3月15日(土)、静岡・ヤマハスタジアムで行われたリーグワン第11節、静岡ブルーレヴズvs埼玉ワイルドナイツの一戦は、ブルーレヴズが22-17で勝利。ここまで9勝1分無敗で首位を走っていたワイルドナイツに初黒星をつけた。

試合前のレヴニスタ広場では新加入選手のトークショーや、クラフトビール工房のキッチンカーが多数出店したレヴズ横町など多くの企画が

この試合、ワイルドナイツはHO坂手淳史主将、CTBディラン・ライリー、PR稲垣啓太、FLラクラン・ボーシェーという主力がごっそり欠場した一方で、WTBマリカ・コロインベテが復帰。HOにはアーリーエントリーの佐藤健次が第9節の相模原戦以来2戦ぶりで先発した。

静岡ブルーレヴズ

埼玉ワイルドナイツ
一方のブルーレヴズはBYE前の三重ヒート戦から先発WTBにマロ・ツイタマが戻った以外14人は同じ布陣。スタジアムは試合開始に合わせたように雨が降り出し、ボールの滑りやすいコンディション下で戦いは始まった。

序盤、ワイルドナイツの猛攻をブルーレヴズがしのぐ
試合はキックオフ直後からワイルドナイツがレヴズ陣深くに攻め込んで攻撃を継続するが、レヴズは激しく正確なディフェンスで応戦。5~7分には相手ゴール前で14フェイズにわたって攻め立てたがレヴズの壁は崩れずモール・アンプレアブルでターンオーバー。試合開始からブルーレヴズのディフェンスの集中力はみごとだった。

ワイルドナイツはSO山沢京平のPGで先行する
序盤の猛攻でトライを取れなかったワイルドナイツは15分にSO山沢京平のPGで先制すると、直後の17分にもハーフウェー付近から山沢がロングPGを決め6点を先行。静岡は21分にフェイズを重ねて相手陣に攻め込むと、密集サイドにスペースができたのを見逃さず、SH北村瞬太郎が4試合連続の9号トライ。SOグリーンのコンバージョンも決まり7-6と逆転する。

ブルーレヴズはCTBタヒトゥア、LO大戸らが前に出て、No8イラウアが相手ゴール前へ攻め込む

21分、密集サイドを突いたSH北村がトライ
しかしワイルドナイツは24分、レヴズの看板スクラムを押し込んでPKを奪い、山沢が3本目のPGを決め9-7と再逆転。

前半、スクラムでPKを奪い喜ぶワイルドナイツHO佐藤
レヴズはWTBテファレの豪快なアタックで相手陣に攻め込んでチャンスを作るが、35分、41分とグリーンがPGを連続で失敗。ワイルドナイツが9-7とリードして折り返した。

WTBテファレ

グリーンはハーフタイム直前に2度PGを狙うが失敗

首をひねるグリーン

ボールパーソンはアザレアセブンの選手たちが務めた

ハーフタイムに場内を一周するマスコットのレヴズくん
後半も立ち上がり直後はワイルドナイツが敵陣深くに侵入して試合を進める。だが4分、ワイルドナイツのWTBコロインベテにブルーレヴズLO大戸裕矢がタックルで落球させると、FLヴェティ・トゥポウがハーフウェー手前で相手タックルを外して抜け出すと、約60mを独走してトライ。12-9と再々逆転する。だがワイルドナイツは8分、相手ゴール前のスクラムでPKを奪い、山沢が冷静にPGを沈め12-12の同点振り出しに。

ワイルドナイツのHOで先発した佐藤健次は高いワークレートをみせた

前進するWTB竹山とサポートするLOデヤハー

ブルーレヴズFLヴェティ・トゥポウが自陣からロングアタックでトライ
ここで静岡ベンチがカードを切った。HO日野剛志に代えてルーキー作田駿介を投入。首回りはチームNO1の56cm、この1年で8cmも太くなったという、昨季はPRでも出場したスクラムに絶対の自信を持つHOはスクラム戦の様相を変えた。

佐藤健次は後半アタマまでスクラムをよくリードした
ブルーレヴズは13分、相手陣22m線付近のスクラムからのアタックでPKを奪い、グリーンのPGで勝ち越し。14分には自陣22m線に攻め込まれたスクラムを押してPKを獲得。ワイルドナイツは15分にFL福井翔大のスティールでPKを奪い、再び敵陣深くに攻め込み、相手ゴール前スクラムのチャンスを得るが、雨で滑るボールにうまくボールをコントロールできず、20分、レヴズ陣ゴール前の密集でボールをロスト。

ワイルドナイツNo8コーネルセンの突破

ワイルドナイツFL福井翔太のスティール

ゴールに迫るハアンガナをダグラスが止める
ここでボールを拾ったSOグリーンは左ショートサイドに持ち出すと、ハーフウェー手前から相手陣へキック。戻った相手CTBデアレンデがゴール前で押さえ損ねたところに飛び込んで押さえた。グリーンは左隅からの難しいコンバージョンも決め、22-12の10点差に広げる(このあとターンオーバーの場面についてTMOが掛かったが、検証の結果、そのままトライが認められた)。

