2017年3月4日。シンガポールで行われたキングズ戦に、サンウルブズは23対37で敗れた。
高温多湿の熱帯都市。日本までの長距離移動による南アフリカ勢の負担を減らすことを(あわせてアジアにおけるラグビーの普及発展を)目的に設定されたサンウルブズのセカンドホームは、暑すぎず寒すぎない快適な気候に慣れた南ア勢にとって鬼門だった。昨年はチーターズが1点差、ブルズが3点差でサンウルブズに辛勝し、ストーマーズは17対17の引き分けに持ち込むのがやっとだった。
そして迎えた2年目、サンウルブズが準ホーム初戦で迎えるキングズは、勝利を奪うべき格好の相手に見えた。昨季は最下位の18位だったサンウルブズに対しキングズは17位。相手のホーム、アフリカ大陸最南端(つまり北半球でいえば最北端だ)のポートエリザベスまで乗り込んで臨んだ初対戦では、長距離移動を強いられたサンウルブズが5点差に肉薄した。
勝利を望める外的要因は揃っていた。そして2017年のスーパーラグビーは始まったばかり。ひとつの勝利はすべてを変える力を持つ。
「まずここでひとつ勝つことで去年の成績(1勝)に並んで、それから新しい歴史を作る」
キングズ戦前日の練習を終えて、田中史朗はそう言った。
だが、その誓いは果たせなかった。