3月23日、熊谷ラグビー場では第25回全国高校選抜ラグビー大会の1回戦・16試合が行われた。この日なんと言っても西グラウンドで行われた、東福岡(福岡)と目黒学院(東京)の一戦はこの日の中でビッグマッチとなった。
昨年花園で準優勝を果たした東福岡(福岡)は、九州地区新人戦で優勝を果たし地区1位として出場権を獲得した。一方目黒学院は関東地区新人戦5位で出場権を獲得した。戦前の予想では東福岡が優位に見られていた。
前半、風上の東福岡が優位に試合を進める
前半風上の東福岡は13分、敵陣ゴール前のラインアウトからHO須藤蒋一が先制のトライ。さらに16分、CTBスクラムから東福岡が、BKに展開し22m手前までゲイン。さらにHO須藤のゲインでゴール前までボールをキャリーすると、すぐに左サイドへ展開し、FB早坂俊吾がトライ。ゴールは決まらず10-0。
追いかける目黒学院は、21分、敵陣15m付近でターンオーバーするとLOフィッシャー慶音が突破しそのままトライ。FB中村理応のゴールも決まり10-7とした。
直後のキックオフから50-22で再び東福岡が敵陣深くに入ると、目黒学院が自陣ゴール前でペナルティ。LO梁瀬将斗がクイックタップでリスタートしトライ。17-7と東福岡が10点リードして前半を折り返した。
後半は目黒学院が風上のアドバンテージを活かして敵陣エリアの時間帯を増やしチャンスをつくる
後半風上となった目黒学院は、9分、敵陣ゴール前の攻防でFWでフェイズを重ね、相手のディフェンスラインにスペースができたところを、CTB石掛諒真がついてトライ。ゴールも決まって3点差に迫った。
東福岡は後半14分、敵陣ゴール前のラインアウトからドライビングモールでHO須藤がトライ。再び24-14と10点差に突き放した。
目黒学院は何度かゴール前に迫るもラインアウトが確保できず、なかなかスコアにつなげることができなかったが、24分、東福岡が自陣ゴール前でノックオン。目黒学院がマイボールスクラムのチャンスを迎える。NO8ロケティーがボールをキャリー、ゴールラインに迫る。さらにCTB石掛がポイントをずらすとFL阿部史門がピックゴーでトライ。ゴールも決まり、土壇場で24-21と3点差に迫った。
ゴールキックを蹴り終えた時点でロスタイムを入れて残り5分。この試合の勝負どころを迎える。東福岡はセオリー通り、敵陣深くキックオフのボールを蹴り込んだ。目黒学院は自陣からフェイズを重ねボールをキープ。東福岡がブレイクダウンでノットロールアウェイのペナルティ。目黒はPKで一気に22mライン付近までボールを運ぶ。
直後のラインアウトから目黒学院がアタックを開始。東福岡がハイタックルのペナルティ。目黒学院はロケティがタップしてリスタート。一気にゴール前まで前進。強みのFWでフェイズを重ねると、32分、NO8ロケティが決勝のトライ。FB中村のゴールとともにノーサイドの笛が吹かれた。目黒学院が28-24で東福岡に大逆転勝利し2回戦に駒を進めた。
昨年花園準優勝の東福岡はまさかの1回戦敗退となり、24日のコンソレーションに進むこととなった。
目黒学院、竹内監督、石掛キャプテン、先制のトライを決めたフィッシャー選手、決勝のトライを決めたロケティー選手に試合後話を聞いた。
目黒学院 竹内圭介監督
ラインアウトが取れなくて、モールも厳しくて、そういうのを持ち帰ってかなと思っていたんですけど、それを上回るくらいディフェンスではよく前に出て頑張ってくれていましたね。そこはすごくチームとして評価できます。
――昨年の花園準優勝チームに対して
いやもう重きってチャレンジするだけだったんで、それだけですね。もちどん東福岡が強いのはわかっているんですけど、「東福岡だ」と思ってやると多分メンタルがおかしくなっちゃって、先に崩れちゃうので、そうじゃない自分たちのものを出せるかどうかというところがキーを握っていたかなというふうに思っています。
――アタックでは前に出ていましたね
テンポもよく、こんなにやれるかっていうぐらいやってくれましたね。
――かなり自信になりますね。
自信にはなると思います。天狗にならないようにギュッと締めていきます。
――ハーフタイムでは
ブレイクダウンの外側がえぐられていたので、そこをもうちょっとキチンとやろうと。風下の中で(トライ数が)(自分たち)1本(東福岡)3本だったので、上出来だと。後半全然ひっくり返せるし、手の届くところに来たという話をしました。
――この2ヶ月で注力してきたところは?
