リーグワン2025-26第3節の相模原ダイナボアーズvs埼玉ワイルドナイツの一戦が28日、相模原ギオンスタジアムで行われ、ワイルドナイツが33-3で勝利。開幕から3連勝で勝点を14に伸ばし、得失点差でスピアーズを上回り首位に浮上した。
2025/12/29
文●大友信彦
ギオンスタジアムには好天に誘われて4845人の観衆が集結。ゴール裏の芝生席は空いていたものの、椅子席は8割がた埋まっていたように見えた。
ワイルドナイツのキックオフで始まった試合、序盤はダイナボアーズが主導権を握った。開始直後のワイルドナイツのアタックは、WTBコロインベテをFBグレイソンがタッチに押し出す巧みなディフェンスで阻止。

CTBディラン・ライリー

CTBヴィンス・アソ

ダイナボアーズのラインアウト
ラインアウト後にPKを得てワイルドナイツ陣に進むと、7フェイズにわたってアタック。ここはいったんワイルドナイツが守り切るが、ダイナボアーズはすぐにまた陣地を奪い返してアタック。ここでワイルドナイツのFLガンターがハイタックルでイエローカード。
ダイナボアーズは8分、FBグレイソンがPGを決めて3点を先制。15人対14人の数的優位を得て、残り約9分間に追加点を狙う作戦をとった。
しかし14人になったワイルドナイツは逆に集中力を高め、ボールを着実にキープ。ダイナボアーズはスクラムでFKやPKを奪うものの、そこからのアタックでなかなかモメンタムを作れない。15分にかけて、ワイルドナイツはダイナボアーズ陣で11フェイズにわたってアタックを継続するが、ここはダイナボアーズが粘り強く止め続け、最後はFL吉田杏主将がヴァルアサエリ愛に猛タックルを決めノットリリースザボールのPKを得てピンチを脱出する。だがそこでガンターのシンビンが解け、ピッチの上は15人対15人に。ダイナボアーズは数的優位の時間帯にトライを奪えなかった。

No8ジャック・コーネルセン

FLベン・ガンター
逆に、15人に戻ったワイルドナイツは強気なプレーを選択。28分、ガンターへのハイタックル(カードは出ず)で得たPKでゴール前ラインアウトに持ち込むと、モールを押しきってHO坂手主将がトライを決め逆転。

LOエセイ・ハアンガナ

SO齊藤誉哉

HO坂手淳史
35分にも左ゴール前のラインアウトからモールを一気に押しきり坂手主将が連続トライ。前半終了のホーンが鳴ったあとも攻め続けてPKを得るとそこでもラインアウトに持ち込み、42分にガンターが右隅にトライ。21-3とリードを広げて折り返した。

相模原SH岩村昂太

相模原FBジェームス・グレイソン

相模原SO三宅駿

ベン・ガンターのトライ
後半は3分に坂手主将が高い姿勢でのコンタクトをチェックされ、チーム2枚目のイエローカード。さらにエースランナーのディラン・ライリーも手首を痛め交代。ダイナボアーズは相手ゴール前に攻め込んでスクラムを得るなどワイルドナイツを攻め立てるが、鉄壁の防御網は崩れず、逆にディフェンスでPKを獲得。
陣地を戻したところで坂手のシンビンが解けて15人に戻った14分、左ゴール前ラインアウトからHO佐藤健次がピールオフで抜け、そこへブラインドからWTBコロインベテが走り込む鮮やかなムーブが決まりトライ。さらに21分には同じくゴール前のラインアウトから、この試合で戦列復帰したFL福井翔大がトライし33-3と点差を広げる。

埼玉FB野口竜司

埼玉WTBコロインベテのトライ

埼玉WTB竹山晃暉

埼玉HO佐藤健次

観客は4845人

埼玉FL福井翔大
一矢報いたいダイナボアーズは後半28分、WTB14マット・ヴァエガが右隅ゴール前に飛び込み、いったんトライを宣告(グレイソンC失敗)されたが、次のキックオフの前にTMOがコールされ、画像で確認した結果、埼玉LOオッキー・バーナードのタックルで、ボールをグラウンディングするより一瞬早く足先がタッチラインに触れるのが確認され、トライは取り消しに。コンバージョンを蹴る前に大型ビジョンに映し出された動画でその場面は見えていただけに、TMOのタイミングが遅れたのは残念だ。

埼玉SO齊藤誉哉コンバージョン

埼玉WTB長田智希

相模原SO三宅駿

相模原CTBルカニョ・アム
結局、試合はそのまま33-3で終了。ワイルドナイツは初戦のブレイブルーパス戦の完封勝ち(46-0)に続き相手をノートライに封じての勝利。リーグワンD1は昨季のリーグ戦ではすべての試合で両チームがトライをあげていて、相手をノートライに封じた試合は皆無(プレーオフ準決勝でブレイブルーパスが神戸スティーラーズを31-3に封じたのみ)だったが、ワイルドナイツは3節ですでに2試合で相手をノートライに抑え込む充実をみせている。

