2月4日、熊谷ラグビー場において、リーグワンとスーパーラグビーが初めて手を組んだ特別な試み、「クロスボーダーラグビー」が開催された。この一戦では、埼玉パナソニックワイルドナイツとギャラガーチーフスが激突した。
リーグワンのレギュラーシーズンが一時中断され、エキシビションマッチとして行われたこの試合。ワイルドナイツのキャプテン、坂手淳史は、「(メンタル的に)難しい試合だった。自分たちのスタンダードを示すチャンスということをテーマにして作ってきた」と述べ、世界に向けて、ワイルドナイツが世界と渡り合えるクラブチームであることを示す絶好の機会であると語りました。その言葉通り、ワイルドナイツは素晴らしい戦いぶりでチーフスを圧倒し、38-14で快勝しました。
この熱戦のMVPに輝いたのは、古巣でもあり、実弟がゲームキャプテンを務めたチーフス相手にアタックでもディフェンスでも大活躍したFLラクラン・ボーシェだった。
HIGHLIGHT
ギャラガー・チーフス クレイトン・マクミランHC
――試合を終えて
大きなボールキャリアがいて、止めることができなかった。
――今日のハカについて
このハカは チーフスにとって特別なものであり、チーフスによってのみ行われるものであり、私たちが誰であり、何を象徴するかを表しているのです。ハカをやると決めたのは、今日は特別な日であり、私たちはこの試合を称えたいと思ったのです。ワイルドナイツのチームとサポーターの前でハカをすることで、この特別な機会に敬意を表したかったのです。
重要な時にしかハカをやらない。チャンピオンシップや重要なマイルストーンを祝うためなどに行う。たとえば、選手がチーフスで100試合プレーした時、そういうイベントの時とかね。だから、今日ハカをすることはとても特別なことなんです。かなり特別なことで、きっと観客にも好評だったと思います。
マクミランHC
――次戦は今日でなかった選手も起用する考えはあるか。
まだわかりません。この試合を振り返り、来週誰がプレーするかを決めます。遠征中のオールブラックスの何人かは出場できるだろうし、今日出場しなかった遠征メンバーもいるので、来週、出場機会を得ることになるかもしれないです。
――元チーフスのラクラン・ボーシェーについて
ロッキーは素晴らしかった。久しぶりにフィールドで見ることができてよかった。彼は素晴らしいプレーをした。マン・オブ・ザ・マッチにふさわしい活躍だった。彼は、ニュージーランドから決して失いたくなかったほど質の高い選手だが、彼がこちらに来て成長し、活躍しているのを見られて嬉しかった。
――他にワイルドナイツで良い選手がいたか。
特定の選手ではなく全体として質の高いチームだ。スーパーラグビーでも結果を残せるようなチームだと思った。
――オールブラックス が来週出場できるレギュレーションを教えてください。
トータルでプレシーズンは40分に制限されています。ニュージーランドでは、我々はプレシーズンでオールブラックス が限られた時間しかプレーできないということには慣れています。
――日本のファンはサンゴリアスでもプレーしたマッケンジーが見たいと思っているが、出場機会はあるか。
残念ながら出ることはできません。しかし、私たちがダミアンについて知っているのは、彼がおそらく世界で最も愛されている選手の一人だということだ。小柄だが、ハートは大きく、いつも笑顔でいる。ひとつ言っておきたいのは、前回の記者会見でも言ったように、オールブラックス全員がプレーしたかったということだ。
しかし、我々には定められたプロトコルに確実に従う義務がある。将来的にはこのような大会が拡大し、成長していくことになるかもしれない。そうしたらこうした選手が対戦することができるようになればファンタスティックだと思います。
ギャラガーチーフス FLケイラム・ボーシェー・ゲームキャプテン
ケイラン・ボーシェーゲームキャプテン
――前半にPGを狙ったのは
この試合は非常に真剣に臨まなくてはいけないことはわかっていた。相手へのリスペクトもあった。そして、彼らが日本リーグでどれだけの結果を残したかもわかっていた。
――今日兄と対戦した
初めて兄と対戦しました。もしかしたらこれっきりの対戦かもしれないしエキサイティングな時間だった。ニュージーランドを離れることは、彼にとっては苦渋の決断だったと思う。彼は本当にオールブラックスになりたかった。でも、こっちに来て、彼は家族と一緒に、日本でチャレンジする時が来たんだと感じました。
――兄と実際に戦った気持ちや試合後の会話など。
2分くらいしかコンタクトしていません。元々あまり話さないので会話は少なかったです。
――小さい頃は一緒にやっていた?
