4月6日、熊谷スポーツ文化公園では第20回全国高校選抜ラグビーフットボール大会準決勝2試合が行われた。1試合目は、奈良県同士の対戦となった。御所実業と天理が激突し22-21で御所実業が勝利し決勝進出。第2試合は昨年の覇者桐蔭学園(神奈川)が、後半ロスタイムに劇的な逆転トライで21-20で関西王者の京都成章(京都)に勝利し決勝進出を果たした。
前半5分、京都成章FL延原秀飛(3年)のトライで先制すると14分に桐蔭学園もSH亀井健人(3年)のトライで同点とする。
その直後18分、京都成章が敵陣ゴール前の攻防でラックサイドからSH宮尾昌典(2年)が自らスペースを走り抜けトライ。14-7。
さらに23分、京都成章は敵陣15m付近でペナルティーをもらうとショットを選択。SO辻野隼大(2年)が落ち着いてきめ3点を追加。17-7とリードして後半を迎える。
後半5分、リードしていた京都成章は敵陣20m付近でペナルティーをもらうとショットを選択。確実に3点を追加し桐蔭を追い詰める。桐蔭学園は後半15分、外に向かうディフェンスラインに対し、ループパスでディフェンスを打ち破るとWTB秋濱悠太(2年)がトライ。CTB桑田敬士郎(3年)のコンバージョンも決まって14-20とする。
後半22分、京都成章は敵陣ゴール前でペナルティーを獲得。ベンチから「ショット」の声がかかるも選手たちはトライを狙いにいく。しかし、ここはラインアウトからのスローが乱れなんとかボールをキャッチするも、密集ですぐさまターンオーバーを喫してしまう。
桐蔭学園はボールを奪うと自陣からフェイズを重ねハーフウェイまでエリアを戻す。ハーフウェイ付近で桐蔭学園がペナルティーをもらうと、タップキックでクイックリスタート。すると26分、No8佐藤がゲイン。ゴール前まで前進。左サイドに大きなスペースができ、すぐさま展開。完全に人数で余るとFB天羽までつなぎトライかと思われたが、HO平石のパスがスローフォワードの判定。
得点差は6のままで後半ロスタイムとなる。33分、敵陣でのマイボールスクラムでアタックに入る桐蔭学園。SO伊藤が裏のスペースへタップキック。
インゴールへ転がるボール。FL久松春陽大(3年)がグラウディングしトライ。19-20。ゴール正面のコンバージョンを桑田が落ち着いて決め逆転。そしてノーサイド。
21-20で桐蔭学園が劇的な逆転勝利で決勝進出を決め、三連覇にあと1勝とした。
「後半10分くらいしかラグビーしていない。スコアだけ上回った」桐蔭学園 藤原秀之監督
ペース的に前に出られなかったし、唯一、最初のスコアだけ。後は止められていた。ゲインできなかった。パスプレーでやろうとしたがプレッシャーきつくて動かせなかった。前半終わって17-7だったので、(後半)ポゼッション取れればワンチャンスあるかなと思っていました。ラインアウトモール、縦に入ってくるプレーが多くなるかなと思ったので、ブレイクダウンにプレッシャー掛けようと思った。全部3つ、4つなのかな、取れたボールがトライにつながっていないので、流れは来ないと思っていた。
ひとつは崩せした(トライが取れた)し、右側のスローフォワード(でトライが取れなかった)のところ、あそこ決めないといけなかったですね。うちは後半10分くらいしかラグビーしていない。フィットネス上がってこないなかで勝ちを拾ったようなゲーム。今日は成章さんのゲームだったと思います。最後はスコアだけ上回った。
最後はなにやるのかなと見ていたら、(SO伊藤は)FBが上がったのを見ていたんでしょう、自信があったんでしょうね。(伊藤は)1本ミスしたところもあったので、決めようという気持ちが強かったんでしょうね。相手のラインアウトで、足立がはたいたのが大きかった。あとはモール止めたところ。17-7のところでショットの方がうちは楽だったかもしれない。ラインアウトやセットスクラムの方が嫌だった。相手のプランもあった。京都成章は近畿チャンピオンというチームでした。
(決勝は御所実業ですが)勝ったことがないですね。花園も選抜も勝っていない。花園では2回負けましたね。3年前は選抜(の予選リーグ)で引き分けでしたね。(御所実業は)モールも強い、自分たち一番苦手な部分。ディフェンスも強い。(3連覇は)あまりイメージしていなかった。負けたと思った。(ブレイクダウンでの)ターンオーバーが2回起きて、不思議なゲームだと思った。やっぱり春ですね、秋はないですね。
