本誌で集計した太陽生命シリーズ2025最終戦札幌大会のトライ&得点ランキングは以下の通り。今大会ではコアチームのうち上位8チームによるグランドファイナルと下位4チームがチャレンジャーシリーズ上位4チームと戦う入替戦およびエキシビションマッチが併催された。ここでは両方をまとめたランキングとしたが、入替戦は各チーム2試合、グランドファイナル勢は3試合だったこともあり、ランキングに入替戦勢は入らなかった。なお入替戦&エキシビションマッチの得点王は津田佳梨の13点(1T4C)。杉本七海(アルカス)が12点(2T1C)で続いた。トライ王は2Tで8人が並んだ(片岡詩、矢崎桜子=アルテミ、加藤璃子、小出深冬、杉本七海=アルカス、松田向日葵=追手門、上田芽生=チャレンジ、石垣未夏美=日経大)。
2025/08/18
文●大友信彦
札幌大会トライランキング
1 オリブ・ワザーストン(パールズ)6T
1 チャリティ・ウィリアムス(フェニックス)6T
3 平野優芽(ながと)5T
4 ジャネット・オケロ(ながと)3T
4 ヴィタリナ・ナイコレ(TKM)3T
4 サバナ・ボッドマン(フェニックス)3T
4 三枝千晃(ディアナ)3T
札幌大会得点ランキング
1 オリブ・ワザーストン(パールズ)30=6T
1 チャリティ・ウィリアムス(フェニックス)30=6T
3 プルーニー・キヴィット(ながと)26=2T8C
3 ヨレイン・イェンゴ(TKM)26=2T8C
5 平野優芽(ながと)25=5T
6 永田花菜(ナナイロ)18=2T4C
7 谷山三菜子(日体大)17=1T6C
8 ジャネット・オケロ(ながと)15=3T
8 ヴィタリナ・ナイコレ(TKM)15=3T
8 サバナ・ボッドマン(フェニックス)15=3T
8 三枝千晃(ディアナ)15=3T

タリア・コスタのマークが厳しくなる中で、オリブ・ワザーストンが6トライと役割を果たした
札幌大会(入替戦も含む)におけるドリームセブンを発表!
今大会ではグランドファイナルと入替戦という2つの大会が同じピッチで行われ、今季最多となる16チームの選手がダイワハウスプレミストドームで躍動した。グランドファイナルという性格上、オフィシャルの表彰も年間総合優勝と年間MVPのみだったが、札幌大会での輝きも記憶しておきたい。RugbyJapan365では、札幌大会で輝いた選手たちの中から特に印象に残った7人をドリームセブンとしてお届けする。

グランドファイナルを制して年間優勝に輝いたながとブルーエンジェルス
平野優芽(ながとブルーエンジェルス 25歳)得点25=5T

チャンピオンシップ・トライを決める平野優芽
キャプテンとしてながとブルーエンジェルスを3年連続5度目の優勝に導いた。決勝の延長3分に決めたチャンピオンシップ・トライはもちろん、ナナイロとの準決勝でのハットトリックはみごと。周囲を活かす司令塔役にとどまらず、よりアグレッシブにトライを取りに行く意欲的な姿勢が光った。
「今シーズンは怪我もあって、代表に行かずに長くチームメイトと一緒に過ごしたことで、よりチーム一体で戦えた実感があります」

大会後はオフィシャルの年間MVPとして表彰されたが、今回表彰対象として設定されなかった札幌大会単体のMVPも、あれば文句なしに選ばれていたはず。2015年東京大会に史上最年少(今も破られていない)15歳で受賞して以来まる10年ぶりのMVP受賞。みごとなパフォーマンスだった。サクラセブンズへの復帰も楽しみだ。
オリブ・ワザーストン(パールズ 21歳)得点30=6T

