デコイランナーは本気でパスを捕るつもりで走り込め。
「デコイ」とは「囮(おとり)」の意味だ。囮で走り込むのであっても、本気でパスを取るぞという気迫を発散すればこそ、ディフェンスを釣ることができるというわけだ。ラグビー界で古くから言われる格言のひとつである。
そんな言葉を思い出したのが、4月5日に行われた全国高校選抜女子セブンズでのこのカットだ。
決勝の石見智翠館VS福岡レディース。互いに引き締まったディフェンス合戦で進んでいたファイナルの均衡が崩れたのは前半6分だった。ハーフウェー付近の石見ボールスクラムから、SH杉江朋香がボールを持ち出し、主将のSO青木蘭へ。青木は思いきって右にラインを引っ張るように走り、縦に走り込んだCTB岩本美穂とダミーシザース。
青木をマークしていた福岡5番古田真菜がデコイの岩本に釣られて足を止めたところをSO青木はスルー。外をマークしていた福岡ディフェンス6番須藤ちひろが、抜けてきた青木にマークを移した瞬間、青木は大外からスピードに乗って縦に走り込んだWTB阪本結花にパス。阪本はマークしていた福岡7番堤ほの花の逆をついて突破。そのまま福岡カバーディフェンスを振り切り、ゴールポスト真下にトライを決めた。
感動的なのは、石見SO青木蘭とクロスするようにデコイに走り込むCTB岩本美穂のこの表情!
どう見ても本気でパスを捕りに来ている。この勢いで走り込まれたら、ディフェンスはどうしたって釣られざるをえない(実際、もしもこれをスルーしたら、アタックの青木は実際にパスしていたかもしれないのだ)。