「SOが怪我で途中交代してしまったのが痛かった」京都成章 湯浅泰正監督
三連覇阻止をしたかったんですが、残念です。勝負なんで。先発のメンバー15人だけでなくて、他のメンバーも成長してくれたので本当に有効な時間だったと思います。(前半からPGを選択して勝負にこだわっていたことについて)そうですね。競った展開になることは想定していましたので。(本当は9点差にしたかった?)僕はね。でも子どもたちが、こちらの声を聞いた上で、いくとなったので、(2015年ワールドカップの日本代表対)南アフリカ戦のようになるかな、と話をしていました。監督の指示を無視して、それも彼らの選択ですから。全て成長につながる、いい経験をしてくれたと思います。勝って「あそこはな」と言いたかったですけれど。
さすがですね。あそこで蹴ることができるのは。予測はしていましたけど、まさか本当に蹴るとは思いませんでした。自信もあったんでしょう。10番(辻野・2年)が怪我して途中交代してしまったのが、下級生ですがチームをまとめていたので、うちとしては痛かったですね。
(ディフェンスについて)スイッチ入ったんじゃないですか。
(ブレイクダウンのジャッカルが多く見られました)あそこはよく練習していました。精密機械のようなアタックを止めることができないですから。次はもう少し外側もバチッと止められるように仕上げてきます。
奈良県勢同士の対戦「これが、奈良県決勝の戦い」
第1試合は奈良県勢チームの対戦。勝負を決めたのは後半12分。4点差と迫った御所実業。直後の天理キックオフボールがワンバウンドして御所実業側に入る。ラックサイドに天理側が集まってしまいディフェンスラインの準備が遅れた。ラックサイドからこぼれたボールを御所実業PR島田彪雅が持つと、FB石岡玲英へパス。石岡が自陣22m付近からディフェンスを破ると一気にゴールラインへ。快足を飛ばしそのままインゴールへ。22-21。結局、その1点を守りきった御所実業が決勝進出を果たした。
御所実業 竹田寛行監督
これが奈良県の決勝です。お互いにエラーばっかりです。この時期に緊張したゲームができてお互いに成長できると思います。ライバルなので奈良県の予選はどっちが制するかわかりません。
(昨年度の花園予選に天理に負けたというリベンジとなりましたが)言わなくてもそうなります。選抜のテーマは近畿大会で仰星に負けたので、仰星まで負けんとこというのが目標で、それを達成して、こういうチャレンジできたことは成長できるかなと思います。
天理は体が小さいですが走りきれるスタミナ持っている。あれもこれもできないので(ブレイクダウンに)しぼってやってきた。(後半のボールを展開するラグビーは)自分がやろうとするラグビーがそれに近いので、後半はひねって力出せるようなチームにしていかないといけない。どんな相手にも力を出していけるのが自分たちのチーム。半年間かけてやっていきたい。春の間にこれだけやれれば幸せです。
(決勝は桐蔭学園ですが)やりきりたいので、モールだとか。ディフェンスだとか、相手のスピードを一生懸命止められるかが次につながると思います。
天理 松隈孝照監督
一日しか準備する期間がないのは、いつもとちょっと違う感じですね。(普通には決まらないですね?)結局、ああいうルーズ(ボール)とか、負けるところが勝敗を分けています。簡単なエラーからトライを取られたりとか、ゴールキックの差とか、細かなところで勝てないと勝敗にもつながってしまいます。これが奈良県決勝ですね。
後半はエリアをとって、もっと有利な状況で攻めたかった。中盤で迷ってしまっている子がいて、風下だから(相手が)ワイドに動かしてきて、それで(トライを)取られてしまってはだめですね。
(モール対策は?)毎年なんです。去年はあまりやってこなかったですけれど、今年もそこまでやってきていないんですが、毎年そこに苦しめられているんで。
(この敗戦がメンタルをあげる試合に?)そうですね。今のこの子たちは花園で桐蔭(学園)に負けていることも経験していますし、こうやってあがってきて強いチームと対戦することを経験できているので、いままでとは違うの楽しみではありますね。
(選抜を通して、今自分たちのチームがどの位置にいるのかわかったのでは?)近畿大会もやってみないとわからないし、選抜もそうです。そういう意味では自信になったところもあると思いますが、負けたんで。成章ともやって、御所ともやりました。桐蔭とやれなかったのはちょっと残念ですけれど。