ベーシックなところですね。しっかり当たるとか、タックルするとか、本当にそのあたり。あと体の使い方とかそういうところをずっとやっていました。
――手応えはありましたか
正直わからなかったので一戦一戦やっていきながら、なんとなくの感じでの手応えという感じですね。
――昨年のチームと今年のチームの違いは?
ちょっと速さがでてきているかなと、去年よりもテンポが良くて、その部分が進化しているかなと思います。
――明日は天理との対戦です
全く準備していないというのは冗談ですけど、昔は分が良かったのかどうかわからないですけど、伝統校対決を楽しんでもらえたらなと思います。
目黒学院 CTB石掛諒眞主将
世間は誰しも東福岡が勝つと予想していたと思いますが、自分たちだけ目黒が勝つと信じていた。まずは嬉しいという気持ちと、次があるのでしっかり切り替えていきたい。東福岡は外展開を武器としているので、ディフェンスを強化してきました。
――前半のトライは1本、3本でした。
前半は7-17になりましたが、後半、風上でこの点差だったので、自信があった。前半ミスもあったのでまだまだ行けると思っていた。後半の最後はテンポもそうですし、やるにつれて自信がついてきてチャレンジ精神で、アグレッシブにやった結果です。
――逆転トライの前のトライを取った後は?
残り5分だったので、まずは継続して、相手がミスするのを待つというか、自分たちがいいアタックをすればミスやペナルティーをしてくれると思っていた。それが来るまで耐えていた。自分たちのミスがあったが外の選手がセービングでカバーしてくれた。セービングからのアタックも練習していて、そこが出た。
――最後PG狙うとトライ数で2回戦に進めなかった
わかっていました。自分は勝ちにいきたかった。
――最後、ロケティのトライで逆転勝利でした
嬉しいのと、もっと上にいけると思いました。天理はフラットで外に展開する、東福岡に似ているところもあるので、今日のうちに修正できることは話し合って修正したい。
――ラグビーいつから
小学校4年からです。岩手のレッドファイヤーズ出身です。ラグビー人生では会心の勝利です。
――ゲーム展開は予想通り
自分の中では本当にちょっとずつ点差が伸びたり、縮んだりとして追いかける展開となると予想していたが、みんなが120%やったおかげで、想像以上に上手くいっている部分もあった。前半は相手陣にいて、ラグビーがしやすい状況が作れた。
――コイントスは
勝った。(後半風上を選んだ)はい。
――関東新人の反省点は
もう一度ディフェンスを見つめ直してやっていた。セットプレーからのアタックはディフェンス陣が抑えきれなかったのでそこは課題です。
――今季のスローガンは
「進化」です。環境に応じて自分たちが変わっていくという意味です。昨季のスローガンは「加速」だったので、それに加えて「進化」としました。少し進化が見えたと思います。前半最初の方、ペナルティーで得点取られるシーンが多いが、そこで焦らず戦ったり、負けている状況でも焦らず、勝つことだけを信じて戦って上手くいった。
――天理戦に向けて
過去何回も天理と戦っているが、やってくることが多少わかっているので、今日のミーティングで話し合ってみんなで意識してやっていきたい。
目黒学院 NO8ブルースネオル ロケティ
――試合を振り返って
すごく大変な試合でしたけどみんなで声を掛け合って、力を出すことができて頑張れた。(最後のトライは)みんなで勝ちたいという気持ちを持っていたから決めることができたと思う。
――東福岡と戦ってみて相手のフィジカルは?
めちゃくちゃ強かった。あんなに強いのは初めてです。
――怪我の方は?
左の足首です。まだ少し痛いです。
――ラグビーできない期間は?
結構悲しかったし、早く復帰したいなという気持ちでした。まだまだ全然弱いからもっと強くなりたいです。
――花園でのプレーで結構注目を浴びましたけど、その後周りで変化はありましたか?
今注目されて、名前も結構覚えられてしまってマークされちゃったんで、ちょっと大変です。
――今日の試合では?
(マーク)されていましたね。スクラムの時に「ロケティ」と結構言われました。
――そういった状況を乗り切ってどんなプレーヤー担っていきたい
もっとトレーニングして強くなりたいです。
――日本に来て1年くらいになりますけど、慣れてきたところはありますか
全然トンガよりハードな暮らしをしていますが、これから自分がもっといい生活ができるように今はチャレンジをし続けています。
目黒学院 LOフィッシャー慶音
――花園で準優勝したチームと戦うことについて
メンタル的に名前で負けないということを前提に戦いました。同じ高校生だし、メンタルでやられないように戦いました。、
――風下の前半を10点差で折り返せた。ハーフタイムでのチームの雰囲気は?
前半、風下で後半は追い風になるので、これはいけるぞという感じで最後は出し切ったという感じですね。
――明日も試合があります。
あまり浮かれないように。これで浮かれちゃったら明日危ないんで、まだ大会はおわっていないし、切り替えていきたいと思います。