オープニングトライを決めるオリブ・ワザーストン
札幌大会のオープニングマッチ、準々決勝のPTS戦では開始2分に大会オープニングトライを決めるとそのままハットトリックの3T。TKMとの準決勝でも2トライ、ながととの決勝でも1トライをあげ札幌大会トライ王となる6トライをあげた。ハードワークしながら大外のフィニッシャーとしても活躍。タリア・コスタとサラ・ヒリニというビッグネームの陰に隠れがちだが貢献度は高い。落ち着いたプレーぶりをみせるがまだ21歳の若さ。今後はブラックファーンズのキープレイヤーとしてでサクラセブンズに立ちはだかりそうだ。
ヨレイン・イェンゴ(横浜TKM 32歳)得点26=2T8C

準々決勝のフェニックス戦で残り時間0分で同点トライを決めるヨレイン・イェンゴ
フェニックスとの準々決勝は残り0分に同点トライを決めると、左隅からの難しいコンバージョンを低いライナーで決めて劇的逆転勝ち。準々決勝随一の激戦を制すると、ナナイロとの3位決定戦でも1Tのほか4度のコンバージョンをすべて成功。2022年と並びチーム最高位となる総合3位をつかみ取った。個性の強いフランス代表を司令塔としてまとめて東京&パリ五輪を戦ったキャリアはさすが。得点機だけでなくディフェンスでもチームを巧みにコントロールし、コミュニケーションを取り、そして実際のタックル、コンタクトの強さと出色の働きを続けた。

息を整えるヨレイン

角度のある位置からのコンバージョンを決めるヨレイン

ヨレインのゴールが決まりTKMが劇的な逆転勝利
藤崎春菜(ながとブルーエンジェルス 28歳)得点5=1T

藤崎春菜が見せたディアナ戦で見せた95m独走トライ
チームの今大会初戦となったディアナ戦、自陣ゴール前に攻め込まれていた開始2分、トライラインを背にしてパスを受けると果敢にアタック、追いすがる相手DFを見る見るうちに引き離し、札幌大会はもちろん今季の4大会でも最長クラスとなる95m独走で先制トライ。

鮮烈な独走トライでチームを波に乗せた。昨季で引退を決意していたが村杉ディレクターから「史上初の3連覇を目指そう」と説得され引退を撤回。いったん競技を離れたとは思えないパフォーマンスは「1試合1試合、倒れてもいいから全部出し切ってやろうという気持ちで臨みました」結果。来季については「何も決めていません」。4連覇も目指すか?
谷山三菜子(日体大2年 20歳)得点17=1T6C

谷山三菜子
準々決勝はナナイロに敗れたが、5位以下戦ではディアナとフェニックスを相手に連勝。スコアはともに21-19。トライ数は同じながらともに競り勝り、今季最高の5位でシーズンを終えたのは谷山の100%キックのたまもの。ベストキッカー賞受賞も頷けるが、本人は「今シリーズでは4強にひとつも勝てなかった。悔いが残ります」と唇をかんだ。

「去年は先輩の指示で動かしてもらって、今年は自分が中心になってコントロールしていかないといけない。ゲームマネジメントの部分を多く学んで、課題が残るシーズンでした」。ワールドシリーズ・トライオブザイヤーを受賞した期待の若き司令塔が、世界的司令塔たちにもまれて貴重な学びを得たシリーズだった。
松田向日葵(追手門学院大3年 21歳)得点10=2T

松田向日葵
入替戦の相手はチャレンジャーシリーズ1位の日経大。初戦の前半は2トライを先行され、後半も残り2分半まで0-12の劣勢だったがそこからは向日葵の独壇場。

2連続トライで同点に追いつくと、自陣10m線付近のジャッカルでPKを奪い、大逆転トライの起点を作った。入替戦は不本意な舞台だったはずだが、サクラセブンズのプライドと大学単独チームのプライドを遺憾なく発揮した。
大久保芽衣(チャレンジ:立正大3年 21歳)得点5=1T

大久保芽衣
身長176cmは札幌大会のみならず太陽生命シリーズ2025全大会を通じて出場選手中最長身。これまでは身長への注目が先行していたが、今回急造チームのチャレンジチームに参加すると積極的なアタック、スペースへの走り込み、好判断のパスなどトータルスキルの高さと意欲的な姿勢をアピールした。宮城県利府町出身。同じ宮城県から育ったサクラフィフティーン佐藤優奈に続くザ・ハードワーカーLOとして期待だ。

![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |