大学女子セブンズ2025・日体大が4連覇、DAY2全試合フォト・大会レポート | ラグビージャパン365

大学女子セブンズ2025・日体大が4連覇、DAY2全試合フォト・大会レポート

2025/06/10

文●大友信彦


カレッジセブンズ2025・第12回大学女子7人制ラグビーは8日、決勝トーナメントを行い、日体大が決勝で立正大を下し4年連続6回目の優勝を飾った。

大会には11チームが参加。DAY1は3組に分かれてプール戦を行った。
各組の順位はこうなった。


プールA
①追手門学院 ②アザレアセブン・春日井・湘南・富山・名古屋・横浜 ③NJI

プールB
①立正大 ②早大 ③アルテミ・スターズ ④グレース

プールC
①日体大 ②久留米大・九産大 ③日経大 ④四国大

各組同順位の3チームは、プール戦の得失点差の比較でDAY2決勝トーナメントのシード順が決定。
1位グループでは立正大が+108で1位。追手門学院が+102で2位。連覇を狙う日体大は久留米大・九産大に14点差、日経大には21点差と点差をつけられず、+81で3位に終わった。この結果、トーナメントでは(順当に勝ち進めば)追手門と日体大が準決勝で当たる組み合わせとなった。

1位グループ1位の立正大と準決勝で当たるのは、2位グループ1位の合同(アザレアセブン・春日井・湘南・富山・名古屋・横浜)と2位の早大の勝者。チャレンジャーシリーズ優勝で今大会でも注目された日本経済大はプール戦で久留米大・九産大、日体大に敗れC組3位となっていた。

1回戦 アルテミ・スターズ 58-0 NJI

DAY2はまず、各組3~4位チームによる1回戦3試合が行われ、横河武蔵野アルテミ・スターズがNJIを、久留米大・九産大がRKUグレースを、日本経済大が四国大を破り、それぞれ準々決勝へ。敗れた3チームは9位以下決定リーグへ回った。

NJI-四宮朱莉

NJI-四宮朱莉


アルテミ・スターズ-大倉小歩

アルテミ・スターズ-大倉小歩

1回戦 久留米大・九産大 22-7 RKUグレース

グレース-成瀬晴菜

グレース-成瀬晴菜


久留米大・九産大-中山かのん

久留米大・九産大-中山かのん

1回戦 日経大 27-12 四国大

日経大-只野華梨

日経大-只野華梨


四国大-古澤瑞希

四国大-古澤瑞希



準々決勝は激戦が続いた。

準々決勝 立正大 22-19 アルテミ・スターズ

全体1位の立正大はDAY1も対戦し、19-0で勝っていたアルテミ・スターズと対戦。試合は前半1分、キックを追った立正大の鈴木柚來が相手と交錯しながら押さえて先制トライ。サクラセブンズを経験した丸山希香を軸にゲームを組み立てる立正大はここから加藤璃子、永山風桜、廣瀬翠が立て続けにトライを奪い22-0と大きくリード。しかしアルテミ・スターズは昨年のグローバルユースセブンズ優勝メンバー木川海の獅子奮迅の活躍で流れを掴み、西舞衣子がトライを返し7-22として折り返すと、後半も辻伶奈と木川海がトライ。22-19の3点差まで追い上げたが惜しくも届かずにタイムアップ。立正大が3点差で逃げ切った。

アルテミ・スターズ-西舞衣子

アルテミ・スターズ-西舞衣子


立正大-加藤璃子

立正大-加藤璃子

準々決勝 追手門学院大 21-19 日経大

全体2位の追手門は日経大と対戦。試合開始のキックオフレシーブからのアタックで岡本瑠伊が、4分にはハーフウェーのFLから小西春菜が、豪快な独走トライを連ねて14-0までリードする。対する日経大も6分に石垣未夏美が自陣のPKから約60m独走トライ、後半5分にはサクラ15を経験した垂門奈々がトライを返し14-12とするが、追手門は直後にエース小西が再び自陣から独走トライを決めて突き放す。日経大も諦めず垂門がまたトライを返すがここでタイムアップ。追手門が21-19の2点差で逃げ切った。

追手門-小西春菜

追手門-小西春菜


日経大-石垣未夏美

日経大-石垣未夏美

準々決勝 日体大 36-7 久留米大・九産大

全体3位の日体大は、DAY1の対戦では後半の最初にリードを奪われた久留米大・九産大と対戦。この大会では前半スロースターターぶりが目立っていた日体大は、この準々決勝でも久留米大・九産大の渡邊りなに先制トライを献上。7点のリードを許すが、そこからはスイッチオン。3分に松田奈菜実が豪快なトライをあげて追いつくと、5分に谷山三菜子がトライを決め逆転。

