1月20日、NTTジャパンラグビーリーグワンは第6節を迎えた。三菱重工相模原ダイナボアーズ(2勝3敗)はホームに東京サントリーサンゴリアス(4勝1敗)を迎えた。先週ワイルドナイツに大敗を喫したダイナボアーズは、もう一度原点に回帰して前半から気持ちの入ったプレーを連発。さらに風上のアドバンテージを使って、事前に準備したゲームプランが見事にハマり、トライを量産した。
2024/01/20
文●編集部
前半5分、WTB中井健人の仕掛けから、ダイナボアーズとして初キャップのCTB岩下丈一郎がピックゴーでゲイン。SH岩村昂太につないで先制のトライ。さらに8分、相手のペナルティからダイナボアーズが敵陣22mマイボールラインアウト。SOジェームス・グレイソンからのキックパスをNO8ジャクソン・ヘモポがキャッチ。そのままインゴールへトライ。12-0とリードを広げる。
さらに直後のキックオフ、NO8マット・ヴァエガが敵陣までゲイン。さらにグレイソンのキックパスをWTBアライアサ 空ローランドがキャッチ。敵陣深くに入るダイナボアーズ。
FL佐藤弘樹が敵陣10m付近でボールを持つとサンゴリアスWTB尾崎晟也、CTB中村亮土のタックルを交わし抜けると、そのままゴール中央にトライ。前半の10分で3連続トライでダイナボアーズが19-0とリードを広げた。
これでは終わらない。15分、サンゴリアスがマイボールスクラムでペナルティを獲得しダイナボアーズ陣内深くに攻め込むも、SO高本幹也からFBチェスリン・コルビへのパスをFBマット ・ヴァエガがインターセプト。80m走りきりトライ。26-0とさらにリード。さらに22分、SOグレイソンのPGを追加し29-0と大きくリードを広げた。
追いかけるサンゴリアスは、25分、敵陣10mでPKを獲得。高本が敵陣深くまで蹴り込みゴール前ラインアウトのチャンスを迎える。FWでゴール前でしつこくフェイズを繰り返し最後はLOトレヴァ ・ホゼアが名が左腕を伸ばしてグラウディング。7-29とする。さらに前半終了間際、ゴール前のマイボールスクラムからプレッシャーをかけたサンゴリアスはBKに展開しWTB尾崎晟也がトライを返し14-29として前半を終えた。
サンゴリアスはSH流大を後半から投入。風上のサンゴリアスは前半とは逆に優位に試合を運ぶ。相手からもらったチャンスをサンゴリアスが活かす。46分、46分、敵陣22m深くでPR小林賢太がゲイン。サポートに入っていたFLサム・ケインにつなぎ、そのままケインがトライ。これで21-29と8点差にした。
57分、再びサンゴリアスはスクラムでペナルティを獲得し敵陣に入る。60分、22m手前でペナルティーを獲得するとサンゴリアスはショットを選択。高本が難なく決めて24-29と5点差にすると、61分、敵陣10m付近のラインアウトからWTB尾崎晟也がゲイン。うちに返したルーズボールを流大がインゴールで抑え同点のトライ。高本のコンバージョンが決まって31-29とサンゴリアスが29点差をひっくり返した。
ここまでチャンスらしいチャンスがなかったダイナボアーズ。67分、自陣10m付近のサンゴリアスボールのスクラムでペナルティを獲得。さらにSHジャック・ストラトンのハイボールを中井健人がキャッチ。ここでサンゴリアスはノットロールアウェイのペナルティ後半入って初めて敵陣22m内側に入った。
モールでゴール前5mまで前進。72分、相手のペナルティーからようやくチャンスを迎える。このチャンスを活かしたいダイナボアーズはしつこく近場でフェイズを重ね、ゴールラインに迫る。サンゴリアスもペナルティーを犯すことなくディフェンスする時間帯が続く。14フェイズ目、グレイソンがロングパスでCTB岩下へパス。外側には中井がいて、対するディフェンダーは流大一人の状況。岩下がそのままインゴールへボールを持ち込みフィニッシュ。ダイナボアーズが再び逆転に成功。34-31とした。
