全国高校選抜女子セブンズレポート・新鋭vs常連の対決を石見智翠館が制し4連覇!逸材揃いの栃木を破った秘訣は「低さ」 | ラグビージャパン365

全国高校選抜女子セブンズレポート・新鋭vs常連の対決を石見智翠館が制し4連覇!逸材揃いの栃木を破った秘訣は「低さ」

2016/04/13

文●大友信彦


4月5日、第5回目となる全国高校選抜女子セブンズが熊谷ラグビー場ラグビー場で開催された。今大会には全国から12チームが参加した。今回の特徴は単独チームが多かったこと。

東海大翔洋VS大泉、単独参加校同士の対戦も増えてきた

東海大翔洋VS大泉、単独参加校同士の対戦も増えてきた

2012年の第1回大会に単独チームで参加したのは学校が神戸甲北、クラブが名古屋レディース、福岡ラグビーフットボールクラブの合計3チームのみだったが、今回は全大会単独参加の神戸甲北(兵庫)、4連覇を目指す石見智翠館(島根)、3大会ぶりの単独出場となる東海大翔洋(静岡)に加え、追手門学院(大阪)と大泉(群馬)、鳴門渦潮(徳島)が単独高校として初出場を果たした。

主催は日本ラグビーフットボール協会だが、共催者(主管)となっている全国高等学校体育連盟(全国高体連)が学校単位での大会運営を推奨していることを受け、大会も単独チームとして参加できるチームを優先させた形だ。

プール戦は優勝候補が順当な勝ち上がり

大会はまず、3チーム×4組に分かれてプール戦を実施。A組は栃木県選抜、B組は追手門学院、C組は石見智翠館、D組は福岡レディースと、優勝候補が順調に勝ち上がった。


プール戦で注目されたのは初出場の2チーム、追手門学院と栃木県選抜の戦いぶりだ。

A組の栃木県選抜は、國學院栃木ラグビー部の女子選手7人に佐野日大の2人、県立佐野の1人を加えた編成。男子の全国的実力校でもある國栃には、昨年の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズにラガールセブンのメンバーとして高1ながら大活躍したFW小西想羅(そら)、BK田中笑伊(えみい)らセブンズユースアカデミー選手が在籍。主将は佐野日大3年で、高1から花園U18女子セブンズに出場した快足BK久保光里(ひかり)が務めた。

久保光里(栃木県選抜)

久保光里(栃木県選抜)

プール戦では鹿児島女子を44−0、北海道選抜を85−0と圧倒。2試合で高速フィニッシャーの久保が7トライをあげ、パワフル小西が豪快な突破から5トライを量産した。

抜群の加速でトライを量産した追手門の高木

抜群の加速でトライを量産した追手門の高木

B組の追手門学院は栃木選抜とは対照的に、ユースアカデミー選手は不在ながら、パスを多用してスペースを作り出すスタイルでアタックを構築。BK高木愛実(まなみ)は徳島との初戦の前半だけで5連続トライをあげるなど2試合でこちらも7トライと驚異の決定力をみせつけた。

D組の福岡レディースは、初戦の東海大翔洋戦でBK友納菜々子が7度のコンバージョンをすべて成功するという女子ではシニアでも珍しい快挙を達成するなど安定した戦いぶり。

それに対して、4連覇を目指した石見智翠館は、2試合で65得点と、カップ戦進出4チームでは最少の得点。神戸甲北との一戦は前半6分まで先行を許す展開だった。

 

決勝トーナメント・追手門×栃木

しかし決勝トーナメントでは戦いの様相が変わった。まず、栃木と追手門の準決勝。初出場で優勝候補にあげられた両者の対決は、栃木がいきなり先制パンチを浴びせた。キックオフ直後の1分、PKからラインアウトに持ち込み、久保光里から田中笑伊につないで先制トライ。続く2分には核弾頭の小西想羅がフィジカルコンタクトの強さで2本目。僅か2分で10−0とリードする。

次のキックオフがノット10mとなり、FKから追手門がアタックに転じるが、相手ゴール前に攻め込んだところでペナルティ。逆に、ホーンがなったあとの7分、栃木の小西が相手の胸ぐらに強烈なタックルを浴びせてボールを奪い、そのまま右タッチライン沿いを約60m独走してトライ。15−0とリードを広げて折り返す。

後半も4分、相手ゴール前に攻め込んでPKを得た栃木は、小西がタップから直進して相手タックルを突き抜けてトライ。20−0と勝負を決めた。

小西想羅の豪快なトライ

小西想羅の豪快なトライ

追手門は、プール戦の相手から一段上がった栃木のコンタクトの前にボールコントロールのリズムを掴めなかったが、一矢報いたのは後半6分。BK土井望愛(みちか)がスピードで栃木ディフェンスのギャップを突き抜けてトライ。最終スコアは20−7で栃木が圧勝したが、コンタクト強化に多くの時間を費やすチームが多い中で、追手門の独自のスタイルは今後も注目を集めそうだ。