後半は持田音帆莉キャプテンの連続トライでリードを広げ、さらに江尻栞那と水野小暖がトライ。サクラセブンズで世界4位を経験した谷山三菜子&高橋夏未に加え、ユース世代のトップランナーとして均した大内田葉月、杉本姫菜乃、齋藤紗葉が加わったタレント集団は試合を重ねる毎に攻撃の呼吸が噛み合い、凄みを増してきた。

日体大-水野小暖

日体大-水野小暖


久留米大・九産大-伊礼門千珠

久留米大・九産大-伊礼門千珠

準々決勝 早大 22-14 合同(アザレア・春日井・湘南・富山・名古屋・横浜)

準々決勝残り1試合は早大と合同。合同チームは主将の星谷心咲、エース西夏穂と酒野日和の3人が、5月のチャレンジャートーナメントで早大に接戦の末に敗れたアザレアセブンのメンバーだけに、ちょっとした因縁の対決となった。

試合は早大が、今大会でも大活躍の高橋みひろ&あいりのルーキーツインズが連続トライをあげて10点を先行するが、ここでイエローカードが出てしまい、数的優位を得た合同はハーフタイムをはさんで山口わかば(春日井)、西夏穂が連続トライ。コンバージョンも西夏穂と高橋胡春(横浜TKM)が決め14-10と逆転する。

しかし早大は7人に戻ったところで高橋みひろが右サイドを豪快に走り切って逆転トライ。試合は15-14の1点差で進むが、7分に高橋みひろがステップを効かせた中央突破でトライをあげ突き放した。

合同-星谷心咲

合同-星谷心咲


早大-高橋みひろ

早大-高橋みひろ


準決勝1 立正大 45-5 早大

準決勝は立正大v早大と追手門v日体大となった。

立正大と早大はDAY1のプール戦でも対戦し、立正大が48-5で圧勝していた。
雪辱したい早大は2分、岡本美優のトライで先制。幸先の良いスタートを切ったが、立正大は山田晴楽主将が相手DFに囲まれながら粘ってボールを活かし、パスを受けた鈴木柚來が右隅から真ん中に回り込んでトライ。山田のコンバージョンで逆転すると、5分には山田のキックからゴール前の混戦を制した丸山希香がトライ。14-5で折り返した後半は、この大会のトライ王廣瀬翠の70m独走など5トライをたたみかけ、45-5。立正大が前日同様のスコアで早大を返り討ちにし、決勝に進んだ。

立正大-鈴木柚來

立正大-鈴木柚來


早大-岡本美優

早大-岡本美優

準決勝2 日体大 42-12 追手門学院大

もう1試合、日体大vs追手門は開始3分、追手門の小西春菜が鋭いステップで相手DFを翻弄する鮮やかなトライで5点を先制。対する日体大は4分、右を杉本姫菜乃、中央を大内田葉月という1年生の突破から高橋夏未がトライ。6分には谷山三菜子が1人タックル&スティールでPKを奪うと自らクイックスタートして約50mを独走する「自作自演」トライ。ホーンが鳴ったあとの8分にはPKから高橋夏未が仕掛け、大内田にスイッチしてトライ。後半早々には自陣ゴール前のピンチをしのぐと齋藤紗葉がビッグゲインして持田主将がトライ。追手門も4分に津田佳梨が相手ゴール前まで独走、日体大の齋藤紗葉が必死に戻って倒すが、オフロードパスを受けた松田向日葵がトライを返し12-28とする。

しかし日体大は残り3分にも松田奈菜実と江尻栞那がトライを加え、42-12と突き放して決勝進出を決めた。

追手門-松田向日葵

追手門-松田向日葵


日体大-松田奈菜実

日体大-松田奈菜実

決勝 日体大 21-19 立正大

そして迎えた決勝は日体大と立正大の対戦。

この大会では2017年から2019年まで3年連続で決勝を戦い(2017年は「立正大・東京学芸大」の合同チームだった)、日体大が2度、立正大が1度勝っている。

試合は2分、立正大がこの大会のトライ王となった廣瀬翠が自陣のPKから約60mを快走。廣瀬はこの大会の6試合すべてでトライをあげるみごとな決定力を披露。山田のコンバージョンも決まり7点を先制する。

