トライを決めると、敵味方関係なく、ピッチにいる全員が祝福に駆け寄った。
試合が終わると、愛する家族から花束を贈られ、オールスター試合を戦った両チームの選手から胴上げされ、そのあとはモスグリーンのジャージーに着替えて(着替えさせられて?)、駆けつけたトヨタ自動車の仲間の腕で、いつもつけていた背番号と同じ14回、宙を舞った。
世界のステージで勝負し、認められたフィニッシャー
そのさまは、誰が見ても、引退セレモニーそのものだった。
だが、遠藤幸佑は言うのだ。
「今日は僕の復帰戦だったんです」
そして、笑顔でこう付け加えた。
「今日、こうしてプレーできたことで、自信になりました」
北海道東部、中標津町の生家は牛馬を育てる、その名も「遠藤牧場」
朝早くから牧場を手伝い、搾りたての牛乳を飲み、寒風吹きすさぶ原野で育まれた186センチ90キロの雄大な体躯。
地響きをたてて芝の上を疾走するフィニッシャーは、中標津高3年のとき、No8で花園出場を果たし、高校卒業を待たずに7人制日本選抜入り。