稲垣啓太が開幕戦を振り返る―ワイルドナイツが今シーズンを完封勝利で飾る。 | ラグビージャパン365

稲垣啓太が開幕戦を振り返る―ワイルドナイツが今シーズンを完封勝利で飾る。

2025/12/16

文●編集部


14日、埼玉パナソニックワイルドナイツは前年覇者東芝ブレイブルーパス東京に46-0で完勝し、開幕戦勝利を果たした。長く怪我により戦列を離れていたPR稲垣啓太は後半から出場を果たした。試合後のコメントと、プレシーズンマッチ後に話した堀江翔太スクラムコーチに関するコメントを紹介する。

――開幕戦を振り返って

リーグ戦の1発目を良い形で取れたっていうだけなので、チームとしては、すぐ切り替えて、次の試合に向けて準備していきたい。

後半ピッチに入る稲垣啓太

後半ピッチに入る稲垣啓太


――46-0の大勝でした

点差はあまり、気にしたことはなかったですね。我々にとっては良い結果でしたが、我々が(東芝に)ボコボコにやれた試合もありましたし、お互いに、すごくいい関係がずっと続いていると思うので、まあそういったこういう関係がこれからも続いていければいい。

――開幕戦で快勝したことは今季の自信につながるのでは?

やってきたことがもちろん試合の結果として現れたということはみんな自信を持てる部分だと思います。それ以上に試合に出てないメンバーが、すごく準備を手伝ってくれたので、東芝さんのアタック、やってくるアタックをほとんど同じことを体現してくれたので、我々のスターティングメンバー23人が自信を持って守ることができたと思います。

――スクラムもかなり圧倒していた

よかったんじゃないですか。スクラムは1回、1回同じスクラムっていうものはないですね。判定によって組み方っていうのを変えていかないといけないので、今日は我々が準備してきたことがはまった。次はそうならないかもしれないですし、我々はそうなれるようにまた準備していくだけですね。

――スクラムコーチに就任した堀江コーチがやってきたことを出せた?

堀江さんがプレシーズンを通してやってきたことが(スクラムで)ペナルティーを取ったっていう形で現れたのは、チームにとって良いことだったと思います。

――堀江さんが教えてくれたところで、スクラムで特によく出たところっていうところですか?

方向性ですよね。どの方向に行くのか、その方向に行くために、どういうアプローチを仕掛けていくのか、相手がどうくるのか、それに対し、我々はどう仕掛けていくのか。スクラムって型があって、この型で来られたら、この型が合わないとか、そういうのがあるんですけど、それプラス個人、個人の能力っていうのを伸ばすことにフォーカスしてきたんで、その相乗効果で、今日は両方うまく出せた。

――夏にチームを立て直す必要があると言っていたが、どういったところでそれができたか?

一番、顕著だったのは、プレシーズンマッチの愛知シャトルズ戦ですよね(⚫26-33)。あの試合で、みんなやっと目覚めたんじゃないですか?

ラグビーってやっぱり個人個人の能力の集合体ですけど、それをやるかやらないかって自分で選択をするしかない。なんとなくグラウンドに入って、なんとなくやって、こなすことはみんなできる、ただ本当の真剣勝負になった時に、なんとなく入ったら絶対やられる。僕がメンタルのことずっと言っているのは根性論を提唱しているわけじゃないんですけど、大前提として、土台を持ってないのにグランドに入ってくるな、ということですよね。

挙げたらキリがないんですが、ボールキャリーが高かったとか、それが高いせいでボールを何十回もチョークされた。普通に試合レビューをしたらそういう意見が出てくるんですけど、正直、こういったことは言いたくないですけど、ボールキャリーが高いなんて、学生の頃から何十回、何百回、何千回と言われていることで、わかっているはずなのに。

わかっているのにやらなかったのは自分でしょ。その選択ができないのだったらグランドに出るな、という話をみんなにした。僕が言うまでもなかったのですが、やっぱり言葉にする必要があった。みんながそれぞれ強いメッセージを発信していましたけど、そういった経験もチームにとっては必要だったのかなとプラスに捉えています。

――シャトルズ戦があってのサンゴリアス戦で、そこから宮崎合宿を経て開幕を迎えた

(シャトルズ戦の翌週の)サントリー戦は、やっぱり、みんな、目の色が変わっていましたね。なんとかなるだろうとグラウンドに入って、それはもちろんなんとかなる時もありますよ、でも、どうにもならない時に立て直せないんですよ。自分たちの準備していることを出すためには、こなすだけじゃ無理なんですよ。