日体大・谷山三菜子のキックオフで決勝は始まった

日体大・谷山三菜子のキックオフで決勝は始まった


廣瀬がポスト下に回り込み先制トライ。山田のコンバージョンも決まり立正大が7点を先制

廣瀬がポスト下に回り込み先制トライ。山田のコンバージョンも決まり立正大が7点を先制

対する日体大は3分、大内田葉月のブレイクから谷山三菜子にオフロードパスが通りトライ。同点に追いつくと、5分に谷山から齋藤紗葉へオフロードパスが送られ逆転トライ。視野が広い谷山、松田、大内田の3人が司令塔兼突破役として、常に選択肢を多く持ち、パスの出し手にも捕り手にもなり、外には齋藤紗葉と杉本姫菜乃というサイズとスピードをあわせもつランナーがいる。その間のスペースでは主将の持田音帆莉、松田奈菜実、江尻栞那ら上級生がハードワークでディフェンスではスペースを埋め、アタックではスペースをこじ開けるのだ。

3分、日体大は大内田葉月が中央をブレイク

3分、日体大は大内田葉月が中央をブレイク


オフロードパスを受けた⑨谷山三菜子がゴール前へ

オフロードパスを受けた⑨谷山三菜子がゴール前へ


追ってきた立正大⑧廣瀬にパスダミーでフェイントをかけ

追ってきた立正大⑧廣瀬にパスダミーでフェイントをかけ


次のキックオフから日体大は齋藤紗葉のタックルで相手落球を誘い相手ゴール前スクラムのチャンス

次のキックオフから日体大は齋藤紗葉のタックルで相手落球を誘い相手ゴール前スクラムのチャンス


そのスクラムから左に展開し齋藤が左サイドを突破

そのスクラムから左に展開し齋藤が左サイドを突破


相手タックルを振り切り逆転トライ

相手タックルを振り切り逆転トライ


しかし立正大も食い下がった。

7分、廣瀬、丸山の前進から山田主将がトライを決め14-14の同点にして折り返すと、後半4分には山田のタックルで得たPKを丸山が速攻。永山がつなぎ、加藤が右隅に飛び込み勝ち越しのトライを奪う。

逆転された立正大は7分、⑫丸山希香の仕掛けから⑦山田晴楽主将が右サイドを豪快に突破

逆転された立正大は7分、⑫丸山希香の仕掛けから⑦山田晴楽主将が右サイドを豪快に突破


中央に回り込みトライ。自らコンバージョンを決め14-14の同点でハーフタイム

中央に回り込みトライ。自らコンバージョンを決め14-14の同点でハーフタイム


サクラセブンズを経験した視野の拾い丸山希香に加え、サイズと器用さをあわせもつキャプテン山田晴楽がサブ司令塔としてゲームを統率。キックの出所が複数あり、両サイドに廣瀬翠と鈴木柚來というスピードランナー、内側には加藤璃子と永山風桜というパワーランナーを配し、どんな位置、どんな形からでもトライを狙うアタック力はみごとだった。

立正大が19-14とリードして勝負はラスト1分。勝負を決めたのは日体大のトリプル司令塔だった。相手陣22m線でPKを得ると、高橋がタップキックでスタート。交差する形でパスを受けた谷山はステップで相手DFを抜き、スペースを作ると横についた大内田へパス。大内田はアングルを変えてDFの逆を突き、ゴールポスト真下にトライ。谷山が逆転のコンバージョンを決めた。

リードされた日体大もすぐに反撃。谷山が立正大⑤永山風桜のタックルに耐えて前進

リードされた日体大もすぐに反撃。谷山が立正大⑤永山風桜のタックルに耐えて前進


さらに日体大①持田音帆莉主将がタックルを受けながら前進

さらに日体大①持田音帆莉主将がタックルを受けながら前進


PKを得ると高橋夏未がクイックスタートして谷山にスイッチ

PKを得ると高橋夏未がクイックスタートして谷山にスイッチ


谷山は立正大⑦山田をステップで抜いて

谷山は立正大⑦山田をステップで抜いて


パスを受けた⑩大内田葉月がステップを切ってトライラインへ

パスを受けた⑩大内田葉月がステップを切ってトライラインへ


谷山のコンバージョンで日体大が21-19と逆転

谷山のコンバージョンで日体大が21-19と逆転

4連覇を飾った持田主将は「失点ゼロで優勝することを目標にしていたので、課題が多く出てしまった。でも日体大の強みである組織で勝つことを心がけました」と、優勝に安堵の表情。

