HSBC SVNS2025-26の初戦・ドバイ大会で史上初の3位・銅メダル獲得を果たしたサクラセブンズこと女子7人制日本代表が、6-7日に南アフリカで行われたHSBC SVNS2025-26第2戦ケープタウン大会に登場。2大会連続の4強入りこそ逃したが、DAY2の5位以下戦では英国とカナダに連勝し、5位で大会を終えた。2大会を終えてシリーズポイントランキングは3位のまま。
ケープタウン大会日本代表登録メンバー(背番号/氏名/年齢/所属/大会前のセブンズキャップ数)

2 堤 ほの花 28 日体大女子 (37c)
3 梶木 真凜 26 自衛隊体育学校PTS (32c)
5 大谷 芽生 25 ながとブルーエンジェルス (33c)
6 永田 花菜 25 ナナイロプリズム福岡 (34c)
7 吉野 舞祐 24 ナナイロプリズム福岡(23c)
8 秋田 若菜 22 自衛隊体育学校PTS(7c)
9 松田向日葵 21 追手門学院VENUS (7c)
11 平野 優芽 25 ながとブルーエンジェルス (49c)
13 大内田夏月 23 パールズ (2c)
14 須田 倫代 22 パールズ (22c)※主将
15 水谷 咲良 21 東京山九フェニックス (23c)
16 矢崎 桜子 21 横河武蔵野アルテミ・スターズ (9c)
18 長谷部彩音 21 日本経済大AMATERUS (1c)
ドバイ大会のあと、山田晴楽、三枝千晃、内海春菜子がコンディション都合等でチームを離れ、秋田若菜と長谷部彩音が追加招集。ドバイではバックアップだった吉野舞祐がスコッドに繰り上がり、バックアップ要員なしの13人で大会に臨んだ。
プール第1戦 vs カナダ 26-19
サクラセブンズが登場したのは午前10時(日本時間17時)の大会オープニングマッチ。この試合ではキックオフに向けて両チームの選手が入場する際、この試合で節目の50キャップを迎える日本の平野優芽がスタジアムMCの紹介を受けながら単独でピッチに入場。大きな喝采を浴びた。日本女子セブンズの50キャップ到達は中村知春に次いで2人目。

この試合で50キャップの平野優芽が最初に入場
中村は2011年10月のアジア女子セブンズで代表デビューし、2021年11月のアジアセブンズ兼ワールドラグビーセブンズまで10年かけて達成。平野は高校3年だった2017年4月の北九州セブンズでデビューし、そこから8年での50キャップ達成。最年少にして最短の50キャップ達成だ。
そして始まったDAY1プール初戦の相手は昨年総合3位、ドバイ大会6位のカナダ。ドバイではプール最終戦で戦い、終了間際のラストプレーで21-19と逆転勝ちした相手だが、この日のサクラセブンズは試合開始から圧倒。試合開始のキックオフを相手がタップしたところへ走りこんだ水谷咲良がボールを確保すると、右サイドを吉野舞祐が大きくゲイン。そこから梶木真凜、大谷芽生が繋ぎ、水谷咲良がフィニッシュ。キックオフから30秒、電光石火のトライで日本が先制した。 1トライを返された6分には永田花菜が自陣から相手DFの隙間を擦り抜けて裏に出るとそのまま約80mを独走するセンセーショナルなトライ。日本は直後にもカナダ陣深くに攻め込むが、パスが繋がらずにカウンターアタックを浴びてトライを献上。14-12という僅差で折り返した。

大内田夏月
日本はこの試合、ドバイではあまり使わなかったオフロードパスに果敢にチャレンジ。それがカナダ戦の後半は爆発した。3分、相手ゴール前に攻め込んだ矢崎から大内田夏月へのオフロードパスはやや乱れたが、大内田は地面すれすれでキャッチし、密集を作ると素早くリサイクルして右へ、大谷芽生とクロスして内に入った水谷咲良が前半に続き2トライ目をあげる。さらに4分には松田向日葵が相手タックルを押しのけながらグイグイと前進し、後ろから走り込んだ矢崎桜子へ好パスを送ってトライをアシスト。終了直前にカナダはもう1トライを挙げたが大勢は変わらず。サクラセブンズが26-19で勝利した。

矢崎桜子

水谷咲良

松田向日葵
プール第2戦 vs フランス 19-29
続く第2戦はドバイ大会6位のフランス。日本は前半、キックオフをフランスが落球して得たスクラムからラックを2つ連取すると、SOでボールを受けた平野優芽が相手DFの隙間を突破して60mを走り切る先制トライ。サクラセブンズは初戦のカナダ戦に続く秒殺トライで好スタートを切った。

