1月22日、三重交通グラウンド・スポーツの杜・鈴鹿では「第9回全国女子ラグビー選手権」準決勝、三重パールズ(以下、パールズ)対東京山九フェニックス(以下、フェニックス)の一戦が行われ、34-19でフェニックスが勝利を収め決勝進出を決めた。今シーズン太陽生命ウィメンズセブンズシリーズを制したフェニックスは節目となる創部20年目で、初の「2冠」まであと1勝とした。

単独チーム同士の戦い

パールズ・HO谷口琴美

パールズ・FL齊藤聖奈

パールズ・LO玉井希絵

パールズ・FL細川恭子
齊藤聖奈、谷口琴美、玉井希絵、細川恭子、庵奥里愛ら多くのサクラフィフティーンを擁するパールズを相手に、フェニックスはピッチの横幅をいっぱいに使ってボールを展開。

SO黒川碧が大きく展開
パールズディフェンスを翻弄した。前半7分にWTBニア・トリバーの先制トライもそこに至るまでにFW・BK一体となってフェイズを重ね、フィニッシャーとして最も強いランナーを使った戦術がはまった。

前半7分WTBニア・トリバーのトライ
前半21分にも同様にボールを大きく展開し、ディフェンスの穴をつくとLOジェイド・コ―ティスがゴール中央にトライ。前半終了間際にも、再びWTBニアがトライを決め17-0とリードして前半を折り返した。

前半21分LOジェイド・コーティスのトライ

パールズはセットプレー・ラインアウトで苦しんだ

FB大黒田裕芽は右足だけでなく左足でも精度高いキックスキルでエリアを挽回した

先に決勝進出を決めた日体大メンバーが試合を視察
後半開始のキックオフカウンターに対して、プレッシャーをかけ相手のミスを誘うとそこから敵陣に入り込み、FL鈴木実沙紀がトライを決め24-0とすると、11分、PR髙木恵のトライで31-0と大きく突き放した。

後半最初のキックオフ、速い出足でプレッシャーをかけるフェニックス

後半5分、FL鈴木実沙紀キャプテン自らトライを決め24-0とリードを広げた

後半11分PR髙木恵のトライで31-0と圧倒した

大黒田裕芽がゴール決める
しかし15分、フェニックスはLO佐藤優奈がノーバインドタックルでシンビンが出され一人少ない状況になると、14人の時間帯にパールズPR北野和子、WTBジャネット・オケロにトライを決められ、31-12とされる。

後半15分LO佐藤優奈がノーバイトタックルでシンビンに。

1人多いパールズは後半19分にPR北野和子がトライ

後半25分パールズはWTBジャネット・オケロのトライ
後半26分にフェニックスは4人のフレッシュレッグを投入し、ゲームを締めくくりに入る。再び敵陣でプレッシャーをかけ相手のペナルティーを誘発すると、FB大黒田裕芽がしっかりPGを決め勝負あり。

後半26分、敵陣でPKを獲得したフェニックス。大黒田が確実に決めて34-12とした。

地元開催ということでパールズ・片嶋選手の横断幕も

パールズはCTB古屋みず希の突破からLOメレワイ・キュムが意地のトライ
地元の声援を受けたパールズは試合終了間際にLOメレワイ・キュムがトライを決めるも前半の失点が響きノーサイド。東京山九フェニックスが三重パールズに快勝し決勝進出に駒を進めた。
東京山九フェニックス 鈴木実沙紀キャプテン

「素直に今決勝の舞台に出る資格を得ることができたことがすごく嬉しいです。それと同時にこのチームはすごい素敵なチームなので、このチームで国内で最後の最後まで長くシーズンできるということも嬉しいですし、チームメイトを誇りに思っているので最後の1試合、80分しかないのでそれに向けて準備をして80分間楽しんで、最後に笑えるように良い準備をしていきたいと思います」

SH野田夢乃が攻撃のテンポをあげた
――SH野田夢乃さんの球さばきが冴えていました。
「本当に野田さんは9番(SH)で出てくれているんですけど、まあ、テンポが速いです。FWが疲れていようがお構いなしで、前にスペースがあったらここに走れという感じに球を放ってくるんで(笑)。そこがやっぱり私達のテンポを作っていますし、その速さだからこそできるスペースがあって、BKがそこにボールを運んでくれるので、そこを信じて、私達はモメンタムをいかに作っていけるかが大事だと思って、どれだけ疲れていてもこのSHについていかなくちゃいけないと、死ぬ気でプレーしています」