MVPに輝いたのは谷山三菜子。ワールドシリーズのトライオブザイヤーに続くタイトル獲得だ。こちらも「決勝は失点ゼロで勝とうと話していたので、先制されたときは気持ちが少し下がったけど、4年生にとっては最後の大会。サクラセブンズで学んだことをしっかり出して勝とうとすぐに切り替えた」と、逆転勝ちに安堵した様子だった。

持田音帆莉キャプテンとMVP谷山三菜子

持田音帆莉キャプテンとMVP谷山三菜子

この大会は例年、太陽生命シリーズ終了後の7月(2019年は9月)に開催されていたが、今年はシリーズ開幕前の開催。チームの経験値は高まっていない状態での戦いかと思われたが、日体大の古賀千尋HCは「4月と5月に練習試合をたくさん組んで準備できたし、いきなり外国人選手のそろっているトップチームと連戦するよりも、大学生との大会を先に戦えたのは、太陽生命シリーズへの準備という意味でも良かった」と前向きに受け止めていた。

準優勝の立正大も、例年は社会人選手と一緒にアルカスで太陽生命シリーズを戦い、経験値を高める一方、消耗した状態でこの大会に臨むことが多かった。今季はフレッシュな状態で臨めたことに加え、頼れる社会人選手がいないことで各自が積極的にプレーしたことが好成績に繋がったようだ。

立正大学

立正大学

創部から1年の早大もみごとな戦いで4強入りを果たした。新加入の高橋みひろ&あいりのツインズ、尾久土栞の1年生トリオの攻撃力は大きなプラスだったが、それと同じくらい光ったのは接点で前に出る強さと意欲、こぼれ球に反応する早さなどのベーシックな部分。チームのカルチャーを僅か1年で形にしつつある横尾千里HC、千北佳英初代主将に敬意を表したい。8月の太陽生命シリーズグランドファイナルの入替戦に注目だ。

早稲田大学女子ラグビー部

早稲田大学女子ラグビー部

強い印象を残したのは上位チームだけではなかった。今大会には3つの合同チーム「久留米大・九産大」「アザレアセブン・春日井・湘南・富山・名古屋・横浜」「NJI(八戸学院大・北海道合同・国際武道大)」が参加。久留米大・九産大はDAY1に日経大を破り、アザレアセブンを中心とした合同チームは「試合当日に集合、ほとんどの選手が初対面でした」(星谷心咲主将)という状態ながらSDS経験者の西夏穂、湘南から参加した唯野文香、TKMから参加した高橋胡春らが思い切ったプレーをみせ、早大とは8点差、アルテミ・スターズとは5点差の熱戦を繰り広げた。

アザレアセブン・春日井・湘南・富山・名古屋・横浜合同

アザレアセブン・春日井・湘南・富山・名古屋・横浜合同


NJI

NJI

今大会にはサクラセブンズでワールドシリーズを経験した選手が世界トライオブザイヤーを受賞した谷山三菜子と高橋夏未(日体大)、松田向日葵(追手門)、昨秋のアジアシリーズ経験者が丸山希香(立正大)で出場。日経大にはサクラ15を経験した垂門奈々がいた。彼女らが代表のエッセンスとそこで得た自信をチームに持ち帰っていたことは、この大会を通じて各チームのレベルアップにも着実につながっていそうだ。

日体大の優勝に貢献した大内田葉月、齋藤紗葉と杉本姫菜乃の1年生トリオは「初めての公式戦なので最初は緊張したけれど、この経験を生かして太陽生命シリーズで頑張ります」と口を揃えた。

大活躍の1年生トリオと1年生応援団

大活躍の1年生トリオと1年生応援団


例年以上にレベルアップし、激戦の続いたカレッジセブンズ2025は、太陽生命シリーズの例年以上の激戦と盛り上がりを予感させるものだった。

5位決定戦1 アルテミ・スターズ 24-19 合同

合同-西夏穂

合同-西夏穂


アルテミ-金子紅葉

アルテミ-金子紅葉

5位決定戦2 日経大 19-14 久留米大・九産大

日経大-垂門奈々

日経大-垂門奈々


久留米大・九産大-星野瑠奈

久留米大・九産大-星野瑠奈

3位決定戦 追手門学院大 36-22 早大

追手門-津田佳梨

追手門-津田佳梨


早大-尾久土栞

早大-尾久土栞

9位決定戦1 グレース 52-0 NJI

グレース-佐藤椿

グレース-佐藤椿

9位決定戦2 四国大 58-0 NJI

NJI-渡邉稜香

NJI-渡邉稜香

9位決定戦3 グレース 22-19 四国大

グレース-成瀬晴菜

グレース-成瀬晴菜


四国大-大貫愛実

四国大-大貫愛実

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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