すごい試合だった。
5月25日に行われたリーグワンプレーオフ準決勝。
ワイルドナイツとスピアーズ。一昨季のプレーオフ決勝を戦い、今季のリーグ戦では2度戦って2点差とドロー。まったくの五分五分と見られた両雄の戦いは、リーグワンの最高到達点を示すように隙のない攻防を続けた。
その試合にあって、オレンジの背番号9の輝きは圧巻だった。
おそらく、誰が選んでもプレーヤーオブザマッチは藤原忍が選ばれただろう。

POMに選ばれた藤原忍
スピアーズと言えば、大型FWの圧力で試合をドミネートする印象が強い。
スプリングボクスでワールドカップ2連覇を飾ったHOマルコム・マークスに、ルアン・ボタとデーヴィッド・ブルブリングのツインタワー、FLタイラー・ポールを加えた南アフリカ・カルテットに、元宣教師という異色の経歴を持つ超重量PRオペティ・ヘル…高さも重さもリーグワン最強クラスの大型FWが勤勉に働き、試合を支配する。だが、安全なアプローチでセーフティーな勝利を得るだけなら、これほどファンが熱狂するかどうかは分からない。

強いスピアーズに、ファンを熱狂させるチャレンジングスピリットを加えるのが、背番号9をつけて躍動するSHの藤原忍だ。
ワイルドナイツ戦、5-3で迎えた前半10分だった。ワイルドナイツFB山沢拓也のキックに猛然と襲いかかってチャージした藤原は、後方に弾んだボールを拾うとそのままトライラインを駆け抜けた。
