東京山九フェニックス、10sも強い! 香港10sを前にNZの名門クラブにトライラッシュで2試合完勝! | ラグビージャパン365

東京山九フェニックス、10sも強い! 香港10sを前にNZの名門クラブにトライラッシュで2試合完勝!

2023/03/18

文●大友信彦


3月16日(木)、横浜市のYC&ACグラウンドで「フェニックスカップ10s 東京山九フェニックス対グラマーテックRFC」が行われた。

東京山九フェニックスは、2022年度は7人制では太陽生命ウィメンズセブンズシリーズで静岡、弘前の2大会で優勝し、初の年間総合優勝を達成。15人制の全国女子選手権でも決勝で日体大に劇的な逆転勝ちを飾り、単独チームとして初優勝(2016年度にTKM、アルカスとの合同チーム「TPA」で優勝あり)、そしてクラブチームとしては初めての2冠を達成した(過去の2冠達成チームは日体大のみ)。



2024年は両部門で連覇を目指すことになるが、それに先立ちチャレンジする場となるのが、3月29-30日に行われる10人制の国際大会「香港テンズ」。東京山九フェニックスは単独チームとしてこの大会に初参戦するのだ。

3月16日の「フェニックスカップ10s」は、その大会に向けた恰好のウォームアップゲームとなった。



相手のグラマーテックRFCは、NZオークランドで1873年に創設された名門クラブで、これまで多くのニュージーランド代表選手を輩出。女子チーム「Lionesses」は2018年に創設された。今回は、グラマーテックの日本ツアー第1戦。フェニックスは、四宮洋平GM兼監督が現役時代にNZで(も)プレーしていたこと、オークランド協会とパートナーシップ協定を結んだことなどからこれまで多くのコーチ交流、選手交流を行ってきたこともあり、試合が実現。当日は横浜のYC&ACを会場に、10sの10分ハーフの試合を2試合行ったほか、タッチラグビーチームとフェニックスのアトラクションゲームも実施。ビギナーを含むファンチームが日本代表を多数含むフェニックスのトップ選手と対戦し、みごとなトライも多数あげた。

試合は、体格で上回るグラマーテックに対し、フェニックスが果敢なタックルで応戦する展開で始まった。まったくのプライベート大会で、正式なメンバーリストや時間・得点などの記録、身長体重などのデータはなかったが、見た印象ではグラマーテックのFWには体重120kgオーバーの超大型選手が3-4人。BKも100kg級の選手がズラリと並んでいた。

「BKの選手が、日本のFWで一番大きな選手と同じかもっと大きいくらい」という古田真菜のコメントには実感がこもっていた。

試合は序盤は拮抗した時間が続いたが、フェニックスはSO中西絢乃の突破から岡元涼葉が先制トライ。

中西絢乃


グラマーテックも大型選手の波状攻撃で力強くゲインするが、フェニックスの選手は低いタックル、ダブルタックルで応戦。



自陣深くに攻め込まれてもしつこいディフェンスで相手ノックオンを誘って反撃。古田のキックで相手陣に攻め返すと、さらに倉持美知、ニア・トリバーがトライを重ね、1stハーフは17-0。

倉持美知

倉持美知


大黒田裕芽のコンバージョン

大黒田裕芽のコンバージョン


ニア・トリバーのトライ

ニア・トリバーのトライ




3分のインターバルを挟んで再開された後半は、インパクトで投入された鹿尾みなみがキレのいいランで魅了する。

相手スクラムからのアタック、相手の大型BKから岡元と中西のダブルタックルでボールを奪うと、素早いカウンターアタックで鹿尾が右中間へ1本目。

高橋・中西のダブルタックル

高橋・中西のダブルタックル


鹿尾みなみ

鹿尾みなみ


黒川碧のコンバージョン

黒川碧のコンバージョン


さらにスクラムで相手ボールを奪い(体格で下回るもコンパクトに固まったフェニックスのスクラムは強かった!)


