ヒーローズカップ 第15回記念大会会見・実行委員長大野均さん&VC中村亮土さんが語る小学生スポーツの価値 | ラグビージャパン365

ヒーローズカップ 第15回記念大会会見・実行委員長大野均さん&VC中村亮土さんが語る小学生スポーツの価値

2022/08/05

文●大友信彦


8月4日、「第15回ヒーローズカップ」の開催要項発表会見が都内で行われ、深尾敦コミッショナー、中村亮土バイスコミッショナー(VC)、大野均実行委員長が出席した。

この大会は、元日本代表LO林敏之さんが立ち上げたNPO法人ヒーローズが主催する小学生ラグビー大会。2009年に近畿圏4会場の予選会に32チームが参加、神戸製鋼灘浜グラウンドで決勝大会を行って始まり、そこから年々規模が拡大。やがて全国からチームが参加するようになり、第10回大会からはスポーツ庁が後援、第11回大会からは神奈川県・横浜市が共催となり決勝大会を日産スタジアムで開催するようになった。

全国7ブロックの予選も含め、昨年は290スクールが参加した。大会のバイスコミッショナーには中村亮土選手のほか昨年から山田章仁選手も務め、副実行委員長には元日本代表主将の菊谷崇さん(日大HC)も名を連ねている。

今回は第15回記念大会ということで決勝大会の出場チームを例年の16から24に拡大。日産スタジアムが改修時期に入っているため、決勝(2023年1月29/30日)は日産フィールド小机/しんよこフットボールパークで行われる。

子どもたちが参加する喜びを最も感じられる大会へ」

大会はコロナ禍に見舞われながらも年々規模を拡大している。一方で、近年はジュニア年代のトーナメント大会、日本一を決める大会が勝利至上主義を招くことへの是非が論じられている。この点について聞かれた深尾コミッショナーは答えた。


「トーナメント方式がベストとは思っていません。どう運営するのがよいかということは私個人ではなくヒーローズ一同みなが考えていることです。我々の考え方は、子どもたちが参加する喜びを最も感じられる大会にしたいということ、目的は日本一を決めることではなく、日本一を目標にしていただく大会と考えています。いろいろなご意見があるのは承知していますが、お子さんがラグビーに取り組む中で、トーナメント方式で行う大会に全国約400のスクールから約300のスクールが参加して下さっていることは、ひとつの判断基準になると考えています。ただ、この大会がこの形で続くかどうかはラグビースクールの指導者のみなさんとお話を続けながら考えていきたい。その際は、この大会に出場されていないチーム、トーナメント方式の大会に反対されているチームの指導者の方の意見も聞きながら進めていきたい」




実行委員長を務める大野均氏

実行委員長を務める大野均氏


昨年から実行委員長を務める元日本代表の大野均さんは「この大会は小学生ラガーの出会いの場だと思っています。ライバルとの出会い、チームメートの新たな一面の発見、負ける悔しさとの出会いなど」ですといい、前回の第14回大会でも実行委員長として決勝大会だけでなく全国の予選も見てきた感想を話した。
「トーナメントで負けたチームの選手が、涙を流しながら、それでも勝ち進んだチームにエールを贈る姿を見ていて、トーナメントで負けたからこそ成長していけることがあるな、こういう大会だから経験できる感情が人を成長させる面があるなと感じました」

大会のバイスコミッショナーとして出席した中村亮土さんも「自分が現役でプレーしているからなおさら身にしみて分かるのですが」と前置きして話した。

「結果よりも、そこに至るまでの過程、仲間と一緒に練習して、いろんな感情を味わいながら人間として成長していくのだと思う。いろんな感情を出しながら、仲間といっしょにそれを乗り越えていく大会になるといいと思います」

小学生時代のスポーツ経験は、日本代表になった選手たちにとってどんな価値があったのだろう。その質問に、大野さんはこう答えた。

「私は小学校から高校まで野球をやっていたのですが、中学でも高校でもレギュラーになれなくて、いつもベンチで試合を見ていました。そんな中でも野球は好きだったし、試合に出られない悔しさは今も覚えています。ラグビーを始めてレギュラーになって、逆の立場になっても、試合に出られないメンバーが練習相手になって自分たちを支えてくれること、試合に出る以上は彼らのために恥ずかしい試合はできない、そういう思いに繋がっています」