いつも裏庭で一緒にプレーしていましたけど、兄は5歳上なので、常に向こうのほうが体が大きくて、結構押されていたけど、次は自分が押せるんじゃないかなと思います。
埼玉パナソニックワイルドナイツ ロビー・ディーンズ監督
ロビー・ディーンズ監督
――シーズン中の公式戦ではないゲームに臨むにあたってベストメンバーを使った
決まった以上は、そこに意味を見出さなければならなかった。ご覧の通り、選手たちは誇りを持ってプレーし、目的を持ってプレーしていた。リーグ戦の最中に、あまり意味のない試合をするのは簡単なことではない。勝ち点もない。選手たちにとっては失うものも多い。今日は、エセイ(・ハアンガナ)を怪我で失ってしまった。
だから精神的には楽じゃない。もしこれが大会の一部であれば、もっと価値があるだろうが、そうではない。しかし、私はチームの戦いぶりをリスペクトしている。そして、彼らが自分たちのしたことに誇りを持っているのなら、私が毎回そうであったように、彼らもジャージーを背負っていることに誇りを持っていた。
そして、今回の決断は自分たち自身によるものではないです。我々はその決定に影響を与えることはできない。だが一度だけだ。今月はあまりラグビーがない月でした。リーグワンへの課題を残すためには、ラグビーをしなければならないと思いました。
チーフスにとっては素晴らしい準備になっただろう。私の古巣と対戦するのは3週間後だと思うので、おそらくクルセイダーズには何も役に立っていませんが。チーフスにとってはいい準備になったでしょう。
我々にとっては、2週間後にサンゴリアス戦があります。観客が楽しんでくれたことは良かった。ここはラグビーをするには最高の場所だし、選手たちも楽しんでいるし、観客にとってもいい試合になったのは良かった。
「本来ならこういった試合は年末に行う方が意味がある。レベルが問題でないことが今日明らかになった」
――今日はカテゴリCの選手が3人プレーした。
彼らがこのレベルの試合に慣れているからです。それにチームとしては、チーム全体がこのレベルでプレーすることに十二分に注意を払っているということがお分かりかと思います。2月はリーグワンの時期だし、シーズン終盤が勝負で、プレーオフがあります。
坂手のような代表選手はワールドカップを戦い、ほとんど休みがない。本来ならリーグ戦の開幕を1月に遅らせ、選手たちに休みを与える。そして、このようなことはクロスボーダーの試合は年末に行う方が意味がある。レベルが問題でないことが今日明らかになった。
日本のゲームの柱、日本におけるゲームの基盤は、企業と選手です。それらを重要な土台の部分まで尊重すれば、未来は正しい方向に行くはずです。そうすればとても素晴らしい。そうしないと日本のラグビーはどこかにいってしまうかもしれない。
埼玉パナソニックワイルドナイツ HO坂手淳史キャプテン
坂手淳史キャプテン
――試合前のハドルで話したこと
ワイルドナイツらしいラグビーをしようと話した。最初の10分でフィジカルで来るということはわかっていましたし、受けに回ってしまうとゲームが戻しにくくなってしまう。そう思っていたので10分でしっかりとフィジカルを出して、自分たちの正確性を出してプレーしていこうというふうに話した。
ハカについても、終わった瞬間にスイッチを入れるということを言っていたので、いいマインドでゲームにのぞめたかなと思います。
――シーズン中の試合。どういう思いでモチベーションを高めたか。
難しかったです。正直このゲームは公式戦でもないですし、すごく強度の高いゲームになるということは予想していたので、すごく難しいゲームであったことは間違いないです。特にメンタル的に。ただ、今週のテーマとして、自分たちのスタンダードを示すチャンスだということをテーマにして作ってきた。そこは良かったかなと思います。
チームがどういうモチベーションを作っていくか。自分たちが強くなる、うまくなる、勝ち続けるチームになる。そういういろんなスタンダードがある中で、ワイルドナイツとして、高いスタンダードを見せるチャンスだということをチームとして、頭に置き続けられたのは良かったと思いますし、スタッフも良い形でいい準備をさせてくれましたし、特にゲームに出ない選手たちのパフォーマンスも今週1週間高かったので、自分たちにいいプレッシャーをかけてくれてゲームに臨めたかなと思います。
スタート、一番初めにこのゲームが決まった時は難しかったですが、今週に入ってこのチームが始まったときには大きく難しいなとは思わずに、チームとしては準備できたんじゃないかなと思います。そういうタフなメンタルを持ってやれたこのチームをすごく誇りに思いますし、また今後も成長していって、常にスタンダードが高いところでできるようにということは試合後にも言った。そういうことをまたみんなで体現していきたいと思います。
