ワールドカップは48試合すべてが素晴らしい試合になる--組織委員会・廣瀬佳司氏 | ラグビージャパン365

ワールドカップは48試合すべてが素晴らしい試合になる--組織委員会・廣瀬佳司氏

2019/06/04

提供:WOWOW


開幕まで4ヵ月を切ったラグビーワールドカップ。大会アンバサダーとして楕円球の祭典の魅力をアピールしながら、ラグビーワールドカップ2019組織委員会職員として大会準備に奔走しているのが、日本代表の司令塔としてラグビーワールドカップ3大会に出場した廣瀬佳司さんだ。正確なゴールキックでスーパーブーツと異名を取った廣瀬さんが語るラグビーの魅力、ラグビーワールドカップの魅力、そしてラグビーワールドカップへの思いとは?

17-145というスコアで大敗したオールブラックス戦。あれを踏み台にして世界と戦うところまで日本代表は成長した

――廣瀬さんはラグビーワールドカップ3大会に出場されていますが、世界との戦いの思い出を聞かせてください。


一番印象深いのは1995年のラグビーワールドカップです。僕はまだ京産大の学生で、初めてのラグビーワールドカップで、出場したのは1試合。それがあのオールブラックス戦。今でもラグビーワールドカップのレコードとして残っている17-145というスコアで、本当に打ちのめされました。そのときは正直、もう自分はラグビーをやっていけるんだろうか?と思うくらい落ち込みました。でも、その後の日本代表の歴史を見ると、あれを踏み台にして、世界と戦うところまで成長していけたと思います。真摯な気持ちにさせられる結果でした。

世界の進化の速さは日本がおいつけないくらい速かった

――ラグビー界が運営面でも競技面でもまだアマチュアだった時代ですね。


相手の分析についても、ミーティングでテレビ放送を録画したビデオ映像を見て『この選手にはこんな特徴がある』と話したくらい。それも半年とか、場合によっては1年くらい前の試合の映像だったりしました。


――オールブラックス戦はプール戦の3戦目でした。それまでの2試合を分析したりは…


いや、なかったですね。フォーカスしていたのは『自分たちはこう戦おう』ということくらいで、相手チームがどんなことをしてくるとか、どこが弱点だとかは考えていなかった。

それでも、『一泡吹かせてやるぞ』という意気込みは持って臨みました。でも、試合が始まって最初のコンタクトで、いきなりPRのマクドゥーエルが向かってきて、こっちも思い切りタックルに行ったんですが、吹っ飛ばされました。それまで経験したことのないような強さ、重さでした。

そして、1995年のラグビーワールドカップが終わってから、世界のラグビーがどんどんプロ化に進んでいくわけですが、その流れに日本も頑張ってついていこうとして、パシフィック・リム選手権などで強化を図ったのですが、世界の強化の流れは日本の強化のスピードが追いつけないくらい速かった。日本はそこでも遅れを取ってしまったかなと思います。

――廣瀬さん自身が経験した海外のラグビーは。


僕は1997年に4ヵ月、ニュージーランドのオークランドに留学して、パクランガというクラブでプレーしながら、オークランドのブルーズにも、練習生のような形で参加させてもらいました。当時はブルーズがスーパー12で連続優勝していた頃で、監督はグラハム・ヘンリー、No.8にはジンザン・ブルック、HOにショーン・フィッツパトリック、FLにマイケル・ジョーンズがいたような時代で、彼らと一緒に練習やミーティングに参加したのですが、環境が本当に整備されているなと感じましたね。選手は、午前は個々にフィットネス系のトレーニングメニューに打ち込んで、午後はグラウンドでチーム練習をして、練習後のアフターケアもしっかりとやる。プロフェッショナルな環境だなと感じました。

その一方で、クラブには昔ながらのニュージーランドのラグビー文化も残っていましたね。試合のあとは、ロッカールームにビールがたくさん置いてあって、まずみんなで飲んで、おしゃべりして、ゆっくりとシャワーを浴びて、それからまたクラブハウスでみんなと延々と飲んでましたね。


――廣瀬さん自身は、海外のラグビーを何歳頃から見ていたのですか。


小学生のころは、5カ国対抗の試合を年に2回くらい放送していたので、それを見るのをすごく楽しみにしていました。1987年の第1回ラグビーワールドカップのときは中学2年生だったのですが、テレビに釘付けになって見ていました。開幕戦のジョン・カーワンの独走トライは衝撃的だったし、準決勝のセルジュ・ブランコの逆転トライには感動したし、決勝のニュージーランド対フランスの日は、学校から急いで帰って、テレビの前で放送が始まるのを待っていました。

それまでオールブラックスというチームがあること、強いことは聞いていたけれど、実際の試合を見る機会はなかったですからね。もうひとつ印象的だったのはグラント・フォックスのゴールキックです。なんであんなに、機械のように正確な動きで蹴り続けられるんだろうと思いました。

