今回「取って出し」するのは、今季のトップリーグ終盤戦の話題を独占(?)した41歳、「不惑のフルバック」松田努選手だ。
村田亙さんが持っていた40歳0ヶ月というトップリーグ最年長出場記録を40歳5ヶ月まで更新したのは昨季(2010年度)の開幕戦。41歳の今季も現役を続行した松田選手は、開幕からリザーブでベンチ入り。試合の終盤に出場していたが、年明けの第10節、ホンダ戦から先発メンバー入りすると、年齢をまったく感じさせない仕事量を披露。トップリーグ最年長出場は、もはや何のニュースにもならず、最年長トライの更新さえ誰も驚かなくなった。
その松田選手は、実は一度だけ「引退」を口にしていた……。それでも現役を続行したのは「もう一度、頂点を味わいたいから」この記事が書かれた翌2003年度から、東芝府中はトップリーグ最強チームとして4年間に8タイトルを独占する黄金時代を築き、連覇が途切れたあとも、2008年度からさらにトップリーグ2連覇を達成。そして今も「また、今の仲間と優勝を味わって一緒に喜びたい」と話しています。
プレーオフは準決勝で敗れましたが、2月25日から始まる日本選手権でリベンジ、そして頂点を目指す東芝のカギを握る存在感は、もはやエースと呼んでも過言ではない領域。トップリーグ設立の前年に当たる2002年、すでにベテランとして活躍をみせていた松田選手の輝きへ、タイムトラベル!
そのディフェンスに、秩父宮のスタンドは唸った。
2002年11月2日の秩父宮。東日本社会人リーグのサントリー×東芝府中。試合開始から劣勢に回っていたサントリーが、ようやく38対38の同点に追いついた直後の後半28分だ。サントリーは自陣22mラインのスクラムから、左へ鮮やかにアタック。疾風のごとくライン参加したFB栗原徹が、SO沢木敬介の飛ばしパスを受けてラインブレイク。東芝府中のCTB日原大介、WTB和田賢一の2人をかっちり引きつけて、フリーになったWTB小野澤宏時へパスを送る。ジャパンが誇るフィニッシャーはそのままタッチ沿いを疾走。ようやくサントリーが爆発した――そう思った瞬間だ。小野澤の前に、背番号14をつけた男が立ちはだかった。立川剛士の負傷退場でFBに回っていた松田努だ。