12日、ラグビーリーグワン・ディビジョン1、本拠地を神奈川にもつ三菱重工相模原ダイナボアーズと横浜キヤノンイーグルスによる「神奈川ダービー」が相模原ギオンスタジアムで行われ、神奈川県民3,000人の無料招待を含む7,089人の観客がスタジアムに足を運んだ。
この日、メインスタンドから向かって右から左に強風が吹いて、試合の展開を大きく左右した。前半、コイントスで風上を取ったダイナボアーズは、風を利用して敵陣に入り優位に試合を進めた。
前半7分、ダイナボアーズは中盤でボールを奪うとWTBタウモハパイホネティが先制のトライ。SOマット・トゥームアのコンバージョンも決まって7-0とする。イーグルスも12分、WTBイノケブルアの突破からSHファフ・デクラークの飛ばしパスを受けたWTB竹澤正祥が左隅にトライを決め7-5とした。
前半19分、ダイナボアーズは相手のペナルティーで敵陣ゴール前のラインアウト。モールを組んで、CTBマット・ヴァエガがデクラークのタックルをうけながらスピンしてグラウディングしたかと思われたが、TMOの結果トライは認められず。
アドバンテージが出されていたダイナボアーズのラインアウトで再開。再びラインアウトモールで押し込み。SOトゥームアがトライ。14-5とリードを広げた。
24分、ダイナボアーズのペナルティーでようやく敵陣に入ったイーグルス。ラインアウトからアタックするも、トップスピードで入ってきたリアキマタギ・モリに対して、トゥームアがタックル一発で止めるとCTBカーティス・ロナがジャッカルを決めチャンスの芽を摘むと、28分、相手ラインアウトをターンオーバーしたダイナボアーズは、トゥームアがゲイン。さらにトゥームアからボールを受けたFL佐藤弘樹がトライ。21-5とリードを広げ、前半を折り返した。
サイドが変わった後半、風上となったイーグルスが今度は風を味方にして本来のラグビーを取り戻し始める。
後半3分、SO田村優のPGで21-8とすると7分、田村の50/22により、敵陣に入ったイーグルスは、一度ノットストレートでチャンスを逸したかと思われたが、直後の相手ボールスクラムに対してペナルティーを獲得し再びマイボールラインアウトのチャンスを迎える。
今度はしっかりボールを確保し、モールを押し込みNO8シオネ・ハラシリがトライ。21-15と6点差に迫る。
さらに後半16分、ダイナボアーズが自陣ゴール前のラインアウトでLOスティーンカンプがカットしたルーズボールに対して、イーグルスLOモリが反応しそのままトライ。21-22と逆転に成功した。
後半風下を逆手に、トゥームアがキックオフボールを高く蹴り上げ戻ってきたボールを再獲得する策に出たダイナボアーズは直後のプレーで、イーグルスのノックオンを誘い、マイボールスクラムとする。イーグルスのペナルティーで、ダイナボアーズが敵陣に入り前半から手応えがあったモールでゴールに迫るが、CTBヘンリーブラッキンに対して、梶村祐介がボールに絡みノックオンを誘いトライにつなげることができない。
直後のスクラムでイーグルスがプレッシャーをかけてペナルティーを獲得。イーグルスがこの試合最大のピンチを切り抜ける。ダイナボアーズとしては後半の流れをつかめる絶好のチャンスを逸してしまった。
すると後半25分、イーグルスはFBエスピー・マレーのトライで29-21と引き離しにかかる。さらに37分、WTBブルアがトライを決めイーグルスが21-34とし勝負を決めた。
あと1トライとればボーナスポイント獲得できるイーグルスは残り1分少々の中、アタックを継続した。すると40分、途中出場の小倉順平が体を反らせながらもボールをグラウディングしトライ。21-41でイーグルスが3トライ差をつけてダイナボアーズに勝利し、勝ち点5を獲得し38とのばし3位に浮上。
勝利したイーグルスは次節、2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイとの上位対決に挑む。第2節で戦ったときは27-27のドローだった。トップ4入りを確実にするために負けられない試合となる。
敗れたダイナボアーズは、勝ち点20で8位。次節は首位ワイルドナイツとの対戦。トップチームへの挑戦が続く。
横浜キヤノンイーグルス 沢木敬介監督
前半、風下で思ったより風が強くて選手たちがいつもと違う我々のプレーじゃないことをやってしまって、ああいう展開になると、相手が勢いついてしまうんですが、本当にチームの成長を感じたのは、後半、しっかりと自分たちがまたコントロールして自分たちのスタイルのラグビーに戻せたというところです。
前半最初のああいうゴタゴタを前半の間に直せるくらいの修正力がないと、今後トップ4と戦うときに命取りになる。まずはそこをチームとして成長させていかなくてはいけない。あと、経験のない選手もたくさんいるんでうちは、それが繋がっているとも思うので、今日は本当にいい経験ができたと思います。
――ハーフタイムではどういった指示を?
