東芝府中バック・スリー『超高速ラグビーへの挑戦』」(全4回)第1話 | ラグビージャパン365

東芝府中バック・スリー『超高速ラグビーへの挑戦』」(全4回)第1話

2013/01/13

文●永田洋光


 

昨シーズン(1996年度)
『超高速アタッキング・ラグビー』を標榜して
9年ぶりに栄冠を掴みとった東芝府中。
連覇を狙う今シーズン、彼らの目指すものを最も分かりやすい形で
具現化しているのが、左右のWTBとFB――バック・スリーだ。
最後部カウンターを狙う松田努は、ジャパンでもFBで活躍。
その松田が怪我をしている間に、後を襲った和田賢一は
チームではブラインド・サイドのWTB。そして逆のサイドには
森田栄一郎がボールを待ち構えている。
彼らのプレーを見つめながら牙を研ぐのは秋山公二。
激しいポジション争いが、緊張感を生み出している。
長年の桎梏(しっこく)を越えて、高いレベルのラグビーを志すチームの中で
スピードスターたちが担っているものとは。


 

重苦しい曇天へ、青のジャージーに身を包んだ男たちがこぶしを突き上げた。1月4日、東大阪市の花園ラグビー場。雨をたっぷりと吸い込んだ荒れ芝の上で繰り広げられた第50回全国社会人大会準決勝は、東芝府中が三洋電機の厳しい防御に苦しみながらも29-12で下し、2年連続7回目の決勝進出を決めた。

「久しぶりに昔の東芝みたいなラグビーをみましたね」監督の向井昭吾が、少々照れ臭そうにつぶやいた。“超高速アタッキング・ラグビー”を標榜するチームにしては、コンディションの悪さを差し引いても、あまりにも内容がFW戦に固執し過ぎていたのである。

それはまるで、時計の針が10年ほど逆に回ったような印象さえ与えた試合ぶりだった。

ちょうど10年前の1987年度。東芝府中はこの花園ラグビー場で行われた第40回大会1回戦で、優勝候補の神戸製鋼に16-15と逆転勝ちを収めて勢いに乗り、そのまま初の全国制覇を成し遂げた。しかし、FW中心の手堅いラグビーで優勝したチームは、続く日本選手権で不慣れな展開ラグビーに挑んで学生王者の早稲田大学に敗れる失態を演じてしまう。以来、この日本選手権がトラウマとなったかのように、東芝府中はハイパントとFWのスクラム、モールでのゴリ押しを繰り返す手堅いラグビーを追求し続けた。

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