昨年12月27日に開幕した第100回全国高校ラグビー大会はいよいよ9日、決勝戦を迎える。63校が出場した本大会で最後の2校に残ったのは、桐蔭学園(神奈川)と京都成章(京都府)だ。
桐蔭学園は昨年初の単独優勝を果たし、この試合に連覇がかかる。チームを指揮する、藤原秀之監督は「今年は(連覇について)あまり考えていなかった」と話す。「今年はコロナの影響で練習試合をすることができなかった。ぶっつけ本番で、メンバーを組み換えながら、花園で仮説を試してきた」(藤原監督)。今年のイレギュラーなシーズンでトップチームでも試行錯誤の連続であったことを明かした。
それは選手も同じで、キャプテンのNO8佐藤健次選手も「1試合1試合どれだけ成長できるかをテーマにしてやってきた。」、さらに攻撃の核であるLO青木恵斗も「ミーティングで話した展開、攻め方や展開などを本大会でやってみて、これまで県大会ではうまく外で振り切れなかったところが振り切れてアタックのテンポも出てきてよりやりやすいラグビーになってきた」とチームの成長を感じているようだ。

振り返れば県予選の決勝、東海大相模とは19-17という接戦の末、勝利した。選手たちには笑顔はなかった。花園に入ってくると、茗渓学園に36-7、日本航空石川には35-0、仙台育英には53-3、御所実業には50-7、そして準決勝の大阪朝鮮には40-12とスコアだけを見ると快進撃を続けて決勝まで進出したように見える。
しかし2回戦の日本航空石川戦では、前半2PGのみに終わり、後半になって突き放したが試合後に藤原監督は「ゲームプランと全く違うことをしている」と選手たちのパフォーマンスに課題を感じていた。
選手たちの成長について、藤原監督は「ラグビーのポジショニングが理解されていなかった。攻めの形だったり、どうやって攻めれば得点がとれるのかなど、大会前は仮説でしかなかった。それが大会でやってみることで、こうやってやれば得点をとれるかというのがわかってきた」と話した。

準々決勝の御所実業戦では、青木選手の先制トライで勢いを掴むと相手の強みであるモールに対してもしっかりとディフェンスし1トライに抑えた。準決勝の大阪朝鮮戦では、前で出てくるディフェンスに対してプレッシャーを受けるも、後半、相手の裏のスペースをついて2本理想的なトライを決めた。「もっと自分たちのやってきたことを信じるようにとハーフタイムでは指示した」(藤原監督)。
そして決勝。ここまで進出してきたという事実は自分たちがやり続けてきたラグビーを信じ、そしてやってきたことに自信がもてる確固たる理由になる。周囲が「連覇」だと騒ぐほど選手たちは浮足立っていない。
「決勝戦でプレーできることに感謝しながら、個人としては60分間しんどい時でも自分が体を張ってチームを引っ張っていく。コロナの時期大変なところもありましたが、それを乗り越えてきて学んだことがあるので、それをグラウンド内で表現したい。」(佐藤主将)
「自分が目立つとかではなく、チームのためにどうやってアタックすれば一番いいのかを考えてプレーしたい」(青木)
迎える相手は、初優勝を目指す京都成章。強い相手であることは揺るがない事実だが、60分全てを出し尽くした結果として、連覇という勲章をものにすることができるだろうか。