12月19日、東大阪・花園ラグビー場では、第57回全国大学ラグビー選手権大会の準々決勝2試合が行われた。第1試合は、東海大(関東大学リーグ戦1位)と帝京大(関東大学対抗戦4位)が激突した。
東海大は部内のクラスター発生でリーグ戦の最終戦を辞退。帝京大も3回戦の同志社大学がクラスター発生により不戦勝となり、公式戦としてはともにブランクがあった中での対戦となった。
当然メンタル的にもフィジカル的にも厳しい状況であったが、80分、これまで準備してきた自分たちのラグビーを出し切る素晴らしい戦いとなった。
HIGHLIGHT
前半5分に東海大SO武藤ゆらぎ(1年)の突破に対し、帝京が反則。WTB林隆広(3年)がPGを決め、東海大が先制。その後は試合は互いに決め手を欠いてスコアレスな状況が続く。
前半34分、帝京大が相手陣内ゴール前で東海大ボールスクラムでプレッシャーをかけ、ターンオーバー。インゴールに攻め込むもグラウディングできず再びゴール前スクラムとなる。2度目のスクラムも帝京大にFKが与えられる。さらに3度目、帝京大がペナルティートライで7-3と逆転に成功し、前半を終えた。
後半12分、帝京は敵陣10m付近右サイドからのアタック。相手のタッチキックに対してWTB木村朋也(4年)がクイックイン。大きく左へ展開。WTB尾﨑泰雅(4年)がタッチライン際のギリギリの部分で残してCTBニコラス・マクカラン(4年)につなぐ。帝京に攻撃のリズムが出始める。
SO高本幹也(2年)がタックルを受けながら、レッグドライブでゴールまで数m。SH土永雷(4年)が素早く順目に展開。ケガから復帰したPR細木康太郎(3年)が、東海大キャプテンNo8吉田大亮(4年)をハンドオフし、右に流れながらディフェンスを引き付けオフロードパス。ボールを受けたWTB木村がそのままインゴールへボールを運びトライ。コンバージョンも決まって14-3と帝京がリードを広げた。
追いかける東海は中々自陣から脱出できない時間帯が続いたが、ようやく25分、ゴール前ラインアウトからモールで押し込み、最後はPR土一海人(3年)がトライ。8-14とする。残り時間は10分を切り、互いに疲れが見えるが意地と意地のぶつかり合いとなる。
30分、東海大はハーフウェイ付近ラインアウトからモールで22m付近まで前進。一気に敵陣へ入るもモールアンプレヤブルでチャンスを活かせず。さらに32分、相手ボールラインアウトからボールを奪うが、アタックでパスを受けた選手が両足がつりノックオン。まさに死闘となる。帝京はこの時間帯、東海大を自陣に貼り付けし逆転を許さない。
東海大もなんとか敵陣に攻め込むべく、攻撃を繰り出すも脱出することができず試合終了。14-8で帝京大が勝利し、2年ぶりの準決勝進出を決めた。
東海大学 木村季由監督
今日はほんとうに、大学選手権の初戦になるので、リーグ戦の中で培ってきたものを今日の試合にすべて出し切る思いの中で、全員一つになって臨みました。帝京大さんの強みであるフィジカルも含めたそういった圧を我々としてはしっかりとディフェンスをしてゲームを作ろうとしました。80分間の中で我々の思いを切らすことなくプレーすることができましたけれども、ちょっとしたところでミスが起きたりしました。そのうえで、今日のゲームに特別な思いもありましたので、最後まで勇敢に戦ってくれた学生たちを本当に誇りに思いますし、負けはしましたが、私にとっては大切な試合になりました。
最後になるので、悔しいところではありますけど、ラストゲームになりますがそれにふさわしいゲームができたと思います。
――リーグ戦 いつからチームは再開したのか?
全体の練習が再開したのは、12月12日になります。ちょうど一週間前になります。ウィルス感染という中で、自分たちだけでは対処ができない。日常生活でも気をつけている中でも感染が発生してしまいました。本当に迅速に、医学部の方や関係部署の方々が対応してくれてここにいたります。準備は一週間あったので、試合に望むことができました。
それは言い訳にすることなく、学生たちとも今できる最大限のことをやろうと話をしていました。こうやって今日を迎えられたことがすべてかなと思います。
――なにか特別なことはやりましたか?
