15日、エディージャパンことラグビー男子日本代表はFWとBKに分かれて強化合宿を行っているが、東京合宿をするFWの練習が公開された。練習後、伊藤鐘史コーチが取材に応じた。
――弟のLO伊藤鐘平選手(東芝ブレイブルーパス東京)が日本代表に初参加していますね。
似ていますね(苦笑)。(弟の鐘平は)東芝でのファイナルが終わって、ニュージーランドのチームに参戦して7試合出て、プレータイムもらって充実していたみたいです。ニュージーランドのクラブラグビーの楽しさをしったみたいな。

伊藤鐘史コーチ
――弟と一緒にこう代表合宿に参加していますが……
僕は本当に選手全員が弟だと思ってやっていますし、本当にフラットにやろうと思っています。でも本当に(鐘平とは)血が繋がっていますけどね、彼にとってはチャンスだと思っています。エディーさんに、日本人LOで、調子いいのは誰だとかという質問が来るので、僕の意見を伝えたことがあります。ウェールズとのキャンペーンが終わって、PNCの話し合いになった時に(鐘平の)名前が挙がってきた。最初からリストに入っていました。
――LO伊藤鐘平選手の強みとは?
彼と今日1対1で話したのですが、ディフェンスのラインスピードは良い強みとして持っているので、そのラインスピードを活かした状態で、タックルのクオリティを上げると、強みにはなると思うので、そこを出してほしいですね。

伊藤鐘平
――客観的に見て、鐘平選手は2連覇中のブレイブルーパスで伸びたと感じていますか?
(東芝は)すごいいいメンバーがいる中で、切磋琢磨しているので、成長していると思います。試合に出られない時期があったことがタフさんに繋がっているんじゃないかなと思います。良い判断をしたと思います
――今回、コーチと選手として、日本代表で一緒にやっていることについては、ご家族から連絡来ましたか?
おかんからは、これからが勝負だし(鐘平選手が)アメリカに来られるかな?みたいなコメントが来ました(※PNCの遠征は30名で参加)。今、ちょうど妹がアメリカに住んでいて、おかんも今、アメリカにいる。アメリカツアーの初戦、おかんが行きたいなと言っていました(笑)。

――5月まで三重ホンダヒートで指導していました。伊藤コーチはインターナショナルレベルで指導がしたかったのですか?
やはり、いつかは(日本代表に)携わりたいなと思っていました。今回はオファーいただきましたね。そういう意味ではすごく光栄で、本当にありがたかったです。
――「ブライトンの奇跡」から10年になりますけど、コーチでもう一度、ワールドカップに?
早いですね。あっという間ですね。僕も45歳になります。やっぱりワールドカップで勝てるチームになるようにサポートしていきたい。
――将来的にはヘッドコーチもやりたい?
それは、まだ先の話ですけど、今はとにかく、この日本代表をいかに勝たせるかに集中しています。コーチもタフであらないといけないと思っています。選手に求めるので、僕もタフでやらないといけないと思っています。
――伊藤コーチは春からラインアウトを指導してきました
ジャパンに参加して、しっかりやらなきゃいけないのはアタックでのボールウイニング、(つまり)空中戦でのボール獲得率、あとはモールディフェンスです。これまでもそうでしたが、強豪国はジャパンに対してフィジカルで勝負してくる、モールを組んでくる回数が増えるので、それをいかにして止めるか。空中で防ぐこともできるし、地上でも対抗できることもある。ウェールズ代表との2戦目の時には相手が5+1でプレッシャーかけてきて、というところでまだまだ改善は必要ですが、ゴールライン上ではモールでトライラインを割らせなかったので、ある一定の成果が出たかなと思います。