――今日も点差がついてからもワイルドナイツの選手たちのバッキングアップがすごかったです。

結局のところ、ラグビーって、まずメンタルが備わってないと、自分たちが準備してきたものを出すためには、マインドセットが一番大事っていうのをずっと言ってきました。

――新しく就任した金沢HCはディフェンスとトランジッションとパナソニックの文化はずらさないと話していました。

自分たちがずっと持ってきたカルチャーを自分たちの変なマインドセット一つで壊すのか、っていうところです。今日だけ出したら、またもとに戻るので、だからやり続ける必要がある。(大事なのは)気持ちです。

――坂手主将がディフェンスで怖さを出したいと話していました。

あくまでもチーム全体のことはね、僕は言わないようにしますけど、個人的には、ディフェンスのタックル精度より、相手を押し返す意欲のあるタックルをする必要があると思っています。

ディフェンスで1回受けてしまうと、どんどん整備の時間が遅れて、アタックがはやくなって、それを繰り返されると戻って来られないんですよ。それをさせないために、やはり強いドミネートタックル、いわゆる相手を押し返すタックルが必要になってくる。じゃあそれをやるためには……と、どんどん逆算が生まれてくるんですけど、早くポジショニングかないといけない、そのポジショニングはどの角度で立つべきなのか、どの体の向きで上がるべきなのか、どのぐらいまで上がるべきなのか、横にいる選手たちは何をフォーカスしなきゃいけないのか……というところに繋がってくる。

結局、一個一個、順序立てて考えていくと、全部繋がってくるんですよ。いろんなことに触れましたけど、一番大事なのは(相手を押し返すほどの)威力のあるタックルなんです。1人目(のタックル)が、早く強くいったって、1人で行ける時はもちろんありますよ、ただ大事なのは2人目がそれを見てしまっているところなんです。

ディフェンスのゴールって、ボール奪うところまでがゴールです。倒して終わりじゃないんです。倒した後、ボールをどうやって奪い取るのか、そこにどうやってプレッシャーをかけるのか、それの繰り返しなので、別に(タックルで)倒すことが目的ではないです。

――今シーズン、アタックリーダーの一人に就任しました。

勉強させてもらっています。僕が(ワイルドナイツに)入ったときは、アタックは(選手だった)ベリック(・バーンズ)にずっと教わったんですけど、彼がまた(コーチとして)アタックのグループに参加してくれて、自分もいろんな知識を得た状態で彼と話すことができるのですごく良いディスカッションができています。

自分自身も、こういう考え方があるんだってあらためて、教わることも多いですし、いろんなアタックのやり方があるんですけど、自分のポジションはタイトファイブなので、やるエリアは当然、限定されていますよね。そのエリアで自分たちがタイとファイブが何をやらないといけないのか、やるために必要な技術は何なのか、それをやったらどういう結果が生まれるのか……というところまで突き詰めていくっていうのが自分の仕事だと思います。それを提唱する前に、自分ができるようにならないといけない。

スクラムコーチに就任した堀江翔太氏

スクラムコーチに就任した堀江翔太氏


――今シーズンからスクラムコーチを務める堀江翔太氏について

一人一人の役割というのは、以前からスクラムについて話していると思うんですけど、役割それはもう大前提。プラス、個々のスキル、能力をどういうテクニック、どういう体の使い方をして伸ばしていくのかというところに堀江さんは着手してくれています。

もちろん僕も今年35歳になって、今までスクラムでこういう組み方があって、こういう組み方に対してはこういう型があってというように経験に基づいて色々とできるんですけど、そういうことではなくて、この型にはこの組み方という話は完全になくて、大事なのは、体のどの部位をどう使うことで、スクラムに対してどういう効果を与えられるのか、そして、どういう体の使い方をすることで、これからキャリアを続けていく上で、怪我しないように負担が少なくすることができるというところを、堀江さんが着手してくれています。

スクラムを組んだ人なら必ずわかる部分があると思うんですけど、組んでいる最中に一番楽な姿勢が一番強いんです。その「一番楽な姿勢に入る(=一番強い姿勢に入る)」までに必要な部位の筋力や体の使い方ができないとそのポジションに入れないんです。


自然とそのポジションに入れる人は自然と体の使い方ができている。でもそれは、今感覚でやっているものなので、言葉でちゃんとした技術を紐解いて教えてくれるのが、堀江さんのスクラムです。まあ今までやってきたスクラムのトレーニングとは全く違うトレーニングの世界と、35歳になりましたがこれまで堀江さんとずっとやってきましたけど、そういった部分を横で見てきて、そういったことは僕も着手してきましたけど、堀江さんも選手だったんで、やっぱり感覚的な部分が強かったんです。

