日本ラグビーの最前線で世界と戦い続けてきた選手の一人が小野澤宏時、そして、日本ラグビー界のトップランナーとして走り続けている佐々木隆道両氏が海外ラグビーとの出会い、そしてフランスリーグTOP14の魅力を語る!
「TOP14はホーム&アウェイで2度対戦するところが面白い!2回目の対戦では互いに全然違うチームになっている」小野澤宏時
――小野澤さんにとって、海外ラグビーとの出会いはどういうものでしたか。
僕にとっては、日本代表に選ばれて海外に出たときに、現地のテレビで見ることが始まりでしたね。子どもの頃は、今ほど外国のラグビーが放送されていなかったし。
――いろいろな方が、外国のラグビーを自分のプレーの手本にしたり、教材にしたりしたという話をされているんですが、小野澤さんの場合は?
僕の場合、手本というよりは、同じピッチに立って対戦しているイメージですね。『オレだったらこうしてるのに』とか『ここではこうコールしてれば』とか、一人実況しながら見ています。妻に『楽しそうだね』と言われて『うん、楽しいよ』と答えてます(笑)
――たとえば、今年のシックス・ネーションズなんて、どんな立場から見ていたのですか?
やっぱりイングランドが中心でしたよね。エディー・ジョーンズがどういうラグビーをするのか、それに対して周りのチームは、どんな前後のストーリーを持って臨むのか。どういう試合をしたいのか、どこで勝負しようとするのか。そういうことを戦力分析して見ていました。『オレだったらこうするのに』とか言いながら(笑)
――今年のシックス・ネーションズを見ていて注目したところ、気になったところ、勉強になったところなどありましたか。
今年、気になっていたのはキックの使い方ですね。どのチームも、単純にエリアを取るんじゃなく、目線を切れるキックを多用していた。ハイボールやロングキックなら、次にボールの争奪が発生するエリアと時間は見えるんですが、どちらに弾むか分からないチップキックとか、どちらもボールを保持しない時間がゲームの中で増えている。
その状況を意図的に作っているんですね。ボールをキープするとか、キックで地域を進めるというだけでなく、お互いにボールを持たない状況でどう相手にプレッシャーをかけるかがトレンドになっていると思います。僕もテレビで試合を見ながら『ここにプレッシャーをかけよう』とか『FB(フルバック)をここに立たせておこう』とか言いながら、バーチャルに対戦しています。
――他の競技を見るときも同じ感覚ですか?
ラグビーを見るときは、一緒になって対戦してますけど、サッカーを見るときは違いますね。ラグビーは前にパスしちゃいけないけれど、サッカーは360度どこにでもパスを出せる。そういう条件のもとで、ディフェンス側はどうターンオーバーしようとするのか、そういうところから何かを吸収したいと思って見ています。
他競技を見るときの方が、学ぼうという意識が強いと思いますね。特にサッカーに関しては、サッカーのトレンドが数年遅れてラグビーに入ってくる傾向があります。先ほど触れた、ポゼッション(ボール保持)をせずに相手にプレッシャーをかけるのもその一例です。ボールを持っていない側が、再獲得のためにどんなフォーメーションを取るのか、どう動くのか、そういうところに興味を持って見ています。
――ラグビーに話を戻すと、フランスリーグTOP14はどのようにご覧になっていますか。
シーズンが長くて、全チームとホーム&アウェーで2回対戦するところが面白さですよね。プレシーズンが短くて、シーズンの初めは全然仕上がっていない。何を強みにしようとしているのかが見えなかったり、前年までの戦い方をそのまま使っているところもある。だけど、2回目の対戦の時には全然違うチームになっている。やっぱりシーズンは長くやる方がいいな、チームの成長が見えるし、面白いなと思いますね。日本ラグビーでもやってほしいな。
――五郎丸選手のフランス挑戦についてはどう見てらっしゃいますか。
僕はコメントする立場じゃないけど、フランスリーグTOP14が放送されるようになったり、すごくいい影響が出ていますよね。何より、フランスリーグというレベルの高い場に日本の選手がいて、チャレンジしているということ自体がいい。
日本人って、そういう人を応援するのが好きですもんね。僕もテレビの前で家族と一緒に『頑張れ!ゴローマル!』とか叫んで見ていますし。五郎丸が出ないときは『なーんだ』と言って見なかったりもするんですが(笑)
――小野澤さん自身も外国でやりたい気持ちはあるのですか。
ありますよ。トップリーグは昨季(2016年度)でキヤノンを退団したので、今のところ一線を退いたことになっていますが、プレーしたい気持ちは今も強いです。団体競技なので、自分が『やりたい』と言って続けられるものではないですが、逆に言うと、『やらせてほしい』と飛び込んでいけばプレーさせてもらえる大らかさもラグビーには、特に外国には残っている。機会があったら、日本語の通じない、できれば英語も通じないような外国でラグビーをしてみたいです。