 

決勝トーナメント・石見智翠館×福岡レディース

準決勝もう1試合は過去2年間、決勝を戦った石見智翠館と福岡レディースの対決。福岡は野田夢乃、堤ほの花、古田真菜ら九州女子を支えたゴールデンエイジ、石見も黒川碧、辰巳千亜希、永井彩乃ら連覇を支えた強力FWが卒業し、ややスケールダウンした印象もあったが、毎年優勝を争ってきたチームにはウィニングカルチャーが根付いているのだろう。

前半は5分に石見が佐藤優奈のトライと大塚朱紗のゴールで7点を先行するが、6分に福岡は梶木真凛のトライと友納菜々子のコンバージョンで追いつき、7−7の同点でハーフタイム。後半、突き放したのは石見だった。1分に大塚朱紗のトライとコンバージョン、4分に昨年のMVP、高2でサクラフィフティーンに選出された黒木理帆がトライ(大塚コンバージョン成功)で突き放し、石見が21−7で勝ち決勝進出を決めた。

 

決勝戦・石見智翠館×栃木

そして迎えた決勝は、4連覇を目指す石見智翠館と初出場初優勝を目指す栃木県選抜の対決。準決勝までの戦いぶりを見ると、栃木県に勢いがあるように見えたが……決勝はやはり別物だったのか。

開始2分に石見はBK黒木理帆が右オープンスペースを走りきって先制トライ。4分にはスクラムからのムーブでSH阿部恵が約50mを独走トライ。5分には厳しいディフェンスで相手ボールをターンオーバーし、大塚朱紗がトライ。大塚が2コンバージョンを決め、19−0で折り返す。

栃木から見れば、準決勝まで圧倒していたコンタクトエリアで後手を踏んだのが誤算だったろう。先発7人の平均身長は栃木161・3cm、石見162cmと0・7cmの差ながら、体重は栃木58・7kgに対し石見は60・7kgと2kg差があった。そして数字以上に際立っていたのが姿勢の低さ。石見はアタックでのコンタクト、ディフェンスでのタックル、両方のブレイクダウン、いずれの局面でも低い姿勢で前に踏み込むという基本で栃木を上回っていた。

それでも栃木は後半、みごとな反撃をみせた。0分、相手キックオフミスによるFKから田中笑伊が約50mを独走して反撃開始のトライ。2分には相手PKのノータッチから再び田中がカウンターで豪快に突破、相手ゴール前で倒されたところにサポートした秋山歩花が飛び込み12−19まで追い上げる。

田中笑伊(栃木選抜)

田中笑伊(栃木選抜)

勝負が決まったのは後半4分、ハーフウェー付近で攻撃を継続した石見のSH阿部がパスダミーからのアングルチェンジで栃木ディフェンスの裏をかいてインサイドブレイクし、そのままポスト下にトライ。大塚のコンバージョンも決まって26−12。栃木も5分に小西想羅がトライ&コンバージョンを返したが、反撃もそこまで。石見智翠館が26−19で勝ち、4連覇を達成した。

優勝した石見の司令塔、SO小林花奈子は「去年の智翠館はFWが強かったけれど、今年はBKでボールを動かしてトライを採る新しい智翠館を作れた。去年の秋までは弱かったけれど、この4カ月ですごくチームが成長しました」と笑顔で振り返った。


なお、カップ敗者戦は、福岡レディースが28−14で追手門学院に勝利。カップのファイナルは決勝も3決も、昨年まで決勝を戦った“名門”が、新鋭を下した形となった。

 

カップ準優勝 栃木県選抜

カップ準優勝 栃木県選抜

 

プレート戦は北信越が優勝、ボウル戦は、神戸甲北が優勝

プレート優勝 北信越選抜

プレート優勝 北信越選抜

プレート戦決勝は、北信越が22−15で東海大翔洋を破り優勝した。敗れた東海大翔洋はプレート準決勝で東北選抜と延長3分まで続いた熱戦を戦ったあとの決勝で、やや気の毒だった。プレートMVPは、北信越選抜のキャプテンを務めた児玉沙葵(さき=長野県立飯田高3年)が選ばれた。

プレート敗者戦は、北信越との延長戦から短いインタバルでの戦いを強いられた東北選抜が鹿児島女子に37−0で圧勝。プール戦では名門・神戸甲北に0−10から17−10と逆転勝ち、プレート準決勝でも0−10からラストプレーで同点に追い付き延長戦にもつれ込んだ粘りのチームは、最後の試合で爆発力を見せつけた。パワフルな突進を再三みせた東北のBK柏木那月は大会ベストプレーヤーの1人だろう。

ボウル優勝 神戸甲北

ボウル優勝 神戸甲北

ボウルは神戸甲北が大泉、鳴門渦潮を連破して優勝。MVPは神戸甲北のキャプテン、浜辺琴海が受賞した。

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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