木村星南
――大学、社会人と代表レベルでのコーチングの違いは?
(代表レベルは)大きな違いは短期間で成果を出すことっていうところですね。だからコーチにとってはすごいプランニングが重要だし、相手を分析した上で、ジャパンの強みが、どこにはまるのかというところを読まないと、その試合で選手の力が発揮できなくなっちゃう。そういう意味では本当に短距離勝負ですね。
――PNCに向けてどこをバージョンアップさせたいか?
まずはこの(3日間の)キャンプなんですけど、エディー(・ジョーンズHC)から言われているのは、FWのコネクション、日本語でいうと絆を深めることですね。2つ目が先ほども話したモールのアタック、ディフェンス。3つ目はキャパシティーを上げるということ、これはS&Cの領域になります。
この3つを3日間の合宿でやっていきましょうということで、本当にベースとしては、やはりFWは絆が深くないと強くならないので、いろんな練習していく。(オンピッチ、アウトピッチの)両方ですね。ただオンフィールドでも、やれることはたくさんあると思う。疲れた時に励まし合うとか、リーダーがハドルに集まって話すとか。今日、最初のミーティングでそういう話をして、選手からいろいろ意見も出ました。

下川甲嗣
――PNCではFWの大きな相手との対戦が続きます。
どうしても(相手は)モールでアタックしてくる。今日はアタックメインでしたが、明日はディフェンスをやります。
――選手としてエディーさんと接するのと、コーチとしてエディーさんと接するのでは違いは?
また違いますね。本当いろんな角度で質問が飛んでくるんで、そういった意味ではこう刺激的ですし、学びにもなりますし、プレッシャーにも感じています。(エディーさんからの要求が高いので)僕もハードワークはしようとしています。(想像以上ですか)そうですね。今朝もZOOMで話し合いがあって、明日も(話し合いが)あります。

原田衛
――今の選手は伊藤コーチが選手時代と比べたら、エディーさんが優しくてハッピーなのでは?
それはエディーさんも言っていたけど、本当にこの世代から変わった。Z世代ですかね、今までエディーさんが指導してきた中でも大きな変化だそう。これまでもそういう微妙な変化は感じていたけど、今の世代のチェンジはすごく大きい。本当に耳を傾けて一緒に成長していくような形でアプローチしないといけない。だから僕らの時とは違いますね。僕らは(エディーさんの厳しい指導は)別に何とも思ってなかったですから。
――エディーさんは、若い選手のどこを見ていますか?
特にFWはタフであることですね。やはりワークレートも高くて、ずっと動き続けるというところがキーになる。全体的にはそういうところが求められています。
――モールのアタックの練習のとき、リフターがしっかりあたる練習をしていましたね。
どこで(モールのアタックで)モメンタムの勢い生むのかというところで、僕はリフターとリッパーで作ってほしいなと思っています。リッパーの両サイドにつく選手もそうですけど、モールはやはり、そういった良い仕掛けをすると、最初のところでちょっとでも前に出ると一気に勢い生まれるので。ランディングした瞬間を狙いたい。パンチと呼んでいます。今ベース作って手応え得れば、選手が自信を持ってやってくれます。
――ジャパンのチームとしてのPNCの位置づけは?
やはりチャンピオンになりたいですよね。去年は決勝で、フィジー代表にあともう一歩というところだったので、優勝して秋のキャンペーンにつなげたいなと思っています。
――相手の分析をすることはもちろんですが、自分たちに矢印を向けている感じでしょうか?
もちろん自分たちの強みを発揮するっていうのがベースにありますね。ただやっぱり相手もあることなので、(分析も)大事になってくると思います。

奥井章仁
――7月にキャプテンを務めたリーチマイケルが不在の中、FWの中でリーダーシップが期待されている選手は?
やはり(HO原田)衛とか、すごく落ち着きが出てきているし、パフォーマンスも上がっているので、彼はやっぱりリーダーの候補にあがってくるでしょう。ルア(NO8マキシ ファウルア)もクボタでキャプテンをしているので、ジャパンでリーダーシップを出してほしいですね。