リーグワン決勝直前スペシャル3・サンゴリアスvsワイルドナイツ決勝メンバー&展開を考察する! | ラグビージャパン365

リーグワン決勝直前スペシャル3・サンゴリアスvsワイルドナイツ決勝メンバー&展開を考察する!

2022/05/28

文●大友信彦


ラグビーリーグワンの初代王座をかけたプレーオフ決勝は29日、国立競技場で行われる。

トップリーグ最後の王者となった昨季からの「連覇」を目指す埼玉パナソニックワイルドナイツと、決勝で敗れた昨季への雪辱を期す東京サントリーサンゴリアスの戦いだ。両チームはキックオフ48時間前となる27日午後に決勝の登録メンバー23人を発表。前日の28日には14時半から別々に国立競技場の下見を行い、16時からは両キャプテンと監督・ヘッドコーチが決勝前日会見に臨んだ。

「連覇」を目指すワイルドナイツは、スピアーズに完勝した準決勝から先発メンバー4人を変更した。右PR平野翔平に代えて藤井大喜、LOヒーナンに代わって準決勝ではNO8だったコーネルセンが入り、NO8には布巻峻介。さらにコンディション不十分で準決勝を欠場したLOジョージ・クルーズとSH内田啓介が満を持して先発に復帰だ。

やはり注目は今季初先発の2人だ。東福岡から早大2年まではCTBで、早大3年以降はFLで、日本代表やサンウルブズでも活躍してきたが、NO8での先発はラグビーキャリアで初めて。そして藤井はワイルドナイツ入団3年目での初先発が決勝というビッグゲームになった。

この用兵は、準決勝で17番(リザーブの左PR)クレイグ・ミラーが負傷したことを受けてのものだ。準決勝までは右PRで先発していた左右両刀遣いの平野を左PRのリザーブ要員に置き、右PRの先発に24歳の新鋭・藤井を抜擢。ワイルドナイツの看板とも言える後半投入されるFW第1列インパクトトリオを「平野翔平・堀江翔太・ヴァルアサエリ愛」の3人で組むことにしたのだ。従来のラグビーでは主力にケガが出たらリザーブから繰り上がることが多かったが、さすが、後半に無類の勝負強さを誇るパナソニックのロビー・ディーンズ監督の判断は奥が深い。


ロビー・ディーンズHC(埼玉ワイルドナイツ)

ロビー・ディーンズHC(埼玉ワイルドナイツ)

当のロビー監督は「藤井を入れることは特別な判断ではない。毎週のトレーニングで、チームでも良いパフォーマンスを見せているから選んだ。大きな変化とは考えていない」と話す。とはいえ、これがワイルドナイツで初先発の藤井本人にとっては当然、特別だ。メンバーが発表された27日のオンライン会見で藤井は話した。

「ロビーさんからスタートで行くと言われたのは火曜日の朝です。そのときは本当に不安で、一日中震えているような感じでした。でも、ほんとうに周りの方々が声をかけてくれて、サポートしていただいて、やっと今日(金曜日)落ち着くことができました」

FW第1列でスクラムを組む坂手主将、大東大の先輩でもある木川隼吾スクラムコーチ、同じく大東大の先輩であるSH小山大輝、さらにチームの大黒柱の堀江翔太……たくさんの仲間が直接声をかけ、励ましてくれたそうだ。

もうひとりの注目は今季初先発、初エイトの布巻だが、布巻本人は背番号8を気にしてはいないようだ。
「NO8としての仕事というよりも、いつも僕に求められている仕事、運動量、ブレイクダウン周りでの仕事、全体のバランスをとる役目……そういう地味な働きだと思う。基本的にはFLのつもりでプレーすることになると思います」

FW第3列は、一般的には6番(ブラインドサイド)にサイズのある攻撃型のパワーランナー、7番(オープンサイド)にスピードのある防御型のタックラー&ジャッカラーを置くことが多い。真ん中のNO8は攻守両面で活躍する万能型を置くのが王道(典型は元ジャパン主将の箕内拓郎そして現役ならトヨタヴェルブリッツの姫野和樹だろう!)ながら、近年はサイズのあるアタッカーを置き、攻撃時の突破役のオプションを増やす傾向がある。とはいえ、もともとオープンサイドFLタイプの選手がエイトに入るケースは決して珍しくない。今季のリーグワンでいえば、静岡ブルーレヴズのクワッガ・スミスがそうだし、かのリッチー・マコウもオールブラックスではたびたび8番を背負った。

