1月2日、第60回全国大学ラグビーフットボール選手権は準決勝2試合が国立競技場で行われた。第1試合は京都産業大学(関西リーグ戦1位)と明治大学(関東対抗戦2位)が対戦した。
これまで9度挑戦し、決勝進出を阻まれている京産大は、3回戦で活躍したPRヴェア・タモエフォラウ(4年)が欠場。川口新太(3年)が先発。ここまで三木皓正キャプテンを中心に一つずつ勝ち進んできたチーム。今年こそ決勝進出、チャンピオンシップへの思いも強い。
明治は創部100周年という記念すべきシーズンに14度目の日本一を狙う明治大は、対抗戦途中から怪我で戦列を離れていたCTB廣瀬雄也キャプテンがこの試合から先発復帰。対抗戦優勝は逃したが、早明戦で大勝。選手権初戦の筑波大も45-7で快勝しチームの調子は上がっている。
前半2分、京産大にアクシデントが発生する。司令塔SO吉本大悟が負傷交代となってしまう。試合が動いたのは直後の3分、明治は敵陣22m手前のマイボールスクラムからCTB秋濱悠太を使って、ゴール前10mまで前進。その後FW、BKが連動してフェイズを重ねると、8フェイズ目、FB池戸将太郎が裏スペースに転がしたボールにWTB海老澤琥珀が反応し、インゴールでグラウディング。明治が先制のトライを決めた。
直後のキックオフ、明治が自陣10m付近でノックオン。さらに京産大がマイボールスクラムでペナルティーを獲得しラインアウトのチャンス。モールを組んだ京産大はLOソロモネ・フナキがブラインドサイドに走り込んできたWTB西浩斗へオフロードパスを通し、西がそのままトライ。すぐさま京産大もトライを返した。
13分、明治はCTB秋濱悠太、SO伊藤耕太郎がゲインし敵陣22m内側にボールを運ぶと、京産大がノットロールアウェイのペナルティ。明治はラインアウトからモールを組むも、京産大・LOフナキがプレッシャーをかけてモールアンプレヤブル。
京産大はスクラムからボールをタッチに蹴り出しエリアを戻したかと思われたが、そのボールをタッチライン外からジャンプしてボールをキャッチ。まるで走り幅跳びのようにタッチライン内に着地した海老澤琥珀がそのままプレーを継続。再び22m付近までボールを運ぶも、京産大がカウンターラックでボールを奪い返す。明治もプレッシャーをかけて相手のノックオンを誘い、明治にアドバンテージが出される。そのまま明治がアタックを継続。アンストラクチャな状況で、SO伊藤耕太郎が自らスペースをランで抜けてトライ。明治が12-5とした。
さらに18分、相手のペナルティーから敵陣22m内側に入った明治はフェイズを重ねると、京産大がたまらずディフェンスラインのオフサイドでペナルティ。明治はタッチに蹴り出し、相手ゴール前ラインアウトからドライビングモールでHO松下潤一郎がトライ。得意な形の一つで明治が追加点をあげた。
25分、追いかける京産大は相手のペナルティーから敵陣22mへ入ると、こちらもラインアウトからドライビングモールで一気にゴール前まで押し込む。そこからFW戦でフェイズを重ねると明治がペナルティ。京産大はタッチに蹴り出すのではなく、LOフナキのタップからアタックする。関西リーグ戦でも何度か見たシーンだ。シオネ・ポルテレにボールを託すも明治FW陣も真っ向勝負でゴールラインを割らせない。何度かFWでフェイズを重ね、外のスペースが空いてきたのを見て展開。最後はSO奈須貴大がトライ。
33分、京産大がPGを決め15-19とすると、35分、FL三木皓正のゲインから22m手前までボールを運ぶと、ポルテレが突進を図るも明治ディフェンスも簡単にはゲインを許さない。しかし直前のペナルティーに戻り、京産大はショットを選択。辻野隼大が難なく決めて18-19と1点差に迫った。
明治は前半終了間際、敵陣でペナルティーを獲得。廣瀬雄也キャプテンが選択したのは、タッチに蹴り出しトライを狙うというものだった。会場からはどよめきが起きた。直後のラインアウトからドライビングモールで再びHO松下潤一郎がトライ。一発でトライを決めて26-18と、明治が8点リードして前半を終えた。
後半明治のキックオフ。京産大SH土永旭がノックオン。いきなり明治がチャンスを迎える。直後のマイボールスクラムからSO伊藤耕太郎がトライ。相手からもらったチャンスをスコアにつなげた明治は勢いを増していく。
44分、京産大LOフナキのアタックに対して、明治NO8木戸大士郎がジャッカル。ディフェンスでも流れを渡さない。
直後のラインアウトからサインプレーで木戸がゲインし敵陣22mに入ると低く突き刺さる京産大のタックルを受けながらも明治がボールをキープ。廣瀬雄也が相手ディフェンダーを引き付けるランでスペースができたところをFB池戸将太郎が抜けてトライ。38-18と20点差にリードを広げ京産大にプレッシャーをかけた。