日本の戦いも見てました。オーストラリア戦で、朽木英次さんがデヴィッド・キャンピージをタックルで仰向けにした場面とか、覚えてますよ。あと、新鮮だったのは白いボールですね。僕らはそれまでずっと茶色い皮のボールを使っていましたからね。そういう意味でも、ラグビーワールドカップが始まったのを契機に、ラグビーはいろいろと変化が始まったんだなと思います。

――こどもの頃から、世界のラグビーの歴史や背景に詳しかったのですね。


ラグビースクールのコーチから『ラグビーはアマチュアスポーツだからラグビーワールドカップがないんだよ。ラグビーワールドカップをやるとプロになっちゃうからな』というようなことを教わっていたんです。『ラグビーはアマチュアスポーツだから、勉強もしっかりやれ』とか言われていました。小中学生の頃に、(元ウェールズ代表の)ガレス・エドワーズやバリー・ジョンの自伝を読んだりしていました。


――廣瀬さんにとって一番身近な外国はどこでしたか。


やはりニュージーランドですね。一番行った回数も多いです。ラグビー文化が根付いているなと行くたびに感じます。個人的には、留学した時、第1回ラグビーワールドカップの時のキッカーだったグラント・フォックスにキックを教えてもらったのが印象深いです。40分くらい、1対1で教えてくれました。フォックスのキック理論は、ボールに対してかなり深い角度でナナメに入っていって、股関節の柔らかさを使ってボールを運ぶ。ダン・カーターやヘイデン・パーカーもその蹴り方であれだけ決めている。当時の僕は教えられてもできなかったけど、ずっと練習していたら徐々に出来るようになって、今では自分が教えるときも参考にしています。

――フランスのラグビーにはどんな印象を持っていますか。


僕は今、トヨタ自動車からラグビーワールドカップ2019組織委員会に出向し、競技運営の仕事をお手伝いしていて、その一環でフランスリーグ TOP14も視察に行かせていただいたのですが、お客さんの多さにびっくりしました。特に運営面ではプロ化が進んでいて、ホスピタリティ、スポンサー、エンターテインメントなど様々な面で非常に勉強になりました。


――廣瀬さんは組織委員会ではどんな仕事をしているのですか。


競技運営のところです。ラグビーワールドカップとなると、普段のテストマッチとは違う基準になる。そのルールを各チームに守ってもらう必要があるけれど、それを、ストレスを感じさせないようにして、選手にはベストパフォーマンスを出してもらえるようにいろいろな面で準備をするのが大きな仕事です。


――ラグビーの魅力と、ラグビーワールドカップ2019に期待する思いを聞かせてください。


ラグビーというスポーツは、チームスポーツの起源といってもいいくらい、いろいろな要素が入っているスポーツですよね。人間の本能の部分と重なるところが多いと思うし、誰でも、実際に一度生でラグビーを見たら面白いと思ってもらえるスポーツだと思うんです。
しかも、ラグビーワールドカップは4年に一度しかない世界大会で、世界中のスーパースターたちが、世界一を勝ち取るために集まってくる。その真剣勝負を見たら、絶対に面白いと思ってもらえると思います。

ラグビーワールドカップでは48試合が行われますが、本当に素晴らしいカードばかりで、見どころがたくさんある。中には、この国はどこにあるんだろう?と思われるような、なじみの薄い国もあるかもしれませんが、実際に試合をみたら彼らの気魄やプライドがきっと伝わってきます。

僕が楽しみなのはジョージアです。日本と同じように、前回大会でプール3位に入ったことで地域予選免除になって、本番に照準を据えてくる。大相撲の栃の心関が活躍しているように、格闘技の大国ですし、上位国を倒す可能性を秘めている。ちょうど、僕が担当している豊田スタジアムの開幕戦がウェールズ対ジョージアなので、とても楽しみにしています。

廣瀬佳司(ひろせ・けいじ)
1973年4月16日、大阪府生まれ花園ラグビー場で伏見工vs大阪工大高の決勝を生観戦したのを機に、小学2年のとき、茨木ラグビースクールでラグビーを始める。ポジションはスタンドオフ。島本高3年で高校日本代表に選ばれる。京産大3年の1994年、アジア選手権兼ラグビーワールドカップ予選の韓国戦で日本代表デビュー。同4年の1995年ラグビーワールドカップ南アフリカ大会に出場し、以後1999年ウェールズ大会、2003年オーストラリア大会とあわせワールドカップ3大会連続出場。日本代表40キャップ。通算得点422(5T 77G 79PG 2DG)は五郎丸歩に次ぐ歴代2位。トップリーグでは2004年度、2005年度、2年連続得点王。


WOWOW番組情報

「ラグビー世界最高峰 フランスリーグ TOP14」

世界各国の代表選手やスター選手たちが多数所属するTOP14はいよいよプレーオフが開幕!決勝まで全5試合放送!

プレーオフ準決勝

トゥールーズ vs ラ・ロシェル 6/8(土)深夜3:45~ [WOWOWプライム](生放送)
クレルモン・オーヴェルニュ vs リヨン 6/9(土)よる11:15~ [WOWOWプライム](生放送)


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