すぐサイドに持ち出したSH中島涼香からパスを受け鹿尾が左隅へと連続トライ。
2ndハーフはフェニックスの12-0。これにより第1試合は29-0でフェニックスの勝利となった。

鹿尾みなみのトライ

鹿尾みなみのトライ


約40分のインタバルは、タッチラグビーチームとのエキシビションマッチ。サクラセブンズから合流中の原わか花、大竹風美子、水谷咲良、サクラフィフティーンの鈴木実沙紀らも汗を流した。




そして再び行われた第2試合は、フィットネスに優るフェニックスが序盤から攻勢に出た。

グラマーテックの攻撃を小鍛治歩のタックルでターンオーバーするとFBの位置から大黒田がカウンターアタック。パスを受けた古田真菜が約50mを独走して先制トライ。


大黒田裕芽のカウンター

大黒田裕芽のカウンター


高橋李実

高橋李実


黒川がゴールを決めると、再びニアが右サイドを豪快に走り抜けてトライ。さらに自陣でのディフェンスで相手ボールを奪うと、倉持のサイド突破から鹿尾につないで独走トライ。19-0で「3本目」を終了。

自陣でターンオーバー

自陣でターンオーバー


鹿尾みなみ

鹿尾みなみ



岡元涼葉

岡元涼葉



そして迎えた最後の10分間は、フィットネスに優る(そして選手層が厚い)フェニックスの独壇場となった。フェニックスがタックルでボールを奪い速攻に出ると、グラマーテックのタックルはもう届かない。大黒田、高橋李実、ニア(5人抜きのスーパートライ!)、岡元、岡元、ニアと10分間で6トライをたたみかけ、黒川、大黒田、高橋がすべてのコンバージョンを成功。

「4本目」は42-0と圧倒し、「第2試合」は61-0の大勝。

2試合合計でトライ数14-0、90-0とフェニックスが圧勝してこの日の2試合は終わった。

ニア・トリバーのトライ

ニア・トリバーのトライ



高橋李実

高橋李実


試合の印象は、7人制よりも15人制に近かった。

「10人制の試合は初めてでした」と笑った大黒田も「やってる感覚はほとんど15人制でしたね」

ラグビーでは「7人制と15人制は別の競技」と呼ばれるほど競技特性に違いがあるが、女子では男子ほどの違いはない。瞬発力、筋力が男子ほど強くなく、一度のゲインで走りきれるケースが少ないためだ。そもそもその特性があるだけに、10人制は大黒田が言ったように「ほとんど15人制」という展開。15人制よりも攻撃スペースは広いが、7人制ほど広くはないので、セブンズでは活躍の機会のすくないフロントローの選手もアタックだけでなくディフェンスでも十分に機能していた(もちろん小鍛治、髙木恵、小坂海歩らフェニックスのフロントロー陣の能力の高さゆえだが)。

男子ではワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督が11人制を提唱し、リーグワンの各チームのトレーニングマッチで採用している。男子の場合は10人制だと7人制に近いゲーム展開になりがちで、ひとり増やす11人にすることでようやく中間的になる印象を受けた(FWに6人目が入ることで、スクラムが3列構造になる。ラインアウトも、複数のジャンパーを用意して仕掛けあう…など)。だがこの試合を見る限り、女子の場合は10人制で十分中間的だと感じた。

7人制と15人制、それぞれが主戦場の選手がともに試合することができること、人数が少ないチームの選手、とりわけFW、フロントローの選手が実戦を経験できることなど、女子の大会には10人制を組み込んでいくことが有効だと思う。



ただ、この日の試合ではラインアウトは少なかった。PKを得ればグラマーテックはラインアウトよりもスクラムを選択し、フェニックスは速攻を仕掛けるため、意図的にラインアウトの機会を作ることは双方ともになかったのだ。これはこの試合に限ったことかもしれない。

試合終了後は、両チームの選手が一緒にハドルを組み、それぞれのコーチ、キャプテンからフラッシュコメントを言い合い、エールを贈りあい、さらにクラブハウスでアフターマッチファンクションを実施。







互いにキャプテンがスピーチし、互いに相手チームのプレーヤーオブザマッチを選んでプレゼントを贈りあい(フェニックスは司令塔の大黒田、豪快トライを連発したニアが受賞した)、さらに歌やダンスのパフォーマンス合戦も。

大黒田裕芽

大黒田裕芽



コロナ以降、アフターマッチファンクションはどのグレードでも行われなくなっているが、やはり試合後の選手の交流はラグビーの魅力だなと改めて思った。




そして、フェニックスの香港テンズでの活躍を期待したい!
香港テンズは3月29-30日、香港FCで開催される。詳しい情報は下記HPからどうぞ。
https://hkfc10s.com/

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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