また怒っていると思っています(笑)?全然怒ってなかったですよ。ただ普通に何が原因でこうなっているのかというのを理解できている選手、できていない選手がいたので、前半はもう過ぎたことで忘れて、後半どういうふうにして戦うか、どういうマインドセットにしなくてはいけないかというのを伝えるだけでした。
後半みたいに、最初からスマートなラグビーをしないと、フィジカルもメンタルも、一貫性の部分がまだまだ足りないチームだと思うので、そこは埋めていかなくてはならない。
――ブルーレヴズ戦からどういう一週間だったか。
先週は、レフェリングと合わなくて選手たちが自分たちで崩れてしまった。それも含めて一喜一憂しないで。メンタルの一貫性が必要だと思っています。
――ボーナスポイント獲得して3位に浮上しました。昨年と比較して今シーズンの手応えは?
僕らは1試合全力で戦って、1試合1試合成長していくことが、最終的にトップ4に入れるか入れないかの結果に直結すると思っています。目の前の1試合にフォーカスしながら、今現状3位という位置にいるという、そういう力を持っているということを、慢心ではなくて、ちゃんと自分たちの自信にしていかなくてはいけないと思います。周りのファンやメディアの皆さんにも、イーグルス力あるな、と思わせなきゃいけないと思いますし、貪欲にチームとしてレベルアップしていかないと我々がターゲットにしている位置にはいけないと思うので、チーム全員が成長していけたらと思います。
横浜キヤノンイーグルス 梶村祐介キャプテン
前半40分の過ごし方、自分たちのプレー選択、そういったところが自分たちの経験のなさがすごく出てしまった。それを後半、点差ビハインドの中ではじまりましたが、最後ボーナスポイントを取るところまでもってこれたことができたのはチームの成長を感じましたし、勝って反省して次に迎えるというのは、今までのイーグルスではあまりなかったので、自信のつく試合だったと思います。このレベルで満足していないので、自分たちはもっと上を目指そうとして戦っているので、次に向けてもしっかり準備したい。
――前半風下でしたが
自分がコイントスに勝てなかったというだけです。本当は風上取りたかったですけど、最近前半から風下でという試合が続いたので、そういう意味ではあまり焦りとかはなかったです。ただ、風下の中でのプレー選択は良くなかった。基本的には、9番10番の選手がコントロールするので、そこの選手と話して、ある程度ボールを持とうとしていましたが、それ以外のところで、選手が少しパニックになってしまって、簡単に相手にボールを与えてしまったり、ペナルティーをおかしてしまい、自分たちから相手に流れを渡してしまっていた。
――次の試合に向けて
ショートウィークということもあり、準備する期間も短いので週のスタートから全力でスタートをきりたいですね。(相手が)クボタさんということで、フィジカルのところで勝っていかないといけないと思うので、第2節では引き分けでおわっていますし、次の試合はしっかり勝ちきれるようにチーム全員で準備したいです。
昨年のシーズンも本当にこの時期からチームが少しまとまりを欠いて、トップ4はつかめなかったのでチームとして、まとまって試合に出るメンバー出ないメンバーも同じターゲットに向かって進んでいきたい。
三菱重工相模原ダイナボアーズ グレン・ディレーニHC
強いチームに対してチャンスの場面でしっかり取り切るということが、我々には非常に大切だということを学びました。この風を我々も前半生かすこともできましたが、キヤノンさんはもっと活かしていた。この強い風の中でどうやって対応すべきか、その中でも敵陣に入ることができ何回かチャンスはありました。後半モールを押し込む場面がありましたが、そこで1回でもトライが取れたら流れが来たと思いますが、相手も必死にディフェンスをして止められてしまった。
バックフィールドやミスのところは改善しないといけないところはありますが、80分通してみんなのハードワークが見えました。必死に相手を止めようとした姿を見れて自分は嬉しかったですし、ディビジョン1にあがってどうやって上位チームに勝つのかを学んでいるところで、こういうタイトな試合から次どういかしていくかがすごく大事になってきます。
前半は自分たちのやりたいことはすごくできたと思いますし、特に6番佐藤、7番坂本の2人とも7番をメインにする選手ですが、彼らが相手のビッグキャリを止めることができていたのが良かった。
どうやって試合の流れをコントロールするのか、どうやって自分たちが有利な立場に立つのかというところはまだまだ学ばないといけない。
三菱重工相模原ダイナボアーズ 岩村昂太キャプテン
後半チャンスはあったものの取り切れなかったところで、流れを掴みきれなかったところがありました。そこを反省として改善点としてこれからまた成長していきたい。
風下なのに、さらに簡単なペナルティーで自陣に入られてしまい、抜け出せなかったところがあったので、そこはディシプリンのところをもう一度見直していかなきゃいけないと感じました。