まずは学生の安全を確かめた上で、コンディションを考えて、少しでもいい状態で試合に望めるようにすることを一番心がけてきました。
東海大学 吉田大亮キャプテン
大学選手権開催にむけてご尽力いただきました皆様に感謝申し上げたい。東海大学は今まで多くの方々に支えられて、東海大学病院の皆様はじめ本当に多くの方のおかげて今の自分たちがいると思います。結果として負けてしまいましたが、何か一つでも伝えることができればと思いますし、自分たちがやってきたことは間違っていなかったんだということは胸を張っていうことができます。
コロナウィルスにより苦しんでいる方もいらっしゃると思います。自分たちはなんとか乗り越えてこうして元気にラグビーをすることができています。自分たちの姿を見て少しの方でもよいので、希望であったり、勇気をもっていただければ嬉しいです。僕がこの4年間でベストゲームだと思います。
――活動できなかった期間、活動できた期間やってきたこと
一年間積み重ねてきたことは本当に大きなもので、活動できない一週間、二週間という期間で失うものではないです。焦りというものは全くなくて、やってきたことの質を上げていこうとしました。やってきたことを信じて、自分たちの強みを出すまでにもっていくにはどうしたらよいかというところにフォーカスして試合に臨みました。
東海大学 HO山田生真
――前半スクラム苦しかった場面もありましたが、後半立て直したと思います。
帝京大学のシンプルに重さ、スクラムを組む重さ、パワフルで。勝負しなかったわけではないですが、3番の細木選手が調子のいいスクラムを組んでいて、自分たちがそこに対して、後手ではないですが、改善するのに時間がかかってしまった。後半は、まっすぐ組んで、フィットで勝ってそこから押すという部分にフォーカスしたら、最後相手の足に疲労がでてきたとき自分たちのスクラムを組むことができました。
帝京大学 岩出雅之監督
我々も、東海大もブランクが空いての試合でした。いろんな意味で、感謝しながら今日の試合に臨みました。同志社さん、東海大さんも大変な状況だったと思います。その中でゲームができたこと、そして勝利したこと、よりゲームに頑張らないといけないなと思いました。
ゲームについては前半・後半ともに、粘り強い良さもありましたが、まだまだ甘いミスもありました。一進一退のゲームでしたが、学生なりに一生懸命タックルに行っていたと思いますし、少ないチャンスをしっかりとスコアにつなげていって勝利することができました。
昨年ベスト4いけませんでしたが2年ぶりにベスト4行けるので、もっと成長していきたいと思います。
――後半35分、どんなことを意識して
ボール手放すようなプレーをしないように。しっかりボール継続のプレーを選択してほしいという指示をしました。だいぶ足に来ていたので、そういうプレー選択したと思うのですが。
――そこで勝ち切れたというのはどう評価しますか。
(3回戦が不戦勝で)ゲーム感という部分もありますし、今年コロナ禍という大変な状況の中で、実際に発生したチームもありますし、東海大さんもそうですし、我々も緊張感をもって試合を迎えていました。出場できない、コンディションが万全ではない、そういう中でのクロスゲームということで、ゲーム内容だけでなく、様々な状況の中で学生自身の一生懸命さを讃えたいなと思います。同志社大学さんや東海大学さんの思いも出していきたい。
帝京大学 奥村翔バイスキャプテン
80分間通して緊迫したいいゲームだったと思います。まずは勝ててホッとしています。一戦一戦、負けたら終わりの試合であり、最後まで粘り強く勝てたのは本当に意味のある試合でした。
――12月6日は我慢しきって勝ち切れた要因
この試合までにしっかり準備してきたタックル、ペナルティーをしない、それを貫くことができたのが勝因かなと思います。
――同志社が辞退して感じる部分があったと思います。どういう気持でこの試合に臨んだか。
同志社大学さんの分もしっかり背負って試合をしようと臨みました。
大学選手権・準々決勝 2020.12.19 花園ラグビー場 11:35