――ワールドカップから戻ってきてチームにどのくらいからチームに合流しましたか
「コンディションの関係で、初戦には間に合わなかったんですけど、去年から単独チームで出場しているということもあって、ゼロからのスタートではなく、昨年培ったものが今年の土台になっていました。私自身は戻ってから少し調整に時間はかかったんですけど、私がいない間、みんなですごく細かくいろんなことをやってきて、みんなが役割を明確にしていたので、私は教えてもらいながら、コミットしやすかったですね」

セブンズ同様、チーム内競争がチーム力の底上げにつながっているフェニックス
――チームとしての課題は。
「今日の試合だけではなく、関東大会から通してチーム内のセレクションは厳しくなっています。「攻めたぎる」中で細かいところもしっかりやっていかなくてはいけないので、そこができるかどうか、スタッフもそうですし、私達選手たちも指摘しあって修正していかなくてはならないと思っています。今日も決して完璧な試合じゃなかったですし、最後に笑えるように準備していきたい」

「私達は完全なプロフェッショナルチームではないですが、すごくラグビーに時間を費やすことができている環境です。女子ラグビーという意味はもちろん、女性スポーツとして、2冠をとることや、男子のラグビーを見た方が私たちのラグビーを見て『女性のラグビーって面白いな、女子もこんなにできるんだな』って思ってもらえたら私達もやっぱりすごく嬉しいですし、女子ラグビーの価値とか、女性スポーツという価値が上がってくると思うので、私達もラグビーを通して何かを体現できたらいいなと思っているので、今日の試合を見ていただいた方にそう感じていただけたら嬉しいです」

セブンズMVPのニア・トリバーは14番で出場。前半2トライを決め流れを引き寄せた
――決勝戦の相手は日体大となりました。
「過去に2冠しているのは、日体大さんだけなのですが、私達もあと1勝というとこまで来ています。勝てば結果的に2冠となりますが、今年はフェニックスにとって創部20周年という大きな年なので、そこで歴史ある日体大さんと決勝で試合ができるのはすごく嬉しいです。関東大会では勝ちましたけど、決勝になったらまた舞台も違いますし、状況も違うので、皆さんに決勝らしいいい試合だと持ってもらう試合ができると思います。そして最後は私達が勝って笑えるように2週間準備したいですし、すごく楽しみです」

東京山九フェニックスはチーム創部20周年という節目にセブンズと15人制の「2冠」を果たせるか。
東京山九フェニックス SH野田夢乃

「素直に勝てて嬉しいです。フェニックスは太陽生命セブンズシリーズで優勝して、今回15人制も勝って絶対に2冠を達成しようというのが今シーズンの目標なので、あと1勝なので、決勝にむけてあと2週間やっていきたい」
――今日の試合はフェニックスの強さを感じました。まずはアタックについて、FWもBKも全員が前に出ていましたが、準備の段階で手応えやパールズ戦に向けて意識していたことはありますか。
「フェニックス全員が「攻めたぎる」プレーをしているので、一人ひとりがちゃんとそれに乗っかってチーム全体で1人のプレーに協力していくみたいな感じです」

CTB岡本涼葉が狭いスペースを縦にゲイン

突破するPR小鍛治歩
――球さばきという点で、BKでいくかFWでいくかについてはどういうバランスでプレーしていますか。
「FWがしっかりゲインしてくれて、それでできたスペースにBKへすぐ出せるというように、FWとBK、それぞれの役割をしっかり明確に果たせているので15人全員でアタックができていると思います」

PR髙木恵

LO佐藤優奈
――先ほど四宮監督は、ケン・ドブソンコーチの高いスキルを要求する緻密なアタックに対して、チームとして遂行してくれたと話していました。
「みんなチャレンジャー精神が強いチームなので、新しいものが来たらチャレンジしてやってみようという感じでやってみて、できなかったらそれまでですけど、やって、できて、また次にステップアップできていると感じるので、多分新しいことができていると思っています」

――決勝戦の相手は日体大となりました。
「私達も日体大も同じようなラグビーをするチームなので、本当に忍耐力が必要になってくると思います。一つひとつのプレーを絶対ミスをしないで、精度高くやった方が勝つと思います。あと2週間でこれまでやってきたことを精度高く試合でやって勝てるようにします」

いつも元気で明るいフェニックス、最後も笑顔でツーショット