リーグワン2連覇中の王者ブレイブルーパスが21日、静岡・ヤマハスタジアムで昨季5位の静岡ブルーレヴズと対戦、終盤のブルーレヴズの猛攻を耐えきり26-22で勝利。開幕戦で埼玉ワイルドナイツに0-46で大敗したショックを振り払い今季初勝利をあげた。
2025/12/22
文●大友信彦
ブレイブルーパスは前節から先発5人を入れ替え、前節に続きリーチマイケルが欠場したほか、FLフリゼル、CTB眞野も欠場、さらにHOも直前の変更で酒木凜平が急遽先発に繰り上がる編成。一方のブルーレヴズは前節のデビュー戦で退場したCTBラドラドラは欠場した一方でFLクワッガ・スミス主将、CTBピウタウが復帰して先発。

雨の中、両チームのフィフティーンはエスコートキッズとともに入場

松永拓朗を先頭に入場
雨の中で始まった試合はブレイブルーパスの猛攻で幕を開けた。レヴズがキックオフから攻め込んだ自陣ゴール前のラインアウトで相手ボールをストーバーグがカット。そこから静岡陣に攻め込むと6分、右ラインアウトからCTBトンプソンを挟んでボールを持ったSOモウンガが外へ突破。パスダミーを入れながらの猛加速で静岡CTBピウタウのタックルを外すとそのまま左中間まで走り切ってトライ。前戦では屈辱の零封負けを喫した世界の司令塔がいきなり気迫のこもったランで先制する。

6分、モウンガがピウタウをハンドオフして前進

ツイタマのタックルを振り切り左中間にダイビングトライ
モウンガのコンバージョンはポストに当たって惜しくも外れるが、ブレイブルーパスは次のキックオフからもすぐ静岡陣に攻め込む。中盤からもモールを押し、レヴズの看板スクラムでも再三PKを奪い、トライラインに肉薄。静岡も懸命のディフェンスで耐えるが、15分にPKからゴール前左ラインアウトモールを押し込んでFL佐々木剛がトライ。モウンガがコンバージョンを決めてルーパスが12-0とリードを広げる。

15分、相手ゴール前のラックからルーパスFL佐々木がトライ
ルーパスは16分にもモウンガが狙いすました50:22キックで相手陣深くに攻め込み、22分には相手ゴール前のスクラムでFKを得ると速攻。CTBトンプソンが押さえたかに見えたが、TMOの結果、グラウンディングは確認できずノートライ。

急遽先発に繰り上がり奮闘したBL東京のHO酒木
こからレヴズはFWが奮起。ルーパスボールのスクラムをレヴズFWが押し込んでPKを奪ったところから相手ゴール前に攻め込むと、28分に右ゴール前ラインアウトからモールを押し込み、再度に持ち出したSH北村瞬太郎がトライ。昨季、プレーオフを含めれば全チーム最多タイのシーズン15トライをあげ新人賞を獲得したSHが、昨季からのプレーオフを含めた連続試合トライを「7」に伸ばす一撃で反撃の狼煙をあげる。

23分、ルーパスCTBトンプソンがゴール前に持ち込むがTMOの末ノートライ

BL東京のLOストーバーグを静岡FLクワッガ・スミス主将が止める

ラインアウトではBL東京が再三静岡ボールを奪った

28分、静岡SH北村がトライを返す
それでもブレイブルーパスの勢いは止まらず、30分にCTBトンプソンが再びインゴールへ。ここはTMOの結果直前にオフサイドがあったことが確認されノートライとなるが、ブレイブルーパスはそこからも相手陣にとどまり続け、32分、相手陣10m線付近のスクラムでFKを得るとSH杉山がクイックタップで仕掛け、FLオフィナ、HO酒木のゲインからCTBトンプソンが3度目の正直でようやくホンモノのトライ。ルーパスが19-5とリードを広げた。

ハーフタイム直前のラストプレーで静岡WTBテファレがトライ
それでもレヴズはハーフタイム直前、SO家村健太の巧みなキックで相手ゴール前に攻め込み、キャリーバックで5mスクラム、さらにラインアウトを得ると、モールを警戒する相手の裏をかいてピールオフから右へワイドに展開。逆サイドから参加のツイタマ、CTBマフーザをダミーに入れながら北村-CTBピウタウ-SO家村-FB山口と鮮やかなパスをつなぎ、WTBテファレが右隅にトライ。家村が難しいコンバージョンを決め、レヴズが12-19と追い上げて折り返した。

雨の中、11295人の観衆が集結、スタンドは蒼く染まった
そしてサイドの代わった後半4分、ルーパスはモウンガが左中間約40mのDGを狙うがクロスバーに当たって跳ね返り惜しくも失敗。対するレヴズは左PRに山下憲太、さらに右PRにルーキーながらスクラムの強さを誇る稲場巧を投入し、スクラムの流れを変えることに成功。ここから試合はレヴズが主導権を握った。

途中出場でスクラムをパワーアップさせた静岡PR稲場

ワークレートの高さを見せつけた静岡LOサングスター
50分、ラインアウトモールを押し込んでルーパスゴール前へ。ルーパスは反則の繰り返しでSH杉山にイエローカードが出されると、直後のスクラムからダイレクトでボールを受けたCTBピウタウが小刻みなステップで相手CTBトンプソンとSOモウンガの2人をかわしてトライ。家村がコンバージョンを蹴り込み19-19の同点に追いつく。