永田花菜
だがフランスはここから反撃に転じた。3分、日本のキックオフを捕ってそのまま大外へ展開してからのオフロードパスでトライを返し、5分には日本のアタックを止めてPKからの速攻で、6分にはキックオフリターンのオフロードパス2連発が決まる。前半8分のラストプレーでは日本の自陣からのアタックにプレスをかけパスミスを誘ってトライ。

堤ほの花
4連続トライで24-7と大きくリードして折り返したフランスは、後半早々にも日本のアタックにプレッシャーをかけミスを誘うとカウンターでトライをあげ29-7と勝負を決めた。それでも日本はそこから反撃。3分に永田花菜の仕掛けから堤ほの花が左を50m独走してトライを返すと、6分には自陣からのアタックで永田花菜が70mを独走。19-29まで追い上げて試合を終えた。
プール第3戦 vs オーストラリア 5-36
そしてプール第3戦はドバイ準優勝のオーストラリアが相手。ドバイでは7-31。敗れたとはいえ後半途中までは競り合いに持ち込めた。この日の試合も、試合開始のキックオフをオーストラリアがダイレクトタッチ。中央FKを得た日本は果敢にアタックを仕掛けたが、大型選手をそろえるオーストラリアは守れば上半身のパワーを活かしたチョークタックル、攻めれば強烈なハンドオフと、フィジカルのアドバンテージを最大に活かし、3分、5分、7分と3連続トライ。17-0とリードして折り返したオーストラリアは、後半も1分に⑫リーバイが強烈なハンドオフからこの試合2本目、ワールドシリーズ通算216号という豪快トライを決めるなど3連続トライ。日本は残り0分、相手にイエローカードが出たところで吉野舞祐がトライを返して一矢報いたが、5-36で完敗した。

大谷芽生

松田向日葵

吉野舞祐
日本は1勝2敗でプール3位となり、2大会連続の4強入りはならず。DAY2は5位以下戦へ回ることとなった。4強入りを逃したことが悔しく感じられるようになったのも冷静に考えればすごいこと。だがサクラ戦士たちのDAY2の戦いぶりは、まさに日本は4強レベルをスタンダードにしていると感じさせるものだった。
5位決定戦準決勝 vs 英国 25-7

5位準決勝は英国。前半は吉野舞祐のジャッカルで得たPKからの速攻で須田倫代が、大内田夏月のタックル&ボール強奪から大谷芽生が、走り切って連続トライで10-7とリード。そのあとのキックオフから、フランス戦で最初に取られたトライと同様、キックオフリターンで大外を攻められ80m独走トライを許し、前半は10-7という僅差の折り返しになったが、後半に入ると日本のアタックが爆発。まずは梶木真凜&秋田若菜のPTSコンビがビッグゲインを重ね、ハーフウェー付近から長谷部のオフロードパスで大内田夏月が抜け出し50mを快走するトライ。
直後には梶木が相手パスをカットして永田花菜がトライゾーンに飛び込むが、これはTMOでノックオン(ノックフォワード)が確認されトライキャンセル。しかし日本は動揺せず、6分には相手落球を長谷部がかっさらってのカウンターから、7分にはスクラムから永田、須田とつないで、ともに梶木真凜がフィニッシュ。まるで直前の自身の落球を取り返そうとしたかのようにワールドシリーズ通算23号、24号トライを立て続けに決め、日本は25-7。ドバイでの36-5に続いて英国に完勝し、最後の5位決定戦に進んだ。

大谷芽生のトライ

秋田若菜

永田花菜と梶木真凜のハイタッチ
5位決定戦決勝 vs カナダ 15-10
最後の5位決定戦の相手は、フィジーに33-14で大勝したカナダ。ドバイではラストミニッツの逆転で、ここケープタウンのプール戦ではオフロードパスを立て続けに決めて連勝していた相手との今季2大会で早くも3戦目だ。
試合は3分にカナダが先制トライ。日本は4分、相手キックオフがノット10となって得たFKから右へアタックし、平野優芽-須田倫代-大谷芽生と繋いで右タッチライン沿いをすり抜けるムーブが完璧に決まり、ポスト右へ回り込んでトライ。永田花菜のコンバージョンも決まり7-5と逆転する。だがカナダは、昨季パールズでの太陽生命シリーズをプレーしたモニーク・コフィらが豊富な運動量で果敢にアタックを重ね、ロスタイムの8分に④ニコラスがトライ。だが後方から追いすがった大内田夏月のタックルでトライは左隅となり、コンバージョンは失敗。7-10の3点差で折り返す。