ゴール前のターンオーバーからグリーンがカウンターアタック

相手デアレンデが抑え損ねたところにグリーンが飛び込みトライ
ワイルドナイツは27分にCTB長田智希、30分にWTB竹山晃暉が相次いでゴールに肉薄。33分に山沢京平がようやく初トライを返すが、コンバージョンは外れ、残り6分で点差は5点。

ピウタウのキックに佐藤が猛チャージ

相手ゴールに迫るWTB竹山

タッチ際を抜けるCTB長田

ワイルドナイツは後半33分、山沢がようやく初トライ
そして37分、ワイルドナイツは途中出場のFWミラーのターンオーバーからミッチェルがロングキックで相手ゴール前へ。ここは静岡クワッガが鬼戻りでに攻め込み、オフサイドのPKを獲得。しかし山沢がクイックで攻めたところでFWが落球。そして残り1分を切ったスクラムでワイルドナイツが痛恨のコラプシング。

37分、ワイルドナイツは自陣のターンオーバーからミッチェルがキックで敵陣へ

ブルーレヴズは必死に戻ったグリーンから

主将のクワッガ・スミスにわたりタッチへ

途中出場の大西がトライラインに迫るが

ブルーレヴズが守り切り勝利
22-17でブルーレヴズが勝利した。
ワイルドナイツは昨季はリーグ戦で16戦全勝を飾っており、リーグ戦で敗れたのは一昨季の第15節、地元・熊谷で同じブルーレヴズに敗れて以来で、1分けをはさむ26連勝(27戦無敗)の記録が止まった。また、ワイルドナイツはリーグワンが始まった2022年以降、リーグ戦で実際に戦って敗れたのはこのブルーレヴズ相手の2敗だけ(それもともに雨中の戦いだった)。

笑顔で場内を一周するブルーレヴズのフィフティーン

埼玉パナソニックワイルドナイツ ロビー・ディーンズ監督

ロビー・ディーンズ監督_山沢京平ゲームキャプテン
「ここヤマハスタジアムに戻ってプレーできてうれしいです。ここは日本でもグレートなスタジアム。ここでの試合にはイベントがたくさんあって素晴らしい。そして、簡潔に言うと、ブルーレヴズはレスリングがとても好き。我々はプレッシャーを受けて、自分たちに疑いを持ってしまった。今日はブルーレヴズの出来が素晴らしく、我々はミステイクが多すぎたことでこの結果になった。この経験を次に活かしていきたい。ここにいる山沢京平は、ゲームキャプテンをして、しゃべりたくないだろうけれど、そうはいかないので、しゃべらせます」
埼玉パナソニックワイルドナイツ 山沢京平ゲームキャプテン

山沢京平ゲームキャプテン
「シンプルに言って、ブルーレヴズの圧力が強かった。自分たちのラグビーを80分やりたかったけれど、自分たちのミスで流れを相手に渡してしまった。難しいゲームになってしまったけれど、次に向けて頑張りたいと思います」
静岡ブルーレヴズ 藤井雄一郎監督

藤井雄一郎監督
「ブレイクダウンでしっかりコンテストできたこと、アタックでのペナルティーが少なくて、そこでしっかり戦えたことで勝ち切れた。選手が本当に良く頑張った。

途中出場でセットプレーを引っ張ったブルーレヴズHO作田
(POMの作田について)
「もともと2番3番は早めの交替を考えていた.作田は派手じゃないけれど、コツコツやってきて、スクラムに関しては本当に自信を持っている。彼は首回りが56cmあって、身長が3mなきゃおかしいくらい(笑)。それは本当に努力の賜物で、僕らの信頼を勝ち取って、後半やってくれるだろうと思っていた。その通りにスクラムをコントロールして、ラインアウトのスローイングも良かったし、ウチのボムスコッドです」
(ディフェンスについて)
「ディフェンス自体は良くても、これまでは頭がぶつかったりとかいらないペナルティーが多かった。今日は『一人が下に入って一人が上に行く』ことが徹底できたことと、反則していたら今日の相手には勝てないということがみんな分かっていた。それと、タックルしたら一歩も下がらない、いつもより50㎝前に出る、それを選手たち全員がやってくれた。
それをホームでできたのは、やはりファンのみなさんのおかげだと思う。移動もない、慣れているということもありますが、やはりファンのみなさんの後押しがあってこそ。何点差かで勝てたのはそのおかげだと思います」
(トライを決めたトゥポウについて)
「体が大きくて足も速い。あの大きな体で走って行ったら、ワイルドナイツの選手でもタックルするのは嫌だろうなと思います」
静岡ブルーレヴズ クワッガ・スミス主将

クワッガ・スミスキャプテン
「とてもハッピーです。ワイルドナイツはとても良いチームで、試合の最初からすごく圧力をかけてきたけれど、こちらも最初から良いディフェンスができた。相手にポイントを取られても、こちらはトライを返すことができた。この相手に勝てたことはチームにとって自信になる。ただ、リーグはまだまだ長く続くので、ここからも1試合1試合に向けてしっかり準備していきたい」
(POMの作田らボムスコッドについて)
「彼の活躍は嬉しい、まだ若いけれど、試合ごとにステップアップして、自分自身でチャンスを掴んでいる。ゲームというのはスタートの選手もリザーブの選手も。23人全員が頑張らなければならない。ベンチメンバーが強ければ、途中から入ってくる選手がゲームチェンジャーとしてエナジーを与えてくれて、ゲームにインパクトを与えてくれる」
![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |