未来を予感させる、希望の疾走だった。
6月24日、今春の日本代表シリーズ最終戦となったフレンチバーバリアンズとの第2戦、前半ロスタイム。それまで1PGに封じられていたジャパンXVの希望を載せて走ったのが背番号14、廣瀬俊朗主将にかわって出場していた19歳の竹中祥だった。
自陣ゴール前に攻め込まれたピンチで、菊谷崇のジャッカルで相手のノットリリース・ザ・ボールの反則を得ると、SH日和佐篤がクイックタップ。CTBニコラス・ライアンの手を経て竹中にボールがわたったのは、自陣22mライン上。
そこからおよそ10秒の間、スタジアムは熱狂のるつぼと化した。相手タックルが飛んできても、意に介さずひたすら前へ前へと加速。足下に飛び込まれても、腰にタックルされてもビクともしない頑健な肉体。
トライライン目前で相手CTBボヌバルに追いつかれても、脇目もふらずにインゴールへ。
それは自分のスピードと、体幹の強さへの確信の表れだ。
そう、このポジティブさこそ、竹中祥の力の最も大きな源泉なのだ。
「あの場面は、チャンスだと思って、すぐにボールを回してほしくて、大声で呼びました。ボールをもらってからは、思い切り走りました。スペースは見えてたし、行ける! と思って必死で走りました」
「それまでは、外でボールを待つだけじゃなく、内側のサポートにつかなきゃ、という意識が強かったけれど、あの場面では外でボールをもらえた。時間も時間だったし、チャンスは多くないし、ゼッタイに走りきらなきゃ、と」