追いかけるサンゴリアスは76分、SO高本幹也がハーフウェイ付近から精度高いキックで敵陣ゴール前にボールを蹴り込む。ダイナボアーズはマイボールラインアウトをキープしたかったが、LOハリー・ホッキングスがインターセプト。サンゴリアスが怒涛の攻撃でゴールに迫る。ダイナボアーズも粘り強くディフェンスし時間が刻々とすぎる。ついにノーサイドのホーンが鳴り、サンゴリアスのアタックが継続。
78分、サンゴリアスはペナルティを獲得。流大のタップキックからリスタート。行き詰まる攻防が続く。続いたフェイズは20フェイズ。高本からパスを受けた中野将伍が右隅にトライを決めてノーサイド。サンゴリアスが34-36で劇的逆転勝利を収め、暫定3位に浮上した。
東京サントリーサンゴリアス 田中澄憲監督
今日もタフなゲームで本当に勝ちきれてよかった。ダイナボアーズさんは前節の試合で、ああいう負け方をして、この試合には本当にいろんなものを取り戻しにくるというのはすごくわかっていて、そこの準備をしたつもりだったんですけども、やっぱり最初に29対0というところからスタートしてしまったというのは自分たちが招いた結果かなと思います。もう一回、そういった部分、甘さというか、一貫性のなさを見直してどんどんレベルアップしたい。
29対0からひっくり返せる力があるということは間違いないと思いますし、選手たちが最後まで諦めないというファイティングスピリッツというのも、自分たちのカルチャーとしてありますので、それをまたちょっと違った方向に出せるようにしていきたい。
週末天気が悪くなるかもしれないということはわかっていたんですけど、もつかなというのもあって、そこまで今日みたいな環境でのシチュエーションを選手たちに意識させることができていなかった。
こういうときほどシンプルにフィジカルでしっかりプレーして、そこからキックでプレッシャーかけるということは、どちらかというと天気がいい状況での設定が多かったので、コーチ陣としてはすごく反省すべきことかなと思っています。
――ダイナボアーズのラグビーについては
去年からすごく特にキックからのチェイスとか、ディフェンスの部分のフィジカリティーとか、そういうひたむきなチームなので、今日も変わらず素晴らしいラグビーだったと思います。学ぶべきことがあったんじゃないかなと思います。
東京サントリーサンゴリアス HO堀越康介キャプテン
前半最初の15分、本当に自分たちの甘さが出た試合だったなと思います。そこからもう1回自分たちのやることに立ち返って、雨の中でシンプルなラグビーを遂行できて、最後の最後逆転できたことは本当にチームのみんなを誇りに思いますし、勝って反省できるのが一番良かったかなと思います。
――前半リードを許したところ
僕たちがやりたいことをそのままやられたなという感覚だったんですけど、ファースト20分、とにかく激しくいこうというふうに入ったんですけど、フィジカル面で全て受けてしまったのと、相手が準備してきたこと全てうまくハマってしまった。ハドルの時に、人任せになっている雰囲気があったんで、もう1回、一人一人「スイッチ・オン」しようと声をかけました。
三菱重工相模原ダイナボアーズ グレン・ディレーニHC
正直悔しいです。みんなとても良いハートでしたし、僕たちのゲームプランにコミットしてくれていいところがたくさんありましたし、相手にも多くのプレッシャーをかけることができました。最後のところで止めきれなかったところは残念でしたけど、そういう重要な局面で負けてしまいましたが、本当にギリギリのところで、あと少しのところで大きな勝利をもぎ取れた試合だったので、そこは残念に思います。
――前節の大敗からどうチームを立て直してきたか
自分たちがパナソニック戦で見せたようなチームではないということをみんな信じているので、そこは今日の試合で見せることができたと思います。トヨタ戦もキヤノン戦も全て勝てるところまでいけてたと思うので、ハードワークできるチームだと思っています。
――7番佐藤、13番岩下、初出場しました起用の意図とパフォーマンスの評価