大谷芽生
後半も互角の戦いが続き、スコアレスの時間が続いたが、日本は運動量とワークレートで上回り、じわじわとカナダ陣で過ごす時間が増えてゆく。5分、この大会でワールドシリーズデビューとなった長谷部彩音の美しいランで相手ゴール前まで陣地を進めると、残り1分は相手のアタックにプレス。そして相手の落球で得たスクラムから須田、永田、吉野がラックを作り、そこから右へ。直前のフェイズでは左隅の密集からパスアウトしていた平野優芽が右のエッジまで回り込んでオーバーラップを作ってボールを受けると、そのまま相手DFの追走を振り切って右隅へ歓喜の逆転サヨナラトライ。12-10でカナダを破り、5位を決めた。

鮮やかなノールックパスで相手を翻弄した永田花菜
決勝はドバイに続いてニュージーランドとオーストラリアが対戦。オーストラリアが26-12でニュージーランドを破りドバイの雪辱を果たした。3位決定戦はフランスが15-12でアメリカを破った。
2大会を終えてのシリーズポイントランキングは以下の通り。
1 オーストラリア 38 (+213)
2 ニュージーランド 38 (+123)
3 日本 28 (-21)
4 アメリカ 26 (+11)
5 フランス 24 (-12)
6 フィジー 22 (+8)
7 カナダ 20 (+13)
8 英国 12 (-334)
日本は総得失点差ではマイナス21で8か国中7位ながら接戦でしぶとく勝ちを拾い続け、3位と5位。ポイント28で2大会を終えて3位につけている。2大会連続で3勝2敗と勝ち越しているのも立派だ。ひとつ負けても大きく崩れない修正力が現在のサクラセブンズの頼もしいところだ。
ワールドシリーズの次戦は1月31日~2月1日のシンガポール大会。そこに向け、サクラセブンズは12月後半に国内組や負傷からの復帰組を加えて再び合宿。第3期スコッドを編成して、さらなる強化を図る予定だ。
日本協会から発表された選手と兼松HCのコメントは以下の通り。
兼松 由香ヘッドコーチ
「今大会も各地から応援いただきありがとうございました。初めて世界トップ8の大会を2週連続参戦しましたが、想像を遥かに超えるハードな2大会目となりました。その中で、選手たちは本当に本当にベストを尽くしてくれました。フィールドに立った選手も、立てなかった選手もそれぞれが苦しかったと思いますが、14分の1の責任を果たそうとする全員の気持ちが、5位という結果に繋がったと思います。大会直前に合流して共に戦ってくれた選手、それぞれの形でサポートしてくれた選手、そして最後まで戦い抜いてくれた選手・スタッフに心から感謝しています。この2大会で学んだことをこれからのサクラセブンズの活動に活かし、世界一強くて優しいチームを目指します。今後ともサクラセブンズの応援をよろしくお願いいたします。」
須田 倫代 選手

須田倫代
「いつもサクラセブンズを応援していただきありがとうございます。2大会連続の厳しい戦いでしたが、14人全員で最後まで戦い抜いたこと、誇りに思います。目指していた結果ではなかったですが、この大会で得た様々な学び、悔しさ、そして嬉しさを今後の糧に、これからも成長し続けたいと思います。今後ともサクラセブンズの応援をよろしくお願いします。」
平野 優芽 選手

平野優芽
「ケープタウン大会も沢山の応援をありがとうございました。2週続けての大会ということもあり、身体的にも精神的にもタフな大会でした。きつい状況の中でも最後まで戦い続けた14名の選手とスタッフを誇りに思います。望んだ結果ではありませんでしたが、この大会を乗り越えてさらに強くなることが出来たと思います。残りの大会もサクラセブンズ一丸となって戦い続けます。引き続きご声援のほどよろしくお願いいたします。」
吉野 舞祐 選手

吉野舞祐
「時差もある中、今大会もたくさんの応援ありがとうございました。チームとして苦しい場面もありましたが、それぞれが14分の1の役割を果たし、最後の試合を勝ち切れたことは大きな財産となりました。2位以上という目標は達成できませんでしたが、まだまだこれから個人としてもチームとしても成長していきたいと思います。引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。」
秋田 若菜 選手

秋田若菜
「サクラセブンズへの沢山の応援、本当にありがとうございます!ドバイ大会の翌週ということで、ハードな試合日程でしたが、全員で最後までサクラセブンズのラグビーを体現できたと思います。次の大会に向けて、全員で準備をしていきます。これからもサクラセブンズへの応援よろしくお願いします!」
長谷部 彩音 選手

長谷部彩音
「サクラセブンズへの応援ありがとうございました。今回のテーマである“先手”を全員が体現できたこと、14分の1の役割を果たしたことで今大会の結果に繋がったと思います。個人としてはワールドシリーズに初出場でき嬉しく思います。今回の経験を糧により高いレベルで戦えるよう努力していきます。引き続きサクラセブンズの応援よろしくお願いいたします。」
大友信彦(おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |

大友信彦