51分、静岡CTBピウタウがトライ

SO家村のコンバージョンで19-19の同点に
ルーパスは57分、モウンガが正面約45mのロングPGを狙うが失敗。対するレヴズは63分、正面20m PGを家村が成功。この試合で初めてのリードを奪う。

静岡FL大戸の突進をトンガタマがサポート

62分、静岡が家村のPGで22-19と勝ち越す
しかしルーパスも抜け目なかった。次のキックオフで静岡が落球したところから相手陣でボールを動かし続け、さらに相手反則で13フェイズまで攻撃を続け、ノーホイッスルでCTBタマニバルがトライを決め再逆転すると、モウンガがコンバージョンを成功。26-22と4点差をつける。

64分、BL東京はタマニバルのトライで再逆転
再びビハインドを負ったレヴズは、雨の中をかけつけた11295人の大多数を占めるレヴニスタの大声援を背に逆転目指してルーパス陣に攻め込み猛攻。69分には相手ゴール前ラインアウトから6フェイズ、31分には15フェイズにわたって攻め続けるがルーパスも懸命のディフェンスでしのぐ。

61分からピッチに入り』ディフェンスで奮闘したBL東京のSH高橋

雨の中で激戦をさばいた古瀬健樹レフリー

静岡LOダグラスのキャリー
最後は相手ゴール前のスクラムからタイムアップのホーンが鳴ったあとも攻め続け、19フェイズにわたって攻撃を継続。しかしブレイブルーパスもペナルティーをせずに耐え抜き、最後はサングスターの負傷退場で入っていたレヴズLOライトが相手タックルを飛び越えた際にわずかに落球。ブレイブルーパスが4点差で逃げ切り、今季2戦目で初勝利をあげた。

モールを押す静岡FW

空中戦に強みを見せた静岡FB山口

ハイボールを激しく競り合う静岡ツイタマとBL東京の石岡

静岡の猛攻も一歩及ばず、喜ぶBL東京フィフティーン
東芝ブレイブルーパス東京 トッド・ブラックアダーHC

BL東京の松永主将、トッドHC、山内通訳
勝ったブレイブルーパスのトッド・ブラックアダーHCは「この勝利を誇りに思う。先週はあのような負け方をしたが、自信を失わずにこの試合に向けて準備をした。後半は相手のペースになってしまったが、自分たちのスタイルを貫いてトライを取って勝てた。若い3人(HO日吉、No8木戸、WTB石岡)がリーグワンデビューを飾ったことも嬉しい」と自ら勝利を祝福。
東芝ブレイブルーパス東京 松永拓朗ゲームキャプテン
ゲーム主将を務めたFB松永は「この試合に向けては何よりもチームの一体感を意識して準備しました。ハドルを組んだときに話を聞いていない選手もいたので、そういうのをなくそうと、ハドルを組んだら『しゃべる人の目を見て聞こう、言いたいことは自分でしゃべろう』と言葉に出して言って、一体感を持つことを意識しました」と強調。試合開始からの猛チャージでチームを勢いに乗せたSOモウンガは「先週のパフォーマンスを取り返してチームに貢献したいという思いだった。ボールを持ったら横に動かすことよりも前に出ること、キックをうまく使って陣地を進めてモメンタムを作ることを意識した」とゲームへ臨んだ決意を明かした。
静岡ブルーレヴズ クワッガ・スミス主将

静岡のクワッガ主将
あと一歩及ばず敗れたレヴズのクワッガ・スミス主将は「遂行力が足りなかった」。SO家村は「自分たちのミスや要らない反則が多すぎた。試合の最初の時間帯に、相手の勢いに対して接点で一歩引いてしまって、負の連鎖になってしまった」と悔しさをにじませた。
静岡ブルーレヴズ 藤井雄一郎監督
藤井雄一郎監督は「雨の中、静岡のいろんなところからたくさんのお客さんが来て応援してくれて、こんな雨の中でこんなに集まってもらえるのはウチのチームくらいだと思うし、だからこそ勝ちたかった」と無念な表情をみせながらも「これを今後の糧にしてまた次に進みたい」と前を向いた。なお試合の終盤に担架で退場したLOサングスターは「脳震盪で、大事をとって担架で運びましたが、もう歩いています。大丈夫です」。同様に前節退場したラドラドラについても「もう走っています。(回復力は)普通じゃないと思います」と、次節以降の復活を示唆した。
ブレイブルーパスは今季初勝利で勝点4をあげ、前節の12位から9位に浮上。ブルーレヴズは敗れたものの7点差以内負けのBPを得て勝ち点9とし、前節の3位から順位をひとつ下げたものの4位。次節はブレイブルーパスは28日に秩父宮ラグビー場で横浜イーグルスと、ブルーレヴズは今節に続きヤマハスタジアムで浦安D-Rocksと対戦する。
SCOREBOARD
静岡ブルーレヴズ
東芝ブレイブルーパス東京
大友信彦(おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |

大友信彦