何をそんなに時間をかけてるんだ?
関東大学対抗戦の開幕週、慶大が昨季優勝の筑波大を破った一戦で、少なくないファンはそう呟いただろう。言葉に出さないまでも、思った人はかなり多かったと思う。
慶大FB児玉健太郎のペナルティキックのことである。
集中を高めている。感覚を研ぎ澄ます……そんな感じ
自陣でも、ハーフウェー付近でも、敵陣深く入っていても。タイガージャージーの背番号15は、両手でしっかり持ったボールをじっと見詰め、長いこと静止してから、ゆっくりとキックのモーションに入り、タッチラインの一番先を目がけて左足を振り抜いた。
ボールは、まるでジェットエンジンを搭載しているように高い軌道を描き(この急角度で飛んでいくキックは近年、本当に珍しい!)味方のサポーターは驚嘆の、相手側サポーターは悲嘆の、それぞれ叫びを発することになる。前半ロスタイムには自らトライを挙げたが、それ以上に児玉のキックは、慶大の筑波大撃破に大きな役割を果たした。