「少年時代に感情をむき出しにした経験が、自分の成長を導いた」

中村亮土バイスコミッショナー

中村亮土バイスコミッショナー


中村さんの答えも興味深かった。

「僕は幼稚園から中学校までサッカーをしていたのですが、キックの面でラグビーには生きていると思います。あと、僕はサッカーをしていた頃はミスをしたチームメートを責めたり、幼稚なところがあったのですが、高校からラグビーを始めて、変わりました。自分自身にフォーカスするようになりました。誰かに言われたのではなく、自分自身で『これじゃダメだ、変わろう』と考えた記憶があります」

少年時代に感情をむき出しにした経験が、自分の成長を導いた。失敗しないことだけが正しい道ではないこと、恥ずかしい経験や失敗、振る舞いも成長させる糧になることを、先輩たちの言葉は示していた。

また、小学生の大会ならではの面白さ、楽しさもある。大野さんは昨年、各地方の大会を視察したが「秋田のチームに、安藤泰洋の娘がいたんです。すごかった。アタックでもディフェンスでもエースでしたよ」
安藤泰洋さんは元日本代表で、秋田工―関東学院大からトヨタ自動車、サンウルブズでもプレーし、34歳のいまも清水建設江東ブルーシャークスで活躍しているFLだ。

小学生のラグビースクールではほとんど、男女が一緒にプレーする。中学生になると男子の筋骨の成長が加速し、一緒にプレーするのは難しくなるが、小学校5-6年は女子の成長が早く、運動能力でも男子顔負けのパフォーマンスを見せる女子も珍しくない。現在サクラセブンズやサクラフィフティーンで活躍する日本女子のトップ選手にも、男子と一緒のチームで大活躍した過去を持つ選手はたくさんいる。タグラグビーでもだが、活発な女子選手が男子選手にテキパキと指示をするなんて場面もよく目にする。大柄な女子選手がハードワークをして小柄でも俊敏な男子選手のプレーを支える場面も。男子選手と女子選手が一緒にプレーすることで、自分にないプレーを学び合えるのも小学生グレードの面白さだ。


「これこそラグビーの多様性ですよね」と大野さん。
「ラグビーはポジションによってやることが違う。いろんなタイプの人が活躍できる、多様性のスポーツです」
中村さんも同じ意見だった。
「ラグビーって全部(の動きが)あるじゃないですか。走るし当たるし投げるしキックもある。誰だってどこかで活躍できるし、逆に言うと、ラグビーを経験することで、いろいろなスポーツに応用できる動きもまんべんなく経験できると思う」

ヒーローズカップからは、未来の男女、15人制と7人制のラグビー日本代表だけではなく、もしかしたら他のスポーツで活躍するヒーロー&ヒロインも生まれていくかもしれない――2人のレジェンドの言葉から、そんな妄想も頭をよぎった。

第15回ヒーローズカップ、各地区大会の日程は以下の通り。
北海道大会
2022年10月22-23日 月寒屋外競技場(北海道)
東北大会
2022年11月12-13日 一関サッカー・ラグビー場(岩手県)
関東大会(1st Stage)
2022年11月3,5日 S&Dフィールド福生(東京都)
2022年11月13日 新砂運動場(東京都)
2022年11月23日 相模原ギオンフィールド(神奈川県)
2022年11月27日 熊谷スポーツ文化公園西第1多目的広場(埼玉県)

関東大会(2nd Stage)
2022年12月18日 相模原ギオンフィールド(神奈川県)
東海北陸大会(1st Stage)
2022年11月5-6日 まん真ん中広場多目的広場(岐阜県)
東海北陸大会(2nd Stage)
2022年12月4日 まん真ん中広場多目的広場(岐阜県)
近畿地区大会
2022年11月12-13日 たまゆら陸上競技場(枚方陸上競技場・大阪府)
関西大会
2022年12月10日 たまゆら陸上競技場(枚方陸上競技場・大阪府)
中国地区大会
2022年11月7日 ツネイシフィールド(広島県)
中四国大会
2022年12月18日 愛媛県総合運動公園球技場
決勝大会
2023年1月29-30日 小机フィールド・しんよこフットボールパーク(神奈川県)


また、より交流性に重きを置いた「ヒーローズフレンドシップラグビーフェスティバル(通称:ラグフェス@菅平)を、9月23-25日に長野県菅平で開催。約30のラグビースクールから約1000人が参加する予定という。2019年のワールドカップ以降、日本で競技人口が増えているのは小学生だけ。その子どもたちがラグビーを楽しむ機会をより増やしたい」と深尾コミッショナーは話した。

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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