なんとか敵陣に入りたい京産大は、49分、キャプテン三木のジャッカルでようやく敵陣に入るも直後のラインアウトをスチールされてチャンスを活かせない。その後、自陣に貼り付けられた京産大に対して、明治が猛烈なプレッシャーをかける。SH萩原周は2度のキックチャージでキッカーにプレッシャーをかけ京産大自陣脱出を許さない。
60分、明治は5mスクラムからBKを展開し、CTB秋濱悠太が勝利を引き寄せるトライ。45-18とした。
追いかける京産大は68分、敵陣ゴール前のラインアウトからBKも入ったモールを押し込みFB辻野隼大がトライを決めるも、明治は75分、CTB平翔大のトライでトドメを刺した。
勝負は決した状況だったが、三木皓正キャプテンを中心に1年積み上げてきた「京産大ラグビー」を最後まで見せる、その思いはピッチのプレーヤーに残っていた。試合終了間際にゴール前モールで押し込み最後はNO8テビタ・ポルテがトライを決めるもノーサイド。
52-30で明治が快勝。明治が決勝進出を決めた。
明治大学 神鳥裕之監督
本当に京都産業大学さんの、素晴らしいフォワードの圧力というんでしょうか。彼らの持っている強みと、我々の持っている強みがぶつかり合うような本当に素晴らしい試合だったんじゃないかなというふうに思っています。 その中で明治大学のラグビー部としてのプライドをしっかりと示してくれた選手たちを本当に誇りに思いますし、今週1週間、メンバーだけに限らず、ノンメンバー全員が本当に1週間いい準備をした結果かなというふうに思っています。 いよいよ最後の一つですんで、しっかりとここで満足することなく、また次にいい準備をして向かっていきたいというふうに思います。今日はどうもありがとうございます。
――決勝にむけて
特別な準備というのは、もうこのタイミングではないと思っています。当然相手の分析はやりますが、相手の特徴を把握した上で、メッセージは出していくことになると思います。ただ、軸足は自分たちのラグビーをしっかり遂行できるか、できないかになると思っています。1週間強、ちょっと余裕がある日程なので、しっかりリカバリーした後に、自分たちが1年間やってきた明治のラグビーの集大成をお見せできるようなクウォリティーを準備していきたい。
明治大学 廣瀬雄也キャプテン
相手はFWのところを強みとしていると思うんですけど、僕たちも強みにしてきた部分でもあったので前半最後のプレー選択も象徴的だったと思いますが、あそこでトライを取り切れたことが、後半に流れを持ってこれたかなと思っています。まずは今日勝って次に繋げられたことはすごく嬉しい。
――前半最後のプレー選択について
あそこでショットを選択している時点で、もう僕たちは負けだと思っています。明治の強みはFWのところとか、BKも関係なく前に出る精神だと強く思っていました。
もうFWは目の色変わってましたし、僕が(ショットではなくラインアウトを)選択するのもそうですけど、FWの意見も聞きながら、あそこはトライを取って終わろうとみんなで話してましたが、最後は(山本)嶺二郎と話して決めました。
京都産業大学 廣瀬佳司監督
先週早稲田に良い勝ち方をすることができまして、自信を持って明治に対して送り出したんですけれども、やはりテンポの速い攻撃がなかなか止められずに、終始主導権を握られたなという感じでしたが、最後まで本当に諦めずトライを狙いにいってくれたこと本当に誇りに思います。
今シーズンのチームは本当に三木がチームを引っ張ってくれて、正直ここまで本当に頑張ってくれたなというふうに思っています。最後、明治に完敗しましたけれども、今シーズンの戦いぶりはホコリに思っていますし、来年後輩がこの悔しさをちゃんと忘れずに来年引き継いでくれるんじゃないかなというふうに思っています。
――10度目の準決勝突破への挑戦も実らなかったことについて
本当にここに来ていけるんじゃないかなと思って、今年はいけると思ってでも跳ね返されて本当にベスト4の壁は厚いなというのを常々感じています。昨年も一旦ですけれども、もうこの場に立ち続けるしかないかなと思っていまして、そしたらいつかこの壁が低く感じるときがあるんじゃないかなというふうに思います。しっかりこの試合のレビューをしないといけないと思っていますけども、本当にこのベスト4の舞台に経ち続けることが大切かなと思っています。
京都産業大学 三木皓正キャプテン
必ず決勝進出をしようとチーム一丸となってとても良い準備ができていました。試合がはじまって明治大学のアタックに自分たちが想定してたよりも早いテンポで回されて、自分たちの得意であるタックルを出来なかったことが今日の敗因なのかなと思います。
ですが、最後自陣からモール組んでペナルティーもらって、トライをしたことは、自分がこの4年間、やってきたことが間違っていなかったとそう思えるものでした。
――この1年のチームの変化
自分がこのチームを一人で背負い込む覚悟でこの春から始めて、彼らを頂点には連れていけなかったですけど、京産大の文化を継承するものとして、チーム一丸となって、最後モールにこだわる続けたことが、やっぱり僕のこの4年間の全てだと思います。