2月16日(土)、第50回を迎えるラグビー日本選手権の準決勝2試合が行われた。大阪・近鉄花園ラグビー場では東芝ブレイブルーパス(トップリーグ準優勝)と神戸製鋼コベルコスティーラーズ(同4位)が激突した(天候:晴れ/強風、観客:5392人)。
風上に立った神戸製鋼が前半20分までに3トライを挙げて、ゲームをリード
快晴ながら試合前に雪がちらつき、しかも強い風が吹く中でトップリーグ上位同士の対決は14:05にキックオフ。前半、主導権を握ったのは風上に立った神戸製鋼だった。フィジカルの強い東芝相手に「バトル」をテーマに掲げて臨み、「(先週の)コカ・コーラW戦の入りが悪かった」(橋本大輝主将)という反省から、いつもより試合前のアップを入念にやったことも功を奏し、接点で相手を上回る。
5分、FB正面健司が快足を飛ばしてトライ、11分にはターンオーバーから裏にキックし、最後はWTB今村雄太が拾ってそのまま走りきりトライ、20分にはWTB大橋由和がインゴールにボールを押さえて神戸製鋼が19-0と大きくリードする。
トップリーグのプレーオフファイナルから3週間ぶりの試合となった東芝はミスも目立った。「2人目、3人目が少し遅れてしまいターンオーバーされた。神戸製鋼さんもいいラグビーをしていたこともあり、受けてしまった」(東芝・和田賢一監督)、「試合の入りの部分気をつけていたが、体が動いてくれなかった」(東芝・豊田真人主将)
20分以降、東芝も徐々にミスが少なくなり、ラインアウトが優勢だったため攻める時間が増えていく。31分に神戸製鋼のHO松原裕司の替わりに木津武士が入ると、東芝はスクラムでも勝り、相手ゴールラインに迫る。ただトライを挙げることができず、ロスタイムにSOデイビット・ヒルがPGを決めて19-3で前半を折り返した。
少ないチャンスで2トライを挙げた神戸製鋼が終始、リードを守り続けた
後半、“入り”が良かったのは再び神戸製鋼だった。相手ゴール前からモールを押し込み、BKに展開。グラウンダーのキックをCTBジャック・フーリーが押さえてトライ、SO山本大介がコンバージョンを決めて26-3と23点差にリードを広げる。
ただ、東芝も「ハーフタイムに(接点で)塊で行くようにした」(和田監督)と修正すると、ボールキープする時間が増え、風上になったこともあり、相手陣で試合を進める。13分、途中交代で入った神戸製鋼のFL谷口到がモールを故意に崩したとしてシンビン(10分間の一時的退場)となり、東芝が数的有利に。15分には相手のスクラムにプレッシャーを与え、ペナルティートライを誘い26-10と追い上げる。
ただ神戸製鋼は17分、一人少ないながらもセンタースクラムから、右のライン際に展開後、大きく左ライン際まで展開して、最後は再びCTBフーリーがインゴールに飛び込み、31-10と大きくリード。結果的には、このトライが大きく響く。「後半、2トライ取られてはダメだなと思っていました」(東芝・WTB廣瀬俊朗)
それでも東芝は攻めの姿勢を貫き、21分にFL中居智昭、26分にNO8豊田真人主将、33分にFLスティーブン・ベイツがトライを挙げて31-29と2点差に追い上げる。だが、その後は、神戸製鋼が反則を犯すことなく、逆に焦る相手の反則を誘って敵陣で攻め続ける。「思ったより落ち着いていましたね。(今シーズン)いろいろ経験してきたからでしょう。今日はFWで勝つことができました」(LO伊藤鐘史)
最後はスクラムから、途中出場したNO8前川鐘平がボールを持って外に出てノーサイド。神戸製鋼フィフティーンは抱き合って喜びを露わにし、トップリーグが始まった2003年度以来、9シーズンぶりに日本選手権決勝の舞台に駒を進めた。逆に東芝は今シーズンも含めて、過去3シーズン、タイトルから遠ざかることになってしまった。
神戸製鋼は2月24日(日)の決勝戦、東京・国立競技場で2シーズン連続2冠を狙うサントリーサンゴリアスと対戦することに決まった。関西の雄がサントリーの連勝を止め、10度目の日本一なるか。
神戸製鋼 苑田右二HC(ヘッドコーチ)
「今日のテーマは『バトル』、80分間戦い続けることでした。前半は風上で上手く攻めることができて、後半は我慢してチャンスのときにトライが取れた。リーグ戦のときとは反対の結果になりました。選手たちがハードワークしてくれたことが勝利の要因です」
FL橋本大輝主将
「コンタクトの部分で差し込まれたりと課題は出ましたが、そこを修正して次の試合にチャレンジしたい。決勝戦では『ムービングラグビー』をして、ファンに喜んでもらえるような試合をしたいです。ラグビー人生で初めての決勝戦なので、気負いすぎず自分のプレーをしたい」
東芝 和田賢一監督
「前半、神戸製鋼さんに気迫あるディフェンスとアタックをさせてしまった。前半がすべてです。後半巻き返したが、点を取られてしまった。2点差の敗戦は悔しい。大きな負けとなった。過去3シーズン、タイトルが取れていない。もう一度真摯に足元を見て、次のシーズンに備えたい」
FL 豊田真人主将
「前半、風下の中、受けるシーンが多くなって、東芝らしいラグビーができなかった。単純に自分たちの力がなかった。最後まで神戸製鋼さんのラグビーをやられてしまった。悔しく思います。来シーズン、一敗もしないチームを作って、応援してくださっているファンに悔しい思いをさせないようにしたい」
斉藤健仁 スポーツライター。1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。印刷会社の営業を経て独立。サッカーやラグビー等フットボールを中心に執筆する。現在はタグラグビーを少しプレー。過去にトップリーグ2チームのWEBサイトの執筆を担当するなどトップリーグ、日本代表を中心に取材。プロフィールページへ |