埼玉LOオッキー・バーナード

埼玉FL福井翔大

埼玉PRリサラ・フィナウ

試合終了

スコアボード

POMのエセイ・ハアンガナ

マッチスポンサーNIGITA賞の埼玉WTB竹山晃暉

100試合出場を達成した相模原FL鶴谷昌隆

前主将の岩村から記念のボード贈呈

集合

復帰戦を飾って笑顔の福井翔太

相模原に加入したセミシ・マシレワと再会を喜ぶ稲垣
埼玉パナソニックワイルドナイツ 金沢篤HC

金沢篤HCと坂手淳史キャプテン
「ゲームの流れを掴むのは難しい試合だったが、その中でもチームとして流れを引き戻して勝利を掴めたのは成長を感じる試合だった」
――前戦からのメンバーの変更について。
「選手層については、誰が出てもワイルドナイツのラグビーをできる準備ができているので、その週のタイミングでメンバーを決めている。ジャック(コーネルセン)に関しては、ジャパンの遠征から帰ってきて、チームに戻ってきたタイミングも含めて今日の起用になった」
――3節で2度目のノートライ勝ち。
「相手をノートライに封じたのはあくまで結果に過ぎないが、そこに至るまでの選手たちの努力が見られたことが収穫かなと思う。TMOで相手のトライが取り消しになった場面もオッキー(LOバーナード)が最後までタックルした成果だった。相手をノートライに抑えたことは自信になると思う」
――SOで初先発の齊藤誉哉、SHで初キャップの本堂杏虎について。
「期待通りの活躍をしてくれた。力があるから23人のメンバーに入れた。難しい時間帯が長かった中で、よく乗り越えて、ゲームを作ってくれた。本堂はタックルが一番の強みで、激しいタックルをよくやってくれた。齋藤はユーティリティな能力を持つ選手だけれど、チームの編成上くようは10番に入って、プレッシャーが厳しい中で良く能力を発揮してくれた」
埼玉パナソニックワイルドナイツ 坂手淳史主将
「前半は難しい流れになってしまって、自分たちでも無理なプレーを選択して流れを失ってしまった。そこからハドルを組んで、チームとして戦おう、立て直そうということを徹底して、劣勢のところから徐々に良い流れに持ってこれたのは収穫。修正力を出して勝ちで追われたことで、良いゲームだったと思う」
――ディフェンスの充実について。
「布巻さんが選手でありながらディフェンスコーチのような役割をしてくれて、いいものを落とし込んでくれている。今日の試合でもオッキーのタックルで相手をノートライに抑えることができた。自分たちのディフェンスミスでトライされそうになっても全員のエフォートで止めることができた。自陣に入られても焦ることなくディフェンスし続けるという良いものを出せたと思う」
――PGを狙わなかったのはゲームプランか。
「試合の流れでたまたまそうなりました。キッカーの齋藤誉哉とは、最初は『狙えるところは狙っていこう』と話していたのですが、ショットするにはちょっと難しい位置で、モールの手応えもよかったし、ラインアウトもいいジャンパーが揃っているので、そこでプレッシャーをかけていこうというのが狙いでした。一度、10mの手前のところで誉哉に『どうする?』と聞いたときがあったのですが『ラインアウトでプレッシャーかけていきましょう』という答えでした(笑)」
三菱重工相模原ダイナボアーズ グレン・ディレーニHC

グレン・ディレーニHCと吉田杏キャプテン
「とてもタフなゲームでした。相手はとても強いチーム。差を感じたのは相手の22mラインに入った時。向こうはチャンスをモノにして得点を重ねたのに対し、我々は最初の25分間に相手陣に入って、フィジカルを活かしてプレッシャーをかけることまではできたけれど、エフォート(努力)は良かったけれど精度が足りずスコアまで至らなかった」
――ワイルドナイツのディフェンスについて。
「ブレイクダウンで相手が人数をかけて、こちらの球出しを遅らせて、ターンオーバーを狙ってくるのは分かっていた。後半(28分)はトライを取れたと思ったけれど、最終的にはトライが認められなかった。相手のディフェンスに苦しみました」
――SO三宅選手を起用している狙いと彼の今日のパフォーマンスについて。
「今日は彼にとって学びの多い1日になった。彼にやってほしいことはゲームメークとゴールキック。チームとして彼のパフォーマンス、貢献度には満足しています」
「現在はWTBのホネティ(タウモハパイ)、ナコ(ジョアペ)がケガで戦列を離れていて、加島DJが先発のチャンスを掴みました。ジェームス(グレイソン)には今日の試合でも見せたようにハイボールキャッチの能力もあるし、15番に入ることでゲームメークも10番の三宅だけでなくジェームスと2人で担える。ゲームメークできる人間は多くいる方が良いです」
三菱重工相模原ダイナボアーズ・吉田杏主将
「HCが言ったように、最初の25分間はやりたいラグビーができていた。その中で相手の22mに入った時にチャンスがあったのに、ミスをしたりペナルティーをしたりしてチャンスを逃してしまった」
――そのミスやペナルティーの原因は。
「相手の22mに入った時、相手のブレイクダウンがよりきつくなった。自分たちはブレイクダウンへのレースで遅れてしまい、2人目の寄りの速さに差を感じました」
SCOREBOARD
三菱重工相模原ダイナボアーズ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
大友信彦(おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |

大友信彦