――MVPのボーシェー選手について
ロッキーはいいプレーをしてくれました。ジャッカルはもちろんですしキャリアーとしてもタックラーとしてもたくさんのスキル、パワフルさを見せてくれたので、本当に仲間でよかったなと思います。ロッキーを連れてきてくれた、飯島さん、ロビーさんに感謝したいなと思います。彼もそうですし、他の選手もこのゲームに対してすごいいいパフォーマンス、メンタルを持って臨んでくれたので、いい結果でよかったかなと思っています。
――チーフスと対戦する意味やアドバイスはボーシェー選手からあったか
特にはなかったです。ただ、堀江さんの方からスーパーラグビーの経験として、最初のスタート、前半10分を言い方は良くないかもしれないけど、自分たちに対して『いじめてくる』というか、フィジカル的にタフに来るので、そこに受けないで跳ね除けていく、正確性を持って、という話をしてくれた。経験のない選手だったり、スーパーラグビーを知らない選手にとってはすごくいい助言になった。僕らもスーパーラグビーは何回か経験しているけどちょっと昔のことなので、忘れているところもある。そこを思い出させてくれる助言でもあったので、チームとしてはいいアドバイスだった。
――この試合に勝ってプラスになったこと
勝ったことに関してプラスが出るのはこれからかなと思うのでそこはあまり考えていないが、今週いいメンタルで乗り越えられたので、それを作り続けられた選手たちが一番財産になったと思う。こういう難しいメンタルの中でゲームを乗り越えて勝つことができたのはチームとしてすごく成長を感じるし、タフだなと思った。
そこに関しては次につながるんじゃないかなと思った。今回は公式戦じゃなかったけど、スタンダードを見せ続けていくチームになりたいと思っているので、またリーグワンで、そこをお見せできたらと思う。
――今後も海外のチームとやることについての思い
タイミングについては難しい問題じゃないかと思う。スーパーラグビーは2月の後半からスタートして、僕たちは12月に始まっている。タイミングに関しては今後とも難しい問題だと思う。こういうゲームを体験する、若い選手や経験のない選手がこういうゲームをプレーできるというのは、日本のラグビーにとっても選手個人にとってもいい機会だと思う。レギュレーションに関しては今後詰めていく必要はあると思いますが、プレーをすること自体はすごくいいチャンスだと思う。そういうメンタルを持っていたので、今日いいラグビーができたのだと思います。
GALLERY
試合前のピッチを盛り上げたダンシングチーム・ミスブルー
3分、チーフスはSOイオアネがPGを狙うが失敗
さらに攻めるチーフスのアタックをワイルドナイツは約20フェイズにわたり止め続けターンオーバー
力強いキャリーを繰り返したFL福井翔大
15分、コロインベテのチェイスと野口のジャッカルで得たPKからゴール前ラインアウトに持ち込み、モールから坂手がサイドを突く
坂手が先制トライ
松田がコンバージョンを決める
22分、自陣ゴール前のピンチをDFでしのぎ、野口がキック。相手ゴール前までコロインベテがチェイスして捕まえて
稲垣、坂手、福井が相手をゴールライン上で捕まえ
こぼれ球を好判断で押さえたSH小山がトライ
互いにミスが少なく、ファーストスクラムが組まれたのは28分
チーフスSHロー
前半はワイルドナイツが14-0とリードした
積極的にボールキャリーしたCTBデアレンデ
50分、松田力也がPGを加え17-0
CTBライリーも力強いキャリーを反復
65分、コーネルセンが左サイドを大きくえぐり
コロインベテのトライ
観客は7561人。良い試合を目撃しましたね!
74分、普段にも増してジャッカルで大活躍のボーシェーが自陣からアタック
SH内田、PRミラーがボールをつなぎ
再びボーシェーがブレイク
ボーシェーからパスを受けたアボットがコブシを振り上げながらトライ
豪快ゲインとラストパスを放ったボーシェーにライリー、堀江が駆け寄って祝福
さらにロスタイム、相手パスをカットした山沢京平がとどめのトライ
山沢京平がコンバージョンを決め38-14
滑川レフェリーとともに健闘を称え合う
バックスタンドにあいさつするチーフスxv
ゲームMVPに選ばれたのはボーシェー!
お互いのチームを代表して記念品を交換したのはボーシェー兄弟
真ん中はボーシェー兄弟
熊谷に来てくれてありがとう
欠場したマッケンジーと談笑するボーシェー