2人は選手の怪我もあり出場する機会を与えました。どの選手にも常に言っているのは、しっかり準備をしてチャンスが来たら、それをものにするようにということです。2人とも長い間出場機会がなく我慢し続けてそのチャンスが来た時にしっかりそのチャンスを掴んでくれました。2人ともスコアにも絡んでいいパフォーマンスを見せてくれた。
――リーグ再開までどういう準備をするか
選手が嫌だというくらいハードな練習をし続けます。それはもう僕たちのスタイルなので、明日は休んで、そこからまたしっかり頑張ってもらいます。
三菱重工相模原ダイナボアーズ 岩村昂太キャプテン
試合に関してはもう僕も本当に悔しいというこの一言だと思います。しっかりまた振り返って、次の試合まで5週間あるので次また始まるときにしっかりまた強くなったダイナボアーズを見せたいと思います。
――前節の大敗からどうチームを立て直してきたか
先週の試合は我々のスタンダードでは全くなくて、今週は自分たち一人一人の役割をしっかり遂行しようという話をしてきてそこにフォーカスしていたんですけど、グラウンドに立つときのマインドセット、まず相手に勝つというところが先週の試合ではありませんでした。その結果ああいう大差で負けて恥ずかしい試合をしてしまったという振り返りがあったので、今回は特にマインドセットのところ、強い気持ち持って戦おうという話をして1週間が始まりました。
――負けて悔しいと思えるようになったのは
このチームで勝ちたいという気持ちが強いです。チームとしてもこの結果に満足している人は誰もいないと思います。我々は今後トップチームに勝てるようなチームになるという目標があるので。
三菱重工相模原ダイナボアーズ SOジェームス・グレイソン
――後半風下の中でどうやってチャンスを作りたかったか?
もう少し前に走れるなら、蹴らずにアタックをしてもよかったかもしれない。ボールをもうちょっと持って、もちろん自陣深いところだったら蹴るけど、フィールドの真ん中だったら我慢してボールを保持することでチャンスに繋がったかもしれない。自分たちのコンテストキックがうまくいった時には相手にプレッシャーをかけることができていた。
空中でタックルしてペナルティーを取られてしまうと相手に勢いをあたえてしまったところがあったのでそこが今思いつく反省点です。
――ギオンでの試合は風で試合の組み立て方をプラスできるかどうかが大きく左右するのでは
確かに前半自分たちが風上のときは大きなリードを獲れましたが、相手に2トライを許してしまいました。それは自分たちの規律をもっとうまく守れたら(トライを)消せたと思う。後半、風下になると本当に我慢が必要で、相手が風上のアドバンテージを使えないようにディフェンスしていくことが大事だと思う。
三菱重工相模原ダイナボアーズ FB福山竜斗
今回21番でリザーブスタートですけど、ユーティリティーでどこのポジションで入ってもいいように準備していました。ピッチに入ったときは点差のことも頭に入れて、風もありましたけどまずは敵陣に入ることだけを考えていました。
今自分は9、10、12、15と幅広くやっているので、これからもチャンスは必ず来ると思うので全部が器用貧乏にならずに全てスペシャルにできるようにこれからも頑張っていきたい。
今シーズンが始まった頃から、自分たちのチームには力があることがわかっていました。ただ、自分たちの中で自信を持ちきれていない。本当にメンタルの部分で先週は大敗してしまったので、今週はもう一度力を信じて、相手関係なく、自分たちの仕事をやろうということでこういう結果になりましたけど、勝ち切れた試合だったかなと思います。
メンバーでも話をしたんですけど、いい試合で満足するのはやめようと。やっぱり80分通して勝ち切ってから今日はいい出来だったなというと思うんで。ただ、今日の試合は本当に自信を持てる試合だったと思うので、これからもっと面白い、強いダイナボアーズに期待してほしいと思います。