もうひとつの日本一「またも負けたか三洋電機」よくやったラトゥ、胸を張れセミィ | ラグビージャパン365

もうひとつの日本一「またも負けたか三洋電機」よくやったラトゥ、胸を張れセミィ

2012/01/13

文●永田洋光


永田洋光さんから「取って出し」していただいたのは1996年2月29日発行のSports Graphic Number 386号「開国前夜」から「もうひとつの日本一『またも負けたか三洋電機』よくやったラトゥ、胸を張れセミィ」。です。当時の様子を永田氏はこう語った。

神戸製鋼V8が頓挫したシーズン、社会人チャンプの跡目を継いだチームは2つあった。1つは、95-96年度の日本選手権の覇者となったサントリー。そして、もう1つが、本稿で描いた三洋電機だった。

私は神戸製鋼が7連覇を続けていた当時、足繁く神戸に足を運んで取材をしたが、それ以上に肩入れして見続けていたのが、この三洋電機だった。つまり、お互いに尊敬し合う宿敵同士の、その関係性に惹かれてどちらの動向からも目を離せなくなってしまったのだった。

で、神戸製鋼が準々決勝で姿を消してしまったシーズン、私は旧知の関西在住の新聞記者と決勝戦の前に「こらもう、三洋電機の優勝で決まりだろ」みたいなことを電話で話していたのだが、そのとき「でも、神戸製鋼が相手じゃなかったら、実は三洋電機は勝てなかったりして……」という冗談を交わして笑い合っていた(関係者のみなさん、ごめんなさい)。

そして――決勝戦で三洋電機はものすごく強かった。だが、勝てなかった。これはNUMBERの即日原稿(当日午後10時締め切り)という性質上、ほとんど考えるより先に手を動かした原稿なのだが、書き出しだけは花園ラグビー場から宿に向かう途中であれこれ考えているうちにポンと浮かんできた。当時の私の素直な気持ちである。

 

神戸製鋼V8が頓挫し、跡目を継いだ新たな社会人チャンプがうまれた時間へタイムトラベル。



 

なぜ?
どうして?
ああっ! ああ、やっぱり……。

悲願の初優勝なのに、“願い”だけが届かず、
“悲しい初優勝”になってしまう。

なんで?
どうして?
いっつも三洋だけが……。

結末は誰もが覚えている悪夢に酷似していた。右サイドと左サイドの違いこそあれ、振り回されて防御が一人、また一人と減らされて、最後の最後に憎っくき14番にボールが回ってしまう。メインスタンドから見て左側のインゴールに、14番がスルリと走り込む。5年前の秩父宮でもそうだった。

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