コーチに転身して、その感覚的な部分を全部解いて、全部図に出して、動画にして、言葉で噛み砕いて自分たちに提示してくれた。本当に細かい部分に着手しています。僕も堀江さんも昔からずっと言っているのが、「スクラムは8人で組むもの」ということで、8人で一緒にコミュニケーションを取らないといけない。それは大前提になる部分ですけど、個人の能力が上がらないことには、やっぱり強くならない。なり得ないんですよね。

だからこのプレシーズンはスクラムの個人の能力を伸ばすということにもずっと着手していました。やっと「ブロックスリー」ということをみんな言っていると思うんですけど、ここにきてやっとコネクションに着手してきたぐらいじゃないですかね。学ばせてもらっています。個人の能力という部分ではやっぱり伸びていると思います。

(一番強いところに)入るまでには、能力プラス、後ろとのコミュニケーション、いろんな役割を順番に成功させていかないとたどりつけないので、改めてそういった部分の連携は大事だなと思いますし、まだまだ詰めきれてないなと思います。

――スクラムに関しても全員が共通認識もてるように視覚化や言語化している?

もちろんです。ただ、あんまり言語化って好きじゃないんですけどね。俺が一番ベラベラ喋っているみたいな感じなところがあるんですけど。本能とか感覚とか、自分の直感とかそういうのをすごく大事にしているし、捨てられないですね。

だって、ここにボールを最後突っ込んでおいたら勝てるのに。いちいち考えている暇なんでないじゃないですか。ラグビーってシンプルだし、スペースがあれば自由だし、そこに対して反応すべきだし。僕にその自由さを教えてくれたのは、いろんな恩師がいましたね、春口先生も教えてくれたし、もちろんロビーさんも。ジェイミーもシンプルさを。エディーさんも。

――体のコンディションは?

いいって言っておきます。色々怪我もしたことないってふざけて言ってきましたけど、堀江さんに体の使い方を改めて細かく教えてもらって、ああ、まだまだ学べるところがあるんだなって感じました。もっと早くにやっていれば今抱えている体の問題はもう少し改善できたのかなと。それは佐藤さんと堀江さんがずっと積み上げてきたメソッドなんですけど。スクラムにフォーカスした体の使い方というのを。もう少し早く気づくべきでしたね。


――体の使い方で改善したことは?

姿勢がよくなりましたね。姿勢だけじゃなくて、歩き方だったり、足のつくポジションだったり。昨シーズンまで感じていた足の違和感という部分は間違いなく姿勢を改善したことによって軽減されています。日常生活であったり、そういった行動全てに回復の道が隠れているというか。練習や試合なってグラウンドでせいぜいMAX2、3時間じゃないですか。それ以外は日常生活で体を動かすことの方が多いので。

特に僕は、試合が終わった次の日、練習が終わって、休みの日とかも体を絶対動かすので、そういった中でどういうふうに体をつかっていくのか、ただがむしゃらに重たいものをどれだけ早く正しい姿勢で動かせるかということもやっていましたけど、自分の中で考えている正しい姿勢が、もう少し違った考えを早めにもっていたら、また違った結果になっていたんじゃないかなと思います。

でも、まだ僕は戻れると思っています、こうやって35歳で気づけたということも、いい勉強させてもらっているなと改めて思いますね。だから堀江さんにはすごく感謝しています。選手時代からもお世話になっていたし、今も教わることがすごく多くて、改めて存在の大きさというのは感じます。

ポジションを直すことで、正しい一にもっていくことで、もちろん正しい一に持っていくまではきついんですよ。ただ、正しい位置に入ることができれば、一番強い姿勢になるんです。堀江さんの体の使い方、本当にすごく細かいんですよ。

ラグビーにおいて一番大事なのは戦術でも何でもないと思います。僕は、ラグビーはやっぱり、こんなこと言ったら「根性論おじさん」みたいに思われますけど、(根性)ありきだと思いますね。やるかやらないか選ぶのは自分だし、グラウンドに立ったら逃げ場はないし、多くの人に見られているわけですから、その日まで積み上げてきた選手のキャリアの全てが一日で変わりますからね。それだけの覚悟を持って立たないといけないんで、そこでやらないという選択肢をするのも自分。淡々とこなして、それも一つの手ですよね。

ただ選手としてやる以上は当然一番上を目指すつもりですし、目指さなくなったら僕は辞めます。あとは自分の体がちゃんとそこに追いついてくるかですよね。

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