NO8で先発する布巻峻介

NO8で先発する布巻峻介


布巻に求められるのは、80分のペース配分など考えず、ハードワークで相手のフィットネスを削り、おそらくは、後半10-20分あたりの勝負所で、フィニッシャーとなる谷昌樹につなぐことだろう。谷は今季、ここまで出場したのは途中出場2試合のみと少ないが、チームではリーダーグループの一員であり、「ナイツ」と呼ばれるノンメンバーチームの中核メンバーとして、常に相手チームを研究し、自チームのメンバーを刺激してきた存在だ。
同じように、初先発の藤井も「うしろにはヴァルさんが控えているので、自分は前半が終わったら歩けなくなるくらい全部出し切るつもりで行きます」と話す。堀江翔太だけではなく、ワイルドナイツのリザーブは誰もが間違いなく主役なのだ。

その思想は、対戦相手のサンゴリアスにも共通する。

27日に発表された決勝メンバーでは、準決勝をコンディション不十分で欠場したテビタ・タタフが復帰したが、それまでのリーグ戦でつけていた背番号8ではなく、20番をつけてリザーブに入ったのだ。

この起用法について、ミルトン・ヘイグHCはこう説明した。

ミルトン・ヘイグHC(左)、ロビー・ディーンズHC(右)

ミルトン・ヘイグHC(左)、ロビー・ディーンズHC(右)


「去年の決勝でもタタフはリザーブに置いた。ベンチから出て、ゲームにインパクトを与えるのが彼の持ち味。あすは暑くなる中で、ピッチに出るのはおそらく最後の30分になるだろう、そこでゲームにインパクトを与えて欲しい」

ミルトンHCのイメージも「後半勝負」なのだろう。何しろワイルドナイツは、堀江翔太はじめ歴戦の強者が投入される後半に無類の強さを発揮する。そのシナリオを崩すためには、自分たちも強力なカードを後半に投入しなければならない。そのためには、実質的なテストマッチデビューとなった昨年のブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦で相手選手たちが「アイツは何者だ?」と試合後聞いてきた(リーチマイケルの証言)ほどのインパクトをみせたタタフはうってつけのカードだ。
そしてLOの控えには今季フィジカルの強さで大ブレイク、日本代表スコッドにも呼ばれた辻雄康が入った。

「辻は本当に頼もしい。サンゴリアスの日本人選手で、一番外国人相手に通用するフィジカルを持っていて、スマートさはないけど愚直に前へ出てくれる。辻が近くにいたらボールを渡したくなる。迷ったときは辻に放ってます。以前の眞壁(伸弥)さんみたいな、チームに必要な存在です」とSH流大が評するほどだ。

堀江翔太

堀江翔太


さらに、堀江翔太のトイメンたる背番号16には同じく帝京大の後輩主将にあたる堀越康介、そしてゲームのスピードをあげる控えSH、埼玉の小山大輝のトイメンには齋藤直人というやはりジャパン組が控える。SO田村煕は言う。


「ユタカさん(流)は何も言わなくてもゲームを作ってくれる。直人(齋藤)ももちろんゲームを作る力はあるけれど、それ以上に思い切って、考えさせすぎずにプレーさせたい。入ったときは『思い切って行け』というメッセージを伝えるようにしています」

そして堀越康介は「堀江さんに、ちょっと焦ってもらおうと思ってます」と笑うのだ。

「堀江さんを見ていると、ホントにいつもまったく焦ってないし、周りの選手とコミュニケーションを取って落ち着かせているのがすごい。でも逆に言うと、そこがいつもと違ってきたら、チーム全体がいつもと違うな? ということになるはず。堀江さんが出てきたら、『何か、いつもと違うぞ』と思わせるよう、先手を打ってプレッシャーをかけまくりたい」

勝負は下駄をはくまで分からないという。ラグビーなら80分+α、プレーオフでは同点ならトライ数に関係なく10分間の延長戦も行われ、それでも決着がつかなければ、空前の(国内では未だ実現していない)キッキングコンペティションも行われることになっている。

5月29日、NTTラグビーリーグワン2022・プレーオフ決勝。国内最高の戦いを、最後の最後まで楽しみ、愉しみ、堪能したい。

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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