチャンスだと思う」

――対戦したい選手は?

「立川(理道=クボタ)さんですね。シーズンを通じて、クボタの試合を何試合か見ましたけど、必ずキーマンとして毎試合、コンスタントに良いプレーをしている。そういう選手と対戦してみたいです」

 それは、中村亮土が目指す方向と重なってみえる。
人が真似できないようなスーパープレーをするタイプではないかもしれない。だけど、ものすごく頑張って初めて到達できることを、ものすごく頑張って初めて到達できる強度で、ものすごく頑張って初めて到達できる頻度で反復し続ける。その領域に達する選手はやはり特別だ。そして愚直さ、勤勉さに、限界はない。挑戦に終わりはない。

日本選手権という舞台で、そんな中村亮土の真価を見たい。

 

大友信